林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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戀愛譚

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東郷青児『戀愛譚』(野崎泉・編、創元社、二〇一八年三月一〇日)読了。正直、ビックリした。これまでも東郷青児の文章はいくつも読んで来て、絵描きとは思えないこなれた文章だとは感じていたものの、文筆家だという認識ではなく、やはり画家の余技(アングルのヴァイオリン)かな、というのが頭の隅にずっとあった。

ところがどうだろう、東郷は明らかに、絵筆だけでなく文筆も本気で握っていたということが、本書を通読してみて、ハッキリ分った。本書は東郷のそんな文章家としてのエッセンスを、入門書にして決定版とでも言える形にまとめた見事な内容である。編者の野崎泉さんの執念と手腕を讃えたい。

《本書では前半のIでおもにフィクションの要素が強いものを、後半のIIでは「自伝的エッセイ」、および「文化人エッセイ」的な作品をセレクトした。ご覧のとおり、随所にフランス語や英語、最先端の文化や風俗にまつわる固有名詞がほぼなんの説明もなく散りばめられており、あきれるほど気障でスノッブで、彼の当時のスタンスがうかがえる。が、不思議といやみにならず、逆にそこがなんともいえない魅力となっているのは、芸術への献身的なまでに深い愛と、彼自身の率直な、憎めないキャラクターに依るところが大きいのだろう》(解説)

気障でスノッブ、まさに。ただ、これは大正末から昭和ヒトケタの、横光利一、川端康成、北園克衛、稲垣足穂らに共通する時代の性格でもあって、彼らの作品と並べても何の違和感もないというか、都市モダニズムの文学を論じるとすれば、東郷青児を見過ごすことはできない、とすら思えるものだ。

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まるでソーダ金平糖のような短篇小説も楽しめるのだが、読み応えのあるのは
後半の「自伝的エッセイ」群であろう。なかでも「夢二の家」は重要な作品だ。

《夢二が新潟に旅出した留守中のことだった。ある日旅先きの夢二から長文の電報が留守宅に届いた。丁度前夜から泊りに行っていた神近幸子や私がたまきさんと判読しにくいその電報を読んだのであるが、その電文というのが、「昨夜お前が不義のちぎりを結んでいる夢を見た。自分の今までの経験で、このような顕示は常に的中していた。心おだやかでない。若しお前にうしろ暗いところが無かったらこの電報を受取り次第東京を立って新潟に来い」というのである。》

青児とたまきの間にはその前夜ちょっとした出来事があったが、不義というようなものではなかった。たまきは新潟に出かける用意を始めた。

《この結末がどう新潟でついたか私は知らない。その後も夢二の家に出入りしたし、夢二にも時々会って、格別のわだかまりが其処に生じた様子もなかった。》

とつづくのだが、新潟で何があったのかは、たまきが書き残してくれている。以前少しだけ引用したのでリンクしておく。

岸たまき「夢二の想出」
https://sumus2013.exblog.jp/21415084/

十八歳の青児は、たまきではなく、夢二の弟子だった「おあい」さんが好きだった。ところが、まだまだ子供の青児は、おあいさんの訳の分からない行動にふりまわされる。その気まぐれな彼女とのやりとりがパートIの恋愛掌篇小説に色濃く反映されているように思われるのだ。

もうひとつ、「ニースの金髪」は滞仏時代の思い出である。このエッセイは色々な意味で超現実主義的な彩りをおびている。青児はニースの海岸で砂浜に寝そべっていた。すると青い海の波の間から女の足がにょきっと一本突き出したのである。「助けてくれ」という声を聞いて跳ね起き、海に飛び込んだ。

《既に仮死の状態にいる女の足を左手でかかえて、私は水の上に浮き上がった。
 いつの間にか人だかりのした海岸に私がその女を抱き下ろした時、ぎょっとしたのは、その仮死状態の女が片足の女だったことである。白い海水着といっても、こんもりした乳房を包むブラジャーと、思い切り太股を出したパンツだけなのだが、その左足が付根からぶっつり無い。
 心得のある男が仰向けになった女に馬乗りになって人口呼吸をすると、おびただしい水を吐いて、ぱっちり目を開いた。蒼ざめた頬に水藻のような金髪がべっとりと張りついた有様は、女が比類の無いほどの美人だったから、背筋に水の走るような感動を私に持たせた。ことに、片足の裸体が通常の感覚を跳び越えて、胸ぐるしく私にせまってくるのである。》

この美女はイザック・メイヤーというユダヤ人の金持ちの夫人だった。彼女を助けた縁でパリの百貨店ギャルリ・ラファイエットの図案部で働けることになった。と、ちょっと出来過ぎではあるが、どうやら事実のようである。

《美しい夫人に頬ずりされながら、ユダヤふうの塩からいご馳走を木曜日ごとに招ばれた。だが、片足の無い股の不思議な印象は、今でも私の瞼の裏に浮かんで来る。
 美しさというものは、必ずしも均斉の中だけにあるものではないと私は寂しく感じるのである。
 私の海の幸は波に浮かんだ一本の足だった。》

どうです、なかなかでしょう。そうすると、先の同時代人のなかに江戸川乱歩も数えておくべきなのかもしれない。

野崎さんの解説「跣足[はだし]の天使が舞う、コバルトブルーの空の下で」はじつに懇切丁寧な内容で、この解説だけでも一読の価値がある。そこにこんなことが書かれていた。古本修羅のみなさん、情報よろしく!

《なお、この昭森社からその後の一九四〇年に出たはずの東郷の著作に、『星と菫』というのがある。》
《存在は知っているものの、実物を見たことのある人は皆無というまさに"幻の書"で、今回さまざまなコレクター、施設などにあたってみたのだが、ついに見つけることが叶わなかった。本書を手にとってくださった読者のなかに、もしも所有しているという方がおられたら、ご一報いただけたら大変に嬉しいのだけれど……。》

さっそく御教示いただきました。下記のリストに『星と菫』が出ています。『関根正二とその時代展図録』より

森本孝:編 その時代の画家たちに関連する文献目録

三重県美に所蔵されているわけではなかったようです、残念。

*****

『東郷青児〜蒼の詩 永遠の乙女たち』出版記念展

東郷青児 蒼の詩 永遠の乙女たち 

東郷青児「銀座放浪記」が面白すぎる。

東郷青児訳『怖るべき子供たち』


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# by sumus2013 | 2018-03-14 21:44 | おすすめ本棚 | Comments(2)

ポスターの魔法

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『サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法』(練馬区立美術館他、二〇一八年)図録。サヴィニャックのポスターは七〇年代に初めてパリへ行ったときにしばしば見かけたような気もするが、あまり記憶に残っていない。もうすでに時代遅れな感じになっていたのかどうか・・・たぶんそうだったような。

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図録をめくりながら思ったのは、日本でも知られているフランスの企業が案外とたくさんあるんだなあ、ということ。マギー・チキン・ブイヨン(スイスでした)、ヨープレイト、オランジーナ、ペリエ、テファール、セブ、ヴィシー……やはりフランス、ほとんど食品か食品に関係する会社である。サヴィニャックは日本の企業ポスターも手がけており、ここには、としまえん7つのプール(1989)、サントリービール(1979)、森永ミルクチョコレート(1958)が掲載されている。

両親はともに南仏のアヴェロン県出身。ボンマルシェ百貨店の配送係と売子をしており、サヴィニャックは一九〇七年、パリ15区に生まれた。両親はその後、食堂やカフェの経営を始め、つぎつぎ店や住居を移って行く。小学校は14区、店はまず13区、そして12区へ。さらに2区に店、17区に住居。8区のコレージュ(中学校)に通う。コレージュを中退して6区のパリ地域公共交通公団で働く。両親は4区のカフェを購入(住居兼)。兵役を終えてフリーランスになる。8区サン=ラザール駅近くに下宿、カッサンドルのアシスタンになる(およそ五年間)。6区ジャコブ街に転居。第二次大戦で召集される。結婚し6区ジ=ル=クール街に居を定める(1940)2区ヴォルネ通にスタジオ・自邸を構える(1954)。14ヴィラ・ブリュンヌへ転居(1971)。カルヴァドス県に住宅を購入(1979)。トルーヴィル=シュル=メールへ転居(1982)、同地で死去(2002)。

15区は下町、繁華街、まあ上野・浅草というところか。これは地方出身者の上昇志向がうかがえるような転居の軌跡である。パリの区割りはド真ん中の1区から右回りにカタツムリの殻のようにぐるりと二回転して20区まである。ごく単純に数字の若い区が中心地に近く賑やか、東西に分ければ西側の方が高級である。周縁部および、19区、20区あたりが庶民的というか雑居感が強い地域になる。サヴィニャックもバリバリ仕事をするときは2区、引退すれば海辺の温かい町に住むという成功者の典型的なスタイルではないかと思う。

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# by sumus2013 | 2018-03-13 21:17 | 雲遅空想美術館 | Comments(0)

ジャコメッティについて

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矢内原伊作+宇佐見英治『ジャコメッティについて』(用美社、一九八三年一〇月二六日)。つい先日ミドリ文庫さんで求めた。矢内原がジャコメッティの絵画のモデルになったときの回顧談が面白い。

《そして、午後の一時或は二時ごろから仕事が始まって、延々とそれが続いて、夕方の四時、五時になる。パリは暮れるのが早いから、四時ごろになると薄暗くなるけれども、薄暗くなってもやめない。もう少しやれば真実に近づく、真実に到達できないまでも、真実に少しでも近づくと思うからやめられない。》

パリ、夏はなかなか暮れないが、冬は早い。

《けれども、本当に暗くなれば何もできないからやむを得ず筆をおく。そして近所のカフェーに行ってコーヒーを一杯飲み、一休みして、またアトリエへ戻って、今度は電灯をつけて同じ仕事を続けるのです。
 しかし、昼間のタブローをそのまま続けるわけにはいかないから、別のタブローでするのですが、今度は夜の電灯の光で、しかし同じ距離、同じポーズで、同じ仕事を続ける。そして夜の十時になり、十一時になり、十二時になってもなかなか彼は筆をおかない。つまり、もう少しやれば、「目に見えるものを見える通りに」という年来の宿願、これまで誰もできなかったことができるかもしれないという期待があるから、「もう少し、あと五分」と言いながら、その五分が十五分になり、三十分になり、一時間になるという調子で、なかなかやめない。》

これは油絵の描き方としては素人同然である。油彩画というのは、続けて何時間もなでまわす材料ではないのだ。すくなくとも伝統的な(合理的な)技法としては。要するに、ジャコメッティにとってはそんなことはどうでもいい、不可能への挑戦を続ける、それだけである。

もうひとつ矢内原の観察で興味を引かれたのはジャコメッティがモノの置き方にこだわる性格だったこと。

《例えば、テーブルに座って、コーヒー茶碗をどこに置けばいいかということが彼には気になる。空間に於ける物の配置を考えるわけで、この灰皿に対してどの辺の距離にあるのが正しいかと考える。それは一種の偏執狂的な癖でしょう。
 若いときはもっとこれがひどかったらしい。例えば、紙屑籠に紙屑を捨てるときに、ただ捨てれば何でもないことだけれども、その紙屑籠の中のどの辺に落とせばいいかがわからなくてとても困ったといった話がある。夜寝るときに脱いだ上着をどこに置いていいかわからない。正しい位置にきちんと置くとはどういうことかということが気になる。》

ジャコメッティは「正しい」とか「真実」へのこだわりが人一倍強かったようである。それにしてもクズのクズカゴにおける「正しい」場所とは……恐るべし。

これも矢内原の発言、ジャコメッティの印象深い言葉。

《ひとつだけあげるとしたら、ジャコメッティが死の直前に書いた言葉「彫刻とか絵画とか、そんなものはたいしたものではない、試みること、それだけがすべてだ」という言葉をあげたいと思います。

やはりこれは実存主義的な発言かなと思ったりもするが、まあ、そんなことはさらにどうでもいいことだ。

この対談、元は、一九八〇年、表参道の Galerie 412 で開催されたジャコメッティ展会場で行われたそうだが、それを書籍にするにあたって改めて対談し直したという。聞き手を同ギャラリーのオーナー村越美津子が務めている。



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挟み込みの用美社出版のしおり。四つ折りのなっている紙の片面だけ。『京都画壇周辺』がでている。それにしても加藤一雄の本の話はどうなったのかなあ……。

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# by sumus2013 | 2018-03-12 20:40 | 雲遅空想美術館 | Comments(0)

TakaMatsu Bookshop map

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讃岐・高松の書店ガイド「TakaMatsu Bookshop map」を頂戴しました。ありがとうございます。半空、な夕書、かまんよ書店、本屋ルヌガンガ、YOMS、touca、BOOK MARÜTE、Solow、へちま文庫。ここしばらく高松から足が遠のいている。知らないうちにこんなに(古)本屋ができているとは、オドロキ。


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また別の方より「西荻窪 古本とアンティークマップ」も頂戴した。こっとうの街と言っていいくらいアンティークショップが並んでいる、これにもビックリ。一度、ゆっくり西荻巡りもよさそうだ……。



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表紙もまぶしい『雲のうえ』28号(北九州にぎわいづくり懇話会、二〇一八年二月一八日、アートディレクション=有山達也)。特集『雲のうえ旅行社』。岡崎氏が牧野伊三夫氏と北九州を旅している。門司港へ来てここへ寄らずに帰る法はないという「佐藤書店」がなんとも良さそうで旅情を誘われる。

『雲のうえ』28号

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# by sumus2013 | 2018-03-11 17:37 | うどん県あれこれ | Comments(0)

川内の生んだもう一人の出版人

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川内出身の出版人は山本實彦だけではありません。
実は知る人ぞ知る “出版家” がいたのです―。

平成30年3月6日(火)~5月6日(日)

◆場所 川内まごころ文学館 2階ホール
◇開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
◆休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日) ※5/1は特別開館
◇入館料 大人 300円 小学生~高校生 150円
※土日祝日は小学生~高校生入館無料
*4/28~5/6はゴールデンウィーク無料開館


秋朱之介については下記サイトでもかなり詳しく取り上げられている。

編集工房スワロウデイル
188. 1936年の『木香通信』6月号(2016年9月26日)


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# by sumus2013 | 2018-03-10 19:53 | もよおしいろいろ | Comments(0)

哀れな男の独り言

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本の整理中という某氏より仏蘭西書を四冊ほど頂戴した。深謝です。なかでもこの一冊は嬉しかった。ジャン・リクテュス(1867-1933)『哀れな男の独り言』。

Jehan-Rictus『Les Soliloques du pauvre』(Eugène REY, libraire éditeur, 1934)

これは歿後刊行の後版だが、それでもフランスで買えば、そこそこの値打ちもの。初版は一九〇三年(Sevin et Rey, 1903)で、そちらは状態が良ければ1000ユーロ以上。ジャン・リクテュスの代表作とされる詩集である。

表紙と挿絵はスタンラン(Théophile-Alexandre Steinlen, 1859-1923)、十九世紀末から二十世紀初頭のパリのシーンを描いて活躍した画家、イラストレーター。キャバレー「シャノワール(黒猫)」のポスターがよく知られる。本書でも哀れな男(「貧しい男」とも)が夜のパリをほっつき歩く、その様子がうまくとらえられている。

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貴重なのは、このカバー。出版社が付けたのではなく、書店が汚れ防止のために被せている。英語で言うところの「ダスト・ジャケット」。リブレリー・ジベールの名前入り(現在のジベール・ジョセフ書店の前身だろう)。そして本体のタイトルが手書きで背と裏表紙に書き込まれている。ジャケットの背にはタイトルを書き入れるための空欄がある。この手のカバーはパリの古本漁りでも見かけたことがなかった。裏表紙(表4)は保険会社の広告。

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以下、ざっとページをめくる感じで紹介するが、多数のイラストがまるで劇画のように展開するのが、非常に興味深い。絵本と言ってもいいくらいだ。

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フランス語のウィキに「Jehan-Rictus」は不完全な「Jésus-Christ」のアナグラムだと書いてあった。そう言われれば、たしかに。本名は Gabriel Randon de Saint-Amand。最晩年の彼はペンネーム「Jehan-Rictus」のハイフンを必ず付けるようにうるさく言っていたようだ。多くの編集者がそれを無視するのを嫌ったと言う。残念ながら本書でも省略されているが…。


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# by sumus2013 | 2018-03-09 20:48 | 古書日録 | Comments(0)

黒岩比佐子さん旧蔵書

黒岩さんの旧蔵書の表紙がネット上で見られるようになった。さすがワクワクするような表紙がズラリ。

古書の森 逍遙』の黒岩比佐子さんの旧蔵書プロジェクト(2018.1.9)
『古書の森 逍遙』の著者、黒岩比佐子さんの旧蔵書の表紙をインスタグラムにアップするプロジェクトがスタートしました。
没後、旧蔵書を神奈川近代文学館に寄贈するにあたって、「黒岩比佐子を語り継ぐ会」の面々が、手弁当で約1年をかけて書誌データ作成と表紙のスキャンデータ化を遂行。黒岩さんが古書展の人垣をかきわけて買い集めた約6000冊の「古書の森」の全貌が、今後、明らかになっていきます。『古書の森 逍遙』に収録された本も多数アップされます。》(工作舎NEWS)

◉Instagram: @kuroiwa_library
 https://www.instagram.com/kuroiwa_library/

◉古書の森日記 by Hisako:古本中毒症患者の身辺雑記
(2018年01月09日:インスタグラム始めました)
 http://blog.livedoor.jp/hisako9618/
 
◉神奈川近代文学館:収蔵コレクション
(黒岩比佐子収集資料:寄贈・寄託年月ー2012年3月)
 http://www.kanabun.or.jp/reading_room/keeping-collection/
4,300点。 黒岩が執筆のため収集した図書雑誌。『食道楽』『日の出島』『HANA,a Daughter of Japan』ほか村井弦斎著書、「東洋画報」「近時画報」「日露戦争実記」などの国木田独歩関連雑誌など。


大日本レトロ研Q所の理科系稀書・珍書もネット上で順次公開されている。こちらは内容の一部も閲覧できる。必見。

大日本レトロ図版研Q所 架蔵資料目録

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# by sumus2013 | 2018-03-08 20:00 | コレクション | Comments(2)

花森安治装釘集成・書評その他

花森安治装釘集成
みずのわ出版代表 柳原一徳

日本の古本屋メールマガジン第219号
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3132



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『中國新聞』2018年1月4日



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『東京新聞』2017年2月5日



本はねころんで「花森安治装釘集成2」
http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20170203


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『イラストレーション』誌2017年3月号(No.213)でもご紹介いただきました。
http://www.genkosha.co.jp/il/backnumber/2021.html




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『出版ニュース』2017年1月上旬号



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『東京新聞』二〇一六年一二月二五日



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『週刊長野』二〇一六年一二月一七日



《吉岡実の詩の世界》
http://ikoba.d.dooo.jp
編集後記 170(2016年12月31日更新時)


通崎好み製作所


okatakeの日記



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# by sumus2013 | 2018-03-08 19:44 | 装幀=林哲夫 | Comments(4)

人と会う力

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岡崎武志『人と会う力』(新講社、二〇一八年二月二六日、カバー・本表紙イラスト=著者、装丁=ロコ・モーリス組)読了。

人と会う力

還暦を迎えた岡崎武志のすべて(!)がここに集約されている、というか神の滴みたいな岡崎エキスで満たされた一冊と言い換えてもいいだろう。

《この本は、本編にも名前が登場する編集者で作家の坂崎重盛さんと、神保町の酒場で飲んで話したことがきっかけで生まれた。私は忘れていたが、もろもろ話していた時に、「ぼくは人と出会うことで、これまでの道を切り拓き、いい仕事に巡り会ってきた。人と会うことで作られた男なんです」というようなことを坂崎さんに言ったらしい。たしかにそうだし、今でもそう思う。ほんの、酒場での気負った戯れ言のような発言であったが、坂崎さんは聞き逃さず、「それ、一冊、本が書けるんじゃないですか」と返してきた。》

《自分が幸福か不幸であるかと問われれば、人に「会う」ことについては、幸福だったとしか言いようがない。自分のことを書きつつ、さまざまな「会う」バリエーションを考え、先人たちの例を挙げることで、貧しい体験を補強してみた。

はげしく同感したのは「『坊っちゃん』はダメである」の章。

《人生のいろいろな局面で、人と「会う」ことを大切にするなら、ぜったいに「坊っちゃん」を真似してはいけない。なぜなら、この若者は、ことごとく「会う」機会を拒否し、避けて通っているからだ。

坊っちゃんはサイテーな奴だな、と前から思っていた。どうしてこの小説が読まれるのか、気分が悪くなるような作品ではないか。漱石研究者ならば、ここに漱石の挫折の深刻さを読み取れるかとも思えるが、この小説を書くことが漱石のうっぷんばらし(カタルシス)になったとしたら、当時の漱石は相当に病んでいたと思う。

《こういう人物が、自分の会社、あるいは学校で同じクラスにいてごらん、果たして尊敬できるだろうか。「こいつ、バカじゃないか」と思うのではないか。
 『坊っちゃん』は、作品の出来としては素晴らしい。しかし、人間としては欠陥が多過ぎる。人と親しくなるためには、すべて「おれ」がやったのとは逆のことをしなくてはならない。

小生は、作品の出来についても疑問を持っている。駄作の多い漱石のなかでもつまらない部類に入るのが『坊っちゃん』という気がしないでもない。ひょっとして『猫』みたいに何かヒントになった先行作品(イギリスの諷刺小説とか)あるのかもしれないが……。晩年の漱石はこれが一番気持良く読み返せた自作だと弟子に語ったらしい。そういう意味では『坊っちゃん』に漱石の本音がストレートに現われているのは間違いないようだ。漱石は「おれ」みたいになりたくて、でも結局そうはなれなかった、ということなのかもしれない。

思わず脱線、失礼。『坊っちゃん』だけじゃない、他にも「男はつらいよ」やディック・フランシスの競馬シリーズ、笑福亭鶴瓶、キャロル、ザ・フォーク・クルセダーズ、高田文夫、鮎川信夫などなど、自家薬籠中の話題で「出会い」の機微を説いて行く。岡崎エキスと書いたのはこのためである。

いちばん最後のところに置かれた「小沢昭一さんに会えてよかった」、なんともスリリングな、しかし、いい話。人はすべからく、こうありたいもの。

《これから先、どれだけのことがやれるだろう。無力、無学を自認してきたが、何もなければ、何もできてこなかっただろう。支えてくれた人たちのおかげもある。そのことに、素直に、深く感謝したい。》(「『還暦』の会 感謝の言葉」より)



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# by sumus2013 | 2018-03-07 20:34 | おすすめ本棚 | Comments(2)

大阪繁昌詩

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田中金峰『大阪繁昌詩』の中巻のみ入手。むろん双白銅文庫なり。この詩と註釈からなる三冊(続が三冊の計六冊)本についてはネット上で多く取り上げられており、小生ごときがとくに註釈することもない。

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一応リンクしておくと、活字で読みやすいのがこちら。評伝も収録。


『大阪繁昌詩』上中下の全ページ画像はこちら。

大阪繁昌詩 お茶の水女子大学附属図書館

田中金峰の略歴はこちら。

大阪繁昌詩 日本漢詩選 詩詞世界

幕末の天才少年だったらしい。ところどころしか読んでいないけれど、観察が若々しいというか、やや幼い感じがしないでもない。たとえば祖母が田楽好きの部分とか。

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心斎橋の夕涼みの様子など、いきいきと描けている。

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そして、書店はみな心斎橋筋(條)にあった。その繁昌の様子が簡潔に描かれている。

武編文帙利頻鋤   武編文帙 利頻りに鋤く
戸戸乗晴驅白魚   戸戸 晴に乗じて白魚を驅る
肆上老商私詑我   肆上の老商 私かに我に詑/ジマンイフ/す
今朝交易得珍書   今朝 交易して珍書を得たり

 書肆は皆、心齋橋條/シンサイバシスジ/に在り。肆下、白招牌/シラハリノカンバン/を安/ヲ/き、牌面に其の名を題す。二酉五車、庫に藏し、汗牛充棟、肆に列す。方伎生/イシヤ/、緇流客/ボウズ/、去來頗る織るが如し。屨、常に戸外に満つ。
 家父の七絶、華城詩鈔に見ゆ。

上下巻も……入手したいなと思って調べると、ちょうど上下巻が、なんとか手に入れられる値段で「日本の古本屋」に出ている。これは迷います。


因果道士著・中島棕隠軒編集『都繁昌記』

寺門静軒『江戸繁昌記初篇』

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# by sumus2013 | 2018-03-06 20:45 | 古書日録 | Comments(0)