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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


近澤書店

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レッテル通信を頂戴した。今回はいつにもまして珍しい一枚があった。近澤書店、京城府中区明治町一丁目。京城府(けいじょうふ・キョンソンブ)は日本統治時代の現・ソウル特別市の呼び名である。それ以前、李氏朝鮮時代には漢城府(ハンソンブ)、その前は漢陽府(ハニャンブ)と呼ばれていた。中区とあるが、区制が導入されたのは昭和十八年六月だから、このレッテルもそれ以降ということになる。現在の明洞(ミョンドン)が統治時代には明治町と呼ばれ、日本人居住区・商業中心地となっていた。

近澤書店は出版も行っていたようである。『全国書籍商組合員名簿』(大正15年4月)には「出版及販売」として

合資会社近澤商店出版部(近澤茂平)

の名前が見えている。詳しくは下記論文を参照されたし。

「日中戦争前夜の植民地朝鮮で流通していた日本語書籍」平田賢一

どんな出版物があったのか、検索してひっかかったものだけ。

朝鮮の囘顧 和田八千穂・藤原喜蔵編 近沢書店 1945年3月
枯蘆 題字・高濱虚子 装幀・石井柏亭 清原枴童(伊勢雄) 近沢書店 昭18
朝鮮住民ノ生命表 水島治夫 近澤書店 1938

新稿 朝鮮行政法概要内田達考 著 近沢書店 1937
朝鮮行政法概要内田達孝 著 近沢書店 1936
朝鮮行政法概要内田達孝 著 近沢書店 1935
全訂 朝鮮行政法概要内田達孝 著 近沢書店 1935
全訂 朝鮮行政法概要 : 全 内田達孝 著 近沢書店 1934
朝鮮行政法概要内田達孝 著 近沢書店 1934
朝鮮行政法概要 : 全 内田達孝 著 近沢書店 1933

京城医学専門学校一覧 : 昭和14年..京城医学専門学校 編近沢印刷部 1939
京城医学専門学校一覧 : 昭和14年..京城医学専門学校 編京城医学専門学校 1939
京城医学専門学校一覧 : 昭和13年..京城医学専門学校 編近沢印刷部 1938
京城医学専門学校一覧 : 昭和12年..京城医学専門学校 編京城医学専門学校 1937
京城医学専門学校一覧 : 昭和11年..京城医学専門学校 編近沢印刷部京城1936
京城医学専門学校一覧 : 昭和10年..京城医学専門学校 編近沢印刷部京城1935
京城医学専門学校一覧 : 昭和9年..京城医学専門学校 編近沢印刷部京城1934

もっとよく探せばいろいろありそうだ。

# by sumus2013 | 2019-07-23 20:25 | 古書日録 | Comments(0)

パゾリーニの青春

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東京国際映画祭のサイトに嬉しいニュースが出ていた。

田中千世子さん(第18・19回TIFFプログラミング・ディレクター)の著書
『ジョヴェントゥ ピエル・パオロ・パゾリーニの青春』が
国際フライアーノ賞を受賞!
https://2019.tiff-jp.net/news/ja/?p=52254

《田中千世子氏の著書『ジョヴェントゥ ピエル・パオロ・パゾリーニの青春』(みずのわ出版、2019)が、イタリアの国際フライアーノ賞の一部門である「第18回イタリア語イタリア文学海外研究者賞」に選出され、授賞式がアブルッツォ州ペスカーラにて7月6日に行われました。

この賞は、世界各国のイタリア語イタリア文学研究者の中から選ばれたひとり、または複数の執筆者に対して与えられ、世界のイタリア文化会館の館長によってそれぞれ推薦された出版物から選考されます。フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』などの脚本家としても知られる作家エンニオ・フライアーノの名を冠した国際フライアーノ賞は今年で46回を迎え、文学・演劇・映画・テレビ・ラジオなど各分野の優れたエンターテイメントに贈られる権威ある賞として国内外に知られています。》

装幀を担当させてもらった者として、正直なところ、外国の人たちにも受けるイメージを想定して、この画像を使ったということを告白しておく。思うツボです。


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題 名=ジョヴェントゥ ピエール・パオロ・パゾリーニの青春
発行日=2019年1月1日
著者等=田中千世子(たなか・ちせこ)
発行所=みずのわ出版
http://www.mizunowa.com/index.html
装 幀=林哲夫

詩人としてのパゾリーニは『パゾリーニ詩集』(みすず書房、二〇一一年)で広く知られるところだろう。本書では、そのパゾリーニの文学的な原点であるフリウリ語との関連をかなり深く掘り下げた内容が注意を引く。

《パゾリーニはフリウリ語で詩を書き始めた。そして文学雑誌を発行した。雑誌の名前は"STROLIGUT[ストロリグト]"(暦)、季刊である。一九四四年四月に最初の号が出た。
 その巻頭言にパゾリーニは書く。フリウリ語でーー。現代イタリア語の対訳などあるはずもない。イタリア人で文学的教養の豊かな人でも半分もわからない。フリウリ人でなければ読めない言葉だ。》

《フリウリは現在、正式にはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア自治州と呼ばれ、イタリア共和国の北東部に位置する地域だ。州都はトリエステ、アドリア海に面した由緒ある港湾都市で、東は旧ユーゴスラヴィア、現在のスロベニアとの国境だ。》

パゾリーニはボローニャに生まれてボローニャ大学で学んでいるからフリウリ人とは言えないが、母親がフリウリ地方のカサルサ出身で第二次大戦中は母の故郷で過ごした。一九四六年から書きためたフリウリ語の詩を『カサルサ詩集 Poesie a Casarsa』として刊行している。

《地元の若者の誰かしらがこれを読んだ。そして失望とともに驚かずにはいられなかった。都会のボローニャからやってきた優秀な学生がよりにもよって農民たちが使う田舎丸出しの方言を詩に使っているのだから。と、ニコ・ナルディーニは解説する。
 たとえて言うと、東京に出て文学修業していた中上健次が地元に戻って新宮弁で詩集を発表したようなものか。だが、中上はもともと新宮の人間だから、違う。》

《中上ではなく、別の東京の坊ちゃんか、京都か神戸の坊ちゃんで、母方の実家が新宮にあって、そして、その坊ちゃんが母方の実家の町に戻って、新宮弁で文学を発表したーーと想定したら? 地元の若者は「なんや、俺らの田舎臭い言葉を使いよって」と驚く。そうするとパゾリーニの詩を読んだフリウリの若者の気持ちがわかりやすくなるだろうか。》

なるほど、そういうものか。著者は山梨県生まれ。映画評論から自主映画の製作監督へ。イタリアにおいてはパゾリーニ財団との関わりも深く、著者ならではの視点で多面的に、日本の状況とも対比しながら、論じられている。むろん映画についても多くの紙幅が割かれており、そう言えば、パゾリーニ、昔はよく見たなあと断片的に思い出したりした。

パゾリーニの青春はやはり戦乱と切っても切れない。ファシズムの闘いも、ファシズムとの闘いもあり、内乱もある。戦後の荒廃も。そう言う意味から、少し派手に、燃え上がるようなデカルコマニイのジャケットを作ってみた。

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ジャケットと表4


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ジャケットと扉


【用紙】
カバー MTA+-FS 四六判Y目 135kg
表 紙 気包紙-FS(U) ディープラフ L判Y目215.5kg/K判T・Y目147.5kg
見返し ハンマートーンGA ブラック 四六判Y目 130kg

# by sumus2013 | 2019-07-22 13:49 | 装幀=林哲夫 | Comments(0)

誹風柳樽五篇

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ゴーリー一箱古本市の日、善行堂の店頭にて佐藤要人校注『誹風柳樽五篇』(現代教養文庫、1986年1月30日)を求める。五冊あるのだが、五篇のみ・・・さすがにバラでは揃わないか。十周年記念のホワイトカバーを掛けてくれた。

もう梅雨は明けるだろうと思いつつ、雨に関したものをいくつか拾ってみる。

おしそうに姿を崩す雨やどり  かぞへこそすれ〜〜

雨やどりした若い女が小止みを待って駆け出す、今まですまして歩いていたのに、着物の裾をはしょって走るのが惜しい・・・という心理だそうだ。

雨舎[やど]り煙管[きせる]を出して叱られる  よくばりにけり〜〜

雨やどりしている間に一服しようとしたら、その家のひとに叱られた。江戸市中では街頭での喫煙は厳重に禁じられていたそうだ。火災を何よりも恐れた。雨の日でも・・・

越後屋の前迄傘に入れてやり  わづか成りけり〜〜

ごふくやのはんじやうを知る俄[にわか]雨  是は〜〜と〜〜

越後屋呉服店(三越の前身)ではにわか雨のときに番傘を貸してくれた。越後屋まで傘に入れてやれば、そこで番傘を借りられる。雨が急に降り出して傘を借りに得意客が押し寄せるのは繁盛している証拠。越後屋のマークが入っていて宣伝にもなったとか、そういうことか?

本に関する川柳を一首。

かし本屋是はおよしと下へ入れ  まねきこそすれ〜〜

これはあんたにはちょっと早いよ、と隠されると、どうしても読みたくなるわけだ・・・

# by sumus2013 | 2019-07-21 17:17 | 古書日録 | Comments(0)

中松商店の本

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銀座・中松商店より『マッチ箱の銀座』(中松商店、2019年6月12日)届く。銀座の老舗三十数店ほどのマッチの写真が収録されている。昭和三十年代だろうと言うことだが、戦前の雰囲気を感じさせるものもあるし、五〇年代のモダニズムを反映しているものもある。さまざまな傾向のデザインが混在していながらも、どこか統一感もある。見飽きないのだ、不思議に。

佐野繁次郎のレンガ屋マッチ、洒落てる!

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*****



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銀座・中松商店より『鈴木信太郎いろいろ』(中松商店、2019年5月24日)届く。展示はもう終わってしまったが、この図録を見ると、鈴木信太郎のさまざまな仕事の断片が集められた好ましい展覧会だったようだ。挿絵原画、スケッチ帳、色紙、葉書、マッチ、装幀本、陶器など、じつに楽しい雰囲気。鈴木信太郎ファンは必見です。購入は中松商店まで。

銀座 中松商店
〒104-0061 東京都中央区銀座 1-9-8 奥野ビル313号室
tel.03-3563-1735

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# by sumus2013 | 2019-07-20 20:43 | おすすめ本棚 | Comments(0)

goreyで一箱古本市

gorey で 一箱古本市

毎月第三土曜日開催


8月17日(土)
12:00~18:00



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以前のマサキング氏の一箱


gorey で 一箱古本市

毎月第三土曜日開催


8月17日(土)
12:00~18:00





# by sumus2013 | 2019-07-19 17:26 | もよおしいろいろ | Comments(0)

美人千里

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藤澤南岳の漢詩軸、少し前に入手した。簡単に読めそうで、意外と難しい。

 美人千里思悠々欲接貴姿不自
 由一夜碧雲湖上月牽将吟夢到
 仙楼
     松江湖楼作  七十二翁南岳

こんなところでどうでしょう?

# by sumus2013 | 2019-07-19 17:25 | 雲遅空想美術館 | Comments(0)

山田稔自選集 I

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『山田稔自選集 I』(編集工房ノア、二〇一九年七月七日)読了。面白い。このところ刊行されている著作よりも、本書は、もう少し一般向けというか、広く読者を想定しているエッセイ群なので、同じく文学者について描いていても、もっとストレートな別種の面白さがある。

それにしても、さすが『スカトロジア』の作者である。当然、本書でもその片鱗・・・というか本領発揮。犬の糞、こやしの匂い、小出楢重の立ちション、おねしょ、深瀬基寛の痔・・・そして最後は「でたかな? まだまだ」「パンス・ア・クロット」「便所にて」「ヴォワ・アナール」「コーモンのむこうがわ」とたたみかける(もちろん、すでに読んだものもありますが)。山田さんがどうしてアルフォンス・アレーを翻訳しているのかがスッと納得できる。ケツ作群である。

埴谷雄高を描いた「埴谷さんの家で」のなかに

《古い映画の話になったとき、何がきっかけだったか、「山田稔はジャック・カトランに似ていますよ」と言い出して私を面くらわせた。はじめて聞く名前だった。昔のフランスの二枚目俳優だそうで、そのカトランが監督した『嘆きのピエロ』という作品が当時(一九二五年ごろ)公開されて大当たりした。その主題歌を懐かしそうに口ずさむ埴谷さんには、往年のモダンボーイの面影があった。》

というくだりがある。ジャック・カトランてどんな俳優だろうか? フランスのヤフー!で検索したらたくさんの写真が出てきた。トップに出た一枚が何か他の写真と少し違うな、と思ってクリックしてみると、

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Jaque Catelain, 1922.
Photo : Man Ray

というキャプションがあった。なるほどねえ。山田さんに似てるかな? 額が広いところとか。独特の知的な雰囲気か?

山田稔、富士正晴展 II

# by sumus2013 | 2019-07-17 20:40 | おすすめ本棚 | Comments(0)

植物学小教科書

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安田篤『改正改版植物学小教科書』(六盟館、明治三十九年一月十五日六版)。明治の教科書の挿絵には魅力がある。木口木版の独特な描写力もそうだが、この教科書ではとくにレイアウトにそそられる。ちょっとシュルレアルなセンスがあるように思う。

安田 篤(やすだ あつし、1868年9月8日 - 1924年5月12日)は、日本の菌類学者である。
東京の旗本の家に生まれた。府立一中から第一高等学校を経て、東京帝国大学植物学科に入学した。松村任三、三好学の指導を受け、菌類の生理学を学んだ。1897年、第二高等学校(東北大学)の講師となり、同年教授となった。蘚苔類、地衣類、菌類の研究を行った。》(ウィキ)

# by sumus2013 | 2019-07-15 20:44 | 古書日録 | Comments(0)

丘の上の対話

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19480825[重版] 丘の上の對話
著 者 竹内勝太郎
発行者 八木亀次
印刷所 日本写真印刷株式会社 京都市中京区壬生花井町三
発行所 圭文社 京都市中京区六角通高倉東入
176×124mm 191pp ¥60 


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「あとがき」を富士正晴が書いている。

《その書物がいま上梓されることになつたことについて版元の人達の示された御厚意を思ふと共に、海南堂主人扇子安次氏が惜しまれず盡して下すつた友情を一生忘れ得まいと思ふ。》

「あとがき」の日付は昭和二十一年十月。この書き振りからすると富士はまだ圭文社には勤めていなかった。初版発行日は昭和二十二年八月五日、この重版は二十三年八月二十五日。この年、昭和二十三年以降、圭文社の出版物は見つからない。閉店まで勤めていたそうだから、この本は富士自らが手がけたのであろう。

# by sumus2013 | 2019-07-14 20:18 | 関西の出版社 | Comments(0)

葡萄9

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所用で出かけた帰途、久しぶりに街の草へ。先客に松江から来られた女性の方、南陀楼綾繁氏の知り合いだったので、少しおしゃべり。帰り際に古本紳士の0氏が見える。引っ越しをされたばかりの高橋輝次さんの話題など。

薄っぺらいもの何冊か掘り出す(文字通り本の堆積の下から)。いつ来ても意外性のある店だ。加納さんは、何年も前から自家目録を出すと言い続けているが、来年はサンボーホールに参加しないで、目録で勝負すると、本日、宣言。聞きましたよ。

その今年のサンボーホールで売れ残ったという『葡萄』九号(葡萄発行所、1956年8月10日)が嬉しかった。この表紙がなんとも素敵だ。誰のデザインだろう、北園克衛とも少し違うし・・・帰宅して検索してみたら、なんと、

「葡萄の季節に、堀内幸枝さんの詩誌『葡萄』」西山正義

伊達得夫ではないですか! なるほど、と唸る。


# by sumus2013 | 2019-07-13 20:20 | 古書日録 | Comments(0)