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台湾館夜景

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「東京勧業博覧会 第二会場夜景」と題された絵葉書を見つけた。少し前に台湾館の絵葉書を紹介したが、それと同じシリーズである。同じ古本屋で見つけたので、以前からあったのだろうが、気づかなかった。


引用したのは夏目漱石の『虞美人草』(春陽堂、明治四十一年)に登場するこのくだり。

《「あれが台湾館なの」と何気なく糸子は水を横切つて指を指す。
「あの一番右の前へ出てゐるのが左様だ。あれが一番善く出来てゐる。ねえ甲野さん」
「夜見ると」甲野さんがすぐ但書を附け加へた。
「ねえ、糸公、丸で龍宮の様だらう」
「本当に龍宮ね」》(p258)

上の絵葉書の夜景がまさに登場人物たちが見た光景そのものということになる。あるいは、逆に、漱石はこの絵葉書を見ながら上記の会話を執筆した、のかもしれない。

《「あの横に見えるのは何」と糸子が聞く。
「あれが外國館。丁度正面に見える。此處から見るのが一番綺麗だ。あの左にある高い丸い屋根が三菱館。ーーあの恰好が好い。何と形容するかな」
と宗近君は一寸躊躇した。
「あの眞中丈が赤いのね」と妹が云ふ。
「冠に紅玉[ルビー]を嵌めた樣だ」と宗近君は知らぬ顔で俗にして仕舞ふ。》(p260-261)

と続くので、実際に漱石がこの夜景を見たことは間違いないだろう。ただ、記憶を手繰り寄せるためにこの絵葉書を使ったということは十分考えられる。





by sumus2013 | 2020-11-17 20:08 | 喫茶店の時代 | Comments(0)
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