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岡田睦作品集![]() 『岡田睦作品集』(宮内書房、二〇二一年一一月二三日、表紙イラスト=川崎ゆきお)読了。すごい小説というか、小生くらいの年齢になると、身につまされる内容だ。老人文学の傑作と言ってもいいかも。坪内祐三がショックを受けたというのも分からなくはない。 本書の年譜によれば、岡田睦(おかだ・ぼく)は一九三二年、東京府の立川町に生まれている。戦後、日本大学芸術学部映画科に入学、慶應義塾大学文学部仏文科へ移り、一九五六年卒業。在学中から『三田詩人』やガリ版同人雑誌『黒白地帯』に詩を書きはじめる。一九五八年から小説を発表。一九六〇年、小説「夏休みの配当」が第四十三回芥川賞候補となる。一九七〇年、初の単行本『薔薇の椅子』(雲井書店)刊行。以降の著作に『ワニの泪』(河出書房新社、一九七六年)、『賑やかな部屋』(冬樹書房、一九七九年)、『乳房』(福武書店、一九八八年)、『明日なき身』(講談社、二〇〇六年)。二〇一〇年ごろ、多摩地区の特別養護老人ホームに入居していた。その後、死亡したため身元不明扱いで処理されたか、消息不明。雲井書店から処女作出版にはビックリ。一時期雲井書店の出版物を集めていたので。しかし岡田睦は持っていなかった。 講談社文芸文庫に『明日なき身』(二〇一七年)として入っているらしいが、まったく読んだことも名前すら初めて目にする作家だった。本書の発行人である宮裡將揮氏も『明日なき身』を手に取って「もっと作品を読みたい」という一心で本書を制作したのだそうだ。 《本書の作品群はいずれも三番目の妻と離縁して以降の単行本未収録作品を収めた。大別すれば、妻がいなくなった家で暮らす90年代の三作品「雑木林」、「一月十日」、「雪舞い」)と、妻からその家を追い出されて住むようになったアパートを自身の火の不始末で失い、福祉施設暮らしを余儀なくされた00年代の作品(「GIブルース」「As Time Goes By」)となる。》(解説) 読みはじめて、耕治人かな、と思ったが、本人は小沼丹や嘉村磯多が好きで、阿部昭とは親友だったそうだ。嘉村磯多の感じはなるほどと納得。悲惨ながらユーモアもあり、つげ義春ふうなイメージも浮かんで来るなど、なかなか筆達者な作家である。三人の妻に去られているのだが、誰か支えてくれる人がいれば、またひと味違った作品が書けたのかもしれないなどと余計なことを考えた。生活が悲惨な方が私小説作家としては題材に困らなくていいという見方もあるかもしれないけど。 岡田の弟子・藤口稔氏からの聞き書き「師匠と過ごした日々」も岡田睦を理解する上では非常に参考になる。岡田との手紙のやりとり、そして平成六年にひと月足らず岡田の家に同居した経験談が中心。なかで印象に残るくだりはこちら。 《それでですね、ある日に岡田さんが「座右の銘にしろ」という「三教訓」をくれたんです。「今からいうことをメモしろ」と言われて。 一、お先にどうぞ。 二、一つ一つ順番に。 三、石ころは石ころ。 この三つを書き取らせました。》(p203-204) 宮裡氏のようなファンが現われるということは、今後、石ころが大きくなってゆくことを示唆しているのかもしれない。
by sumus2013
| 2021-12-03 17:18
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