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NYとパリの古本屋

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木下勝弘『田中一光へのオマージュ: with and without IKKO TANAKA』(デザイン倶楽部、二〇〇三年四月一〇日)を頂戴したので拾い読んでいるとニューヨークの古書店が出てきた。「モダン・タイポグラフィの流れ展」(ggg、一九九五年)の本創りに関しての記録のなかにこうある。

《[一九九六年]一月十日(水)自分の蔵書資料の中に、「Typography: Master Designers in Print 1・2」とアレクセイ・ブロドヴィッチのデザインした幻の雑誌といわれている「PORTFOLIO」全三冊があることを思い出し、ヨーロッパ編前史とアメリカ編の導入部に用いることを思い立つ。この二種の古書は一九九〇年十一月五日(月)に、本書におけるアメリカ編の掲載作家であるイレーン・ラスティグ・コーンの私的な古書店「ex liblis」で入手したものだ。ハーバート・バイヤーの名作、五十三年のオリベッティのポスターも飾られた、デザインとアート本が数多くコレクションされている、マンハッタンのアパートメントの一室であった。》(p25)

検索してみるとNYCの「Ex-Libris」はすでに伝説な古書店となっているようだ。一九七三年から九八年まで、アーサー・コーエンと妻のエレーン・ラスティグが経営していた。

Ex Libris 2: Dada and Duchamp [Signed by Auster]

《Second catalogue of the antiquarian bookstore Ex Libris (NYC 1973-1998), founded by Arthur A. Cohen and his wife Elaine Lustig, which specialized in books and ephemera related to twentieth-century art. 》


昨日紹介した森岡督行『荒野の古本屋』にはプラハとパリの古書店が登場している。森岡書店開店直前に写真集を仕入れるために渡欧した。プラハでの逸話も面白いが、略して、パリへ。「didierlecointredominiquedrouet」という長ったらしい古書店。小生、店の前くらいは通ったはずだが・・・はっきり記憶していない。オデオン座の周辺には個性的な古本屋が多かった。

didierlecointredominiquedrouet

《いざ店内へ。まず入って右手の壁に展示してあるポスターが目に入った。くしゃくしゃの紙に「Mai 68」と印刷されてある。おそらく一九六八年の学生運動のときに配られたビラだろう。ここでは政治的な意味はまったく関係なく、無名の学生によるデザインのおもしろさを買えということらしい。五〇〇ユーロほどだったと思う。名著で名高いエルスケンの写真集『JAZZ』があるのを横目に見ながら奥へ進んで行くと、左側の棚にル・コルビジェ関係の本がビッシリ並んであった。
 しばらく眺めていたら、帳場からスタッフが出てきて「自由に見ていいよ」と声をかけてくれた。とはいっても、フランス語はできないから、表情などから大体そんな意味だろうと思っただけなのだが…。
 思い切ってル・コルビジェの写真集『AIRCRAFT』のオリジナル版を手に取った。一九三五年の出版にしてはものすごく状態がいい。おそるおそる値段を確認してみると、目玉が飛び出るくらいに高い。しかっし、この本は持っておきたいと素直に思えた。きっとあたらしい店の目玉にもなるだろう。スタッフの視線を感じながら、しばらく悩んだ。そして悩んだ末に、もとあった場所に戻した。》(p153)

森岡氏はクリニャンクールの骨董市に行きル・コルビジェの写真集を安く見つける。さらに「コレット」(二〇一七年閉店、サントノレという高級街にあったファッションの店、本も売っていたらしい、小生は行ったことありません)などの他、たくさんの古本屋を巡った。そしてふたたび「didierlecointredominiquedrouet」へ戻って交渉の末『AIRCRAFT』を大幅割引で手に入れることができたという。小生の貧しい経験からでもパリの古本屋はけっこう交渉に応じてくれるような気がする。

ついでに『書影手帖』で松野陽一氏が訪れたパリの古本屋も挙げておこう。ドルオー通に近いベルナール・ルソー。オルセー美術館裏の九谷焼店主に紹介されてまとまった和本に出逢うことになった。ルソーは地図で見ると9区パッサージュ・ヴェルドーの近所だ。

《どんなものが見たいか、というから、全部見たいという。
 四、五十点は卓上に置かれただろうか、二、三時間メモをとった。その間、客は一人しか入ってこなかった。結局、値段との相談で、
  絵本言葉種一冊
とワ印一冊だけを購入した。絵本言葉種[ゑほんことばのたね]は今のところ、目録類には出てこない。》(p228)

この後、迷ってあきらめた浮世草子四冊本を、店主がホテルまでわざわざ持参して、半値にするから買ってくれと言う。それでも高いと思ったが、買うことにして、帰国して調べると、それなりにいい買い物だったことが分かる。

当たり前ながら、各人各様それぞれの古本屋へ吸い込まれてゆくものである。


by sumus2013 | 2022-07-19 19:25 | 古書日録 | Comments(0)
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