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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


びいどろ

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杉江重誠『びいどろ』(甲鳥書林、一九四二年六月一日)。久しぶりに甲鳥書林の本。この本は以前はよく見たけれど、最近はあまり目にした記憶がない。甲鳥書林の出版物を蒐集していたときに何冊か求めた覚えがある。これはまた別の一冊。函があったはず。装幀は甲鳥本らしく凝った造り。表紙に見える白い線、じつはガラス繊維のオビを貼付けてあるのだ。

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《この本の表紙には、本の名前にふさはしい工夫を加へてみたいと思つて考へて見た。出版元からもそんな意見が出たのを幸とし、新しい試みとして、ガラス糸の織物を表紙に使ふことになつた。
 ガラス織物は現在我が国でも工業的に作られて居り、その織方もいろ〜〜あるから、それらを巧みに使ひ分けたならば、本の表紙装幀に新機軸が出せると思ふたのであるが、大東亜戦争が始まつて以来、幅広のガラス織物はすべて軍需品として、多量に使用されるやうになつた。それ故に、戦争に直接必要のないこんな本に使ふなど思ひもよらないことであり、改めて軍需に余り必要のないガラス糸織リボンを利用することになつた。
 而してこの本に貼つてあるガラスリボンは、大野清一さんが、私の考へに讃意を寄せられ、特にこの本の為に贈られたものであることを記し、ここに深甚の謝意を表する次第である。又これを表紙に応用する製本技術上のことに就いては、出版元の矢倉さんと内外出版印刷会社の藤谷さんから色々考へて頂いた。》

「後記」に表紙の説明とともに矢倉年(やぐら・みのる)の名前が出ていた。またガラスを装幀に使ったものはこれまでに三種類あると書かれている。

(一)歌集「南京玉」宮川曼魚著、大正四年刊。
(二)「不謹慎な宝石」国際文献刊行会、昭和四年刊。
(三)詩集「魔女」佐藤春夫著、昭和七年初版。

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# by sumus2013 | 2018-08-15 17:12 | 関西の出版社 | Comments(0)

聖なる館

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先月の京都レコード祭りにて。レッド・ツェッペリン「聖なる館(Houses of the Holy)」(Atlantic Records, 1973)。ジャケ買いです。危ないデザイン。アメリカでは検閲でストップをかけられ、オビでお尻を隠すことでなんとか収まった、とのこと。

このカヴァー・アートは北アイルランドの北岸にあるジャイアンツ・コーズウェイ(Giant's Causeway)という奇岩で有名な場所で撮影された写真をコラージュしたものだとか。ピンクフロイドらのアルバムを手がけていたデザイン・グループ「ヒプノーシス(Hipgnosis)」のオーブリ・パウエルによって制作された。アーサー・C・クラーク『幼年期の終り Childhood's End』の結末によってインスパイアされたのだそうだ。

モデルはステファンとサマンサ・ゲイツという姉弟ら(サマンサは沢渡朔の写真集『少女アリス』のモデルにもなっている!)。悪天のため思うような写真が撮れずに撮影は十日間以上も続いた。二人の子供の写真はモノクロで撮影され、十一人としてコラージュされる際に彩色された。インナー・スリーブの写真はコーズウェイ近くの中世の城(Dunluce Castle)で撮影された。

じつはこのジャケットは第二作で、第一作は同じくヒプノーシスのソーガスン(Storm Thorgerson)によって制作された。それはテニスコートにラケットが置いてあるという図柄だった。ソーガスンはこのアルバムはラケットのような音がするからだと主張したようだが、バンドは彼をクビにしたので、代りにパウエルが担当することになった。

と以上は英文のウィキ「Houses of the Holy」および日本文のウィキ「聖なる館」を適当に参照してアレンジした。ジミー・ペイジは気に入っていなかったようだが、カヴァー・アートとしては目に焼き付く仕上がりではある。

レッド・ツェッペリン/コンプリート・スタジオ・レコーディングス

# by sumus2013 | 2018-08-14 20:42 | おととこゑ | Comments(4)

第31回下鴨納涼古本まつり

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下鴨へ、午前十時前着。久しぶりに会う人も多いが、みなさん健在の様子は何より。ただMさんが調子悪いとある方よりうかがって心配している。命にかかわるようなことはないそうだが、初日には必ず顔を合わす方だけに、無理せず復帰していただきたいものと心より念じている。また、リーチアートの廣岡倭氏が最近亡くなられたとも聞いた。梅田の店では個展「讀む人 林哲夫展」も開かせていただき、大変お世話になった。ご冥福をお祈りしたい。

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今回は最初にのぞいたシルヴァン書房さんでそこそこ買ってしまい、満腹の感じで後はぶらぶら歩き。それでも何冊か小さな本を求めた。やっぱりこれだけ数量があると、珍しいものが目に入ってしまう。三冊五百円だと買わないわけにはいかない(?)。

途中でKさんとTさんにお会いしてお茶でもということで下鴨本通沿いの喫茶店へ入り、あれこれフランス文学の話など。Tさんはトリノで開かれる学会でアポリネールと堀辰雄や中原中也の関係についてレクチャーするとか。邦訳されていないフランスの素晴らしい作家ピエール・ミション(Pierre Michon)についてうかがう。

下鴨会場には戻らず、ヨゾラ舎に寄ってから(オタさん棚追加に飛びつく!)、レティシア書房夏の古本市をのぞく。これは立寄って良かった。出品店それぞれに個性を出したいい本が並んでいた。ちょうど原文を読みたかったヴィヨンが見つかったので確保。ドイツ語対訳だが、まあとりあえずの参考に。『François Villon』(Englisch Verlag Wiesbaden, 1976)。夜野悠氏の出品だったので、なるほど、と納得した。

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そして最後に狂言屋の古本イエーへ。若い人たちがたくさん集っておられ、ちょうど榊翠簾堂さんも甲子園球場から戻って来られて面白い観戦談をあれこれ。今日、龍谷大平安が勝利して甲子園春夏通算100勝になったとか。レティシア書房でも会ったN氏も来合わせる。収穫を見せてもらうとシブイ純文学系をたくさん買っていた。まだまだ賑わいは続く感じであったが、朝からの古本熱で少々疲れたので引き上げる。小生の他の収穫は折りに触れ紹介します。

# by sumus2013 | 2018-08-11 21:11 | 古書日録 | Comments(0)

レッテル新収

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新収と言うか、再発見。まずは中澤弘光『回想の旅』(教育美術振興会、昭和十九年)の裏の見返し遊び紙に貼ってあった「イデア書房/大阪上六交叉点西入/IDEA BOOK STORE」。

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『サン・ヌゥヴェル・ヌゥヴェル 第二巻』(洛陽書院、一九四九年)には「西荻/盛林堂書房」のレッテルあり。

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そしていつもレッテル通信をくださる某氏より二点。「八勝堂書店/池袋西口」と「ブックブラザー/源喜堂書店/神田小川町]。

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《まさか閉店するとは思わなかった八勝堂、ご店主が亡くなったためとのことでしたが、一昔前の棚の構成の印象があり、あるいは今の古本者の好みとは合わなくなっていたのかもと余計な想像もします。


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《源喜堂は年一回の目録が独特、店の場所も神保町からは微妙に離れていますね。某俳人の軸が安く目録に出ていたので、受け取りに行ったことがあります。最近とみに赴く書店、また探求書の範囲が狭くなり、何も買わない、あるいはすでに読んだ、買った本をもう一度買うということが続きます。》

まったく同感なり。

# by sumus2013 | 2018-08-09 19:27 | 古書日録 | Comments(0)

書物工芸

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「書物工芸 柳宗悦の蒐集と創造」展(日本民藝館、二〇一八年七月三日〜九月二日)の図録(A4判八頁)。

柳宗悦『蒐集物語』

柳宗悦の蒐集から書物にしぼって展示しているようだ。「書物工芸—柳宗悦の蒐集」「浄土教聖教と仏書」「挿絵本」「雑誌『工藝』と私版本」の四つの部屋に分かれている。

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図版を見るだけでも柳宗悦の眼の高さがよく分る。

# by sumus2013 | 2018-08-08 17:46 | もよおしいろいろ | Comments(0)