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川柳や狂句に見えた外来語宮武外骨『川柳や狂句に見えた外来語』(半狂堂、大正十三年九月一日)。こちらも街の草にて。まず蔵書印に注目。扉に二顆。上は「乾坤到處皆吾室」。その下の絵だけのハンコはさてどう読むのか? 花と茸・・・ 「緒言」のところにも縦長の印がある。こちらは「求軟文庫」。検索すると、宮南裕著『漫話樹草譜』(宮南果、一九八〇年)が「求軟文庫」を名乗っている。同一人なのかどうか分からないが「求軟文庫」というのは偶然に重複するネーミングではないだろう。同一人と見るのが妥当かもしれない。キュウナン(求軟=宮南)ですな。 「例言」がとぼけている。外来語といっても横文字の国にかぎり、しかもエゲレス、ドイチ、フランスなどは省く。カッパ、ジバン、サラサ、ラッパなどは日本語化していて面白くないから止める。 《○狂句集の本は凡そ三百冊ほど持つて居るが、一々検閲のヒマがなく、又其得る所は費す所を償はない不経済の事であるから、十中の一二を披見したに過ぎない、助手とても編者と同じく、それ〜〜やるべき要件があつて働いて居るのである ○出来上がつて見れば、ツマラナイものゝやうだが、文化頃の『夢之代』に「西洋人は小麦を以て常食とす、いはゆる麦団子[パン]なり」といふ奇文句があるので、パンといふ語の入つた句を探して徒労に帰したなど、読者には知れない苦心と労力はしたものである》 などと妙な弁解に努めている。小泉迂外「古俳書に現はれたる外来語ー未定稿ー」も収録されている。『風俗志林』第二巻第一号(明治四十五年二月)に発表されたものの再録である。そのなかに次のようなくだりがあった。 《○『東潮独吟披露集』(元禄七年版)にある、 ボウブラや夜分の糸の置心 のボーブラは南瓜の事で、葡語の Abobura が転化したものである。》(p80) 現代ポルトガル語では Abóbora。このくだりを読んで、小生の父がカボチャのことを「ボウフラ」と呼んでいたのを思い出す。それがポルトガル語の「ボウブラ」からきていたことを初めて知った。元禄以前の言葉が昭和時代まで生きていたわけだ。むろん上述のように「パン」をはじめとして、そんな言葉はかなりあるわけだが、「ボウフラ」がそうだったとは思いも寄らなかった。ソシュールは喋り言葉(ラング)は書き言葉(エクリチュール)よりも流動的だと言っているが、まあこのくらいの変化で生き残ればラングもかなりしぶといと考えていいのではないだろうか。
by sumus2013
| 2020-06-03 19:58
| 古書日録
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