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白漣句誦

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『藤井恒雄句集 白漣句誦』(何必出版、昭和六十年九月二十五日)。均一棚に書套(無双帙)にくるまれた立派な体裁の句集が放り込まれていた。編者が京都の何必館主・梶川芳友、版元も何必出版である(印刷は光琳社、中西製本)。

《昭和五十六年十一月、私は念願であった美術館「何必館 京都現代美術館」を創立開館した。その時の第一番目の来館者が藤井恒雄御夫妻であった。
 新潟からわざわざの来館であり、聞けば一時間も前から外に立っておられたということである。》(「あとがき」p182)

翌日は瓢亭で美術や良寛について語り明かした。その二年後、五十八年九月に藤井氏は亡くなる。歿後、未亡人より建墓の相談があり、何度か燕小池の藤井宅を訪問していたときに《氏が長年親しんでこられた俳句の短冊がぎっしりとタンスに残されている》のを見つけた。

《その句風はじつに平明素直であり、そしてその表現のなかに心の感動があふれている。それは氏の美術に対する好みにも通じることに私は改めて感銘を受けた。》(同前)

三回忌の前にして本書が上梓されたといういきさつである。詠みぶりはたしかに平明素直。「口ずさむ御師たけしの落花の句」とあるので師は池内たけし(高濱虚子の次兄池内信嘉の長男、ホトトギス同人、『欅』主宰)だろう。今の時候にちなむ句をいくつか引用してみる。


灯ともせばほのかに雛の笑み給ふ

上の娘の姉らしきなり雛の宵

まだ寝るに少し惜しかり雛の夜

嫁ぐ娘の我に優しきお正月

  長女結納
菊大輪人に嫁るには惜しかりし

野火燃えて蒲原平野暮れ行きぬ

雪の夜の底に静かに世を生きん


by sumus2013 | 2021-02-15 17:21 | 古書日録 | Comments(1)
Commented by seb at 2025-08-09 12:16
まさか、家族以外で、祖父の句集を読んだ人が令和にいるとは思いませんでした。
読んでくださってありがとうございます。

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