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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


高知の古本屋

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片岡幹雄『詩集タンポポの雲』(国文社、1961.12.31)、『きさらぎタンポポ 追悼片岡幹雄』(タンポポ書店、平成五年二月二一日)、『片岡幹雄作品集』(タンポポ書店、2003年5月15日)。

東かがわの多田昭氏より『佐川史談 霧生関』第五十四号(佐川史談会、令和二年三月)を頂戴した。多田昭「高知の古本屋」が掲載されている。タイトル通り高知の古本屋について調査された貴重な記録である。

江戸時代には瀬戸屋才助という本屋が寛永から嘉永ごろに営業し、四国では最も古い古本屋ではないかとのこと(鈴木俊幸『江戸の読書熱』平凡社選書)。

明治十五六年頃には、澤本駒吉、栗尾民蔵があり、二十一年の土陽新聞には開成舎、小川書店、山中専助の広告が出ている。明治末には濱田という店もあったらしい。

大正時代。杉村、岡本、浜野、西村など四五軒の古本屋があり、また門田徳助があった。

昭和時代になると資料もかなり残っており、ここでいちいち紹介するわけにはいかないので、ご興味のおありの方は直接お読みください。発行所は789-1201高知県高岡郡佐川町甲1301番地 佐川史談会 竹村徹 方。

論考の後半は個人的な多田氏の高知古本屋の回想になっている。こちらも興味尽きない。

《私は昭和三十四年の年末に高松市の古書店文洋堂で「牧野植物学全集」の端本を買ったのがきっかけで、古本集めが趣味となった。全集を揃えることから、牧野富太郎の書いたものは勿論のこと、牧野の伝記や植物に関係した本等を集めはじめ、もうかれこれ六十年が過ぎた。》

《私がタンポポ書店を知ったのは平成に入ってからと思う。店に入ってすぐ右側に詩集のコーナーがあって驚いた。自分には詩心はないが、文学好きの人が喜びそうな本が所狭しと並べてあり、ちょっと都会的な古書店の雰囲気があった。そして私の集めている自然科学書もぼつぼつ置いてあり、別のコーナーには郷土関係などの本があり、商売熱心という感じの店であった。》

タンポポ書店の開店は昭和三十八年五月。主人の片岡幹雄は高知県生まれ、元警察官だった。昭和三十六年に『詩集タンポポの雲』を上梓していた。土讃線旭駅前通りで三年、その後、南はりま町に移った。昭和四十三年からはアルバイトで長距離トラックに乗務。平成四年、ガンで死去、五十六歳だった。その後、夫人の片岡千歳が経営を引き継ぎ、平成十六年(二〇〇四)閉店。

《片岡さんは山形県の出身で、集団就職で西宮市の企業に就職、職場の旅行で徳島県の剣山へ来た際、高知の詩人の片岡幹雄と偶然知り合い結婚、主人と共に古書店を開いたという経歴の持ち主。「タンポポのあけくれ」にそのいきさつを見ることができる。》

片岡千歳詩集『きょうは美術館へ』

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片岡千歳は二〇〇八年一月に死去した。同年十一月二十七日夜、かつてタンポポ書店だったアジアカフェで「片岡千歳さんをしのぶ」友部正人の朗読ライブが行われたという。

多田氏は高知では、井上書店、かたりあふ書店、吉永平凡堂を必ず訪ねることにしていたが、二〇一一年にぶっくいん高知・古書部ができ、喜んでいたところ、同年末をもって吉永平凡堂が閉店したとのこと。

by sumus2013 | 2020-03-29 20:29 | 古書日録 | Comments(0)
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