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林哲夫の文画な日々2
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明日咲く言葉の種をまこう

明日咲く言葉の種をまこう_f0307792_17191607.jpeg

岡崎武志『明日咲く言葉の種をまこう 心を耕す名言100』(春陽堂書店、二〇二〇年三月二〇日、装幀=クラフト・エヴィング商會)届く。以前、文庫で出た『読書で見つけたこころに効く「名言・名セリフ」』に映画やドラマの名セリフを加えて再構成した内容だとのこと。文庫から単行本になったのである。

岡崎武志『読書で見つけたこころに効く「名言・名セリフ」』

あちらこちら読んでいると、その「名言」を吐いた人物を選ぶ、その目配り、というか琴線の張り方がさすがである。古い人、新しい人、さまざまなジャンルの人をうまく塩梅してある。嬉しかったのは桑島玄二。涸沢純平『遅れ時計の詩人』(編集工房ノア、二〇一七年)から、隣のプレス工場の騒音にまいっている涸沢氏に、桑島が

「はげめよ、はげめよ、と聞いたらいいのと違うか」

と言って励ました(なぐさめた?)という逸話を拾ってくれている。それから、一昨日取り上げた美を求める小林秀雄について、小林の「誤解されない人間など、毒にも薬にもならない」を取り上げたパートでこうも書いてある。

《「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」(「当麻」)
 おそらく小林秀雄の書いた文章の中で、一番有名なのがこのフレーズ。世阿弥の「美」に対する認識について、小林なりに要約した言葉だと思うが、こういった断言にしびれたのである。》(p114)

たしかに、美しい花うんぬんには小生もシビれた。プラトンの「イデア」とオッカムのウィリアムの「唯名論」をこういう言葉につむげるというのは、芸と言わずして何と言うべきか。小林が読まれる理由もこの辺りにあるのだろう。

おやっと思ったのはポール・ヴェルレーヌの詩「冬は終りに」(堀口大學訳)。そこから

 どんなにさびしい心でも、
 空気の中にちらばった
 このよろこびには負かされる

を取り上げているが、これは危ないんじゃないか、と一瞬心配した。大學訳はときとして意訳が過ぎる。原詩を参照してみるにしくはない。この詩句はヴェルレーヌの『La Bonne Chanson』(1870)の最後に置かれている詩「L'hiver a cessé」(直訳すれば「冬は止んだ」)、その第一連が下記。

 L'hiver a cessé: la lumière est tiède
 Et danse, du sol au firmament clair.
 Il faut que le coeur le plus triste cède
 A l'immense joie éparse dans l'air.

 冬は終りになりました。光はのどかに一ぱいに
 明るい天地にみなぎって
 どんなにさびしい心でも、
 空気の中にちらばったこのよろこびには負かされる

出だし四行分の大學訳(本書による)。うん、これは上手く日本語に置き換えてある。danse(ダンスする)を《みなぎって》としたのが自然でいい。

最後にもうひとつ、コロナ禍の最中に、しみる言葉はこれかな。寺田寅彦『柿の種』より。

 しかし、どんな悪いことにでも
 何かしら善いことがある     

ただし、ガンジーはこう言ったそうだ。

 よいものはカタツムリのように進むのです。

こういうときは早く進んで欲しいけど。ま、マクベスいわく「何でも起きるがよい。時はどんな荒れた日でも過ぎて行く」だ。そして本書はこういう引用で締められる。

 おたがい、生きている

ディック・フランシス『矜恃』より。詳しくは本書を直接ごらんください。好著。

by sumus2013 | 2020-03-25 20:30 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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