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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


珍品堂主人

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井伏鱒二『珍品堂主人』(中公文庫、昭和五十二年七月十日、カバー=硲伊之助)、何十年ぶりに読み返した。面白い。映画にもなっており、そのウィキペディアでは《原作の主人公のモデルは、骨董品鑑定士で、魯山人とともに星岡茶寮を経営していた秦秀雄(のちに目黒の驪山荘、千駄ヶ谷の料理旅館・梅茶屋などを経営)。主人公と蘭々女史との争いは、秦秀雄と魯山人との、星岡茶寮をめぐる争いを基にしている。》となっている。秦秀雄については以前にも少しばかり触れたことがある。

秦秀雄『見捨てがたきもの』

井伏鱒二『焼物雑記』

脇役も多士済々。天才的な目利きの画家・山路孝次として登場するのが青山二郎だろう。珍品堂に賭け碁でさんざんな目にあわされる。小林秀雄も登場している。山路の古くからの友人・来宮竜平として。

《大学で哲学を講義している堅気の先生です。哲学研究の傍ら文学的な著述もして、その印税をすっかり骨董に注ぎこんでいるのです。こんなに骨董好きな大学教授は珍しい。たとえば、好きな瀬戸物か好きな絵が見つかると、すっかり惚れこんで、逆とんぼする思いで自分の住んでる家を抵当に入れるといった式の先生だ。

 来宮は今でもそうですが、学生時代から激しい読書家で激しい勉強家でした。骨董など玩弄するたちではないような学生でした。それが自分の思いを致している女に振られてから、どかんと骨董が好きになって珍品堂や山路の仲間に入って来たのです。》

女に振られての女は長谷川泰子のことだろう。《骨董は女と同じだ。他の商売とは違う。変なものを掴むようでなくちゃ、自分の鑑賞眼の発展はあり得ない。》これが来宮の持論だという。

他には青柳瑞穂も登場している。

『青柳瑞穂の生涯』

《この青田梧郎とという好事家は、山路孝次や来宮竜平なんかとは趣向を異にして、一流の骨董屋でいい品物を買うのでなく、意外なところから珍品を掘出すのに妙を得ている男です。屑屋のような店、またはとんでもない遠方に出かけて行って、人が廃品同様にしている品物のうちから気に入ったものを見つけ出して来る。》

井伏自身も登場していても不思議ではないが、さて誰だろうか。映画も見てみたいものだ。

珍品堂主人
製作=東京映画 配給=東宝
1960.03.13 
8巻 3,288m カラー 東宝スコープ


by sumus2013 | 2020-03-05 20:39 | 古書日録 | Comments(0)
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