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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


キネマ旬報

古いところの『キネマ旬報』を大日本レトロ図版研Q所より借覧中である。映画はほとんど知らない作品ばかり。まあ、それも面白い。アメリカ映画がドッと押し寄せている感じがひしひし伝わる。また、数多く掲載されている映画広告に、大正末から昭和にかけて流行した「キネマ文字」が踊っているのも見どころである。順次増やして行く。

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ヴァージニア・チェリル

400号 昭和6年5月11日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三
大阪支社:大阪市北区梅田新道太平ビル
発行人 田中三郎
編集人 田村幸彦
印刷所 中村福昌堂
印刷人 中村文一郎
製本所 小高製本所


渡米中の田村幸彦がクララ・ボウについて書いている。

《紐育滞在中、多くの人たちから、クララ・ボウと云ふ女は、如何に酒飲みで、如何に博奕が好きで、如何に浮気ものであるか、等々の噂を聞かされて来た僕は、だからクララに逢ふことに非常な興味を抱いて居た。然し、眼の前に彼女を眺め、彼女の手を握つて初対面の挨拶を交わした時、僕はクララが矢張り普通の女と少しも変つたところのない一女性であることを認めない訳には行かなかつた。
(中略)
彼女は女中が一人付き切りで身の廻りの世話をする外に、髪の色や身長の同一なダブルが一人雇つてあつて、同じ衣裳をつけ、焦点を合す際などにはこの替玉嬢が現れる事になつて居た。この替玉の娘は容貌もクララに似て居るし、全然同一のメイクアップをして居るために、一寸見ると御本尊と間違える位である。
(中略)
 クララは度々僕に日本の話を聞かせてくれと強請んだ。桜の花や、フジ・ヤマやキモノの美しいことは話に聞いて知つて居た。監督のウォーレス氏と僕とクララの三人で或日昼飯の卓を囲んだ時、日本の酒が話題に上つた。ウォーレス氏が
 「日本のお酒は温めて、小さい盃で一口つゞ飲むんだよ。味はとても甘いぜ」と通を振り廻したら、「あたしも一遍飲みたいわ」と彼女が云ふので、日本街へ来れば、いつでも御馳走すると僕は答えた。それを聞くとクララは小供のやうに手を打つて
 「本当?まあ嬉しい!」と、大変な喜びやうではあつたが、然しこの約束は、連日夜間撮影があつた為、到頭実現することが出来なかつた。せめて僕があと二週間滞在する事が出来たならクララの飲み振りを拝見する事が出来たのに》






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メリー・アスター

397号 昭和6年4月11日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三
大阪支社:大阪市北区梅田新道太平ビル
発行人 田中三郎
編集人 田村幸彦
印刷所 中村福昌堂
印刷人 中村文一郎
製本所 小高製本所


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《邦文字幕の反響
 パ社に倣ふ外国映画会社
  フォックス社は日本語
  版も製作するか?
 パラマウント日本支社がトーキーの不評に対する妥協策として同社映画に邦文字幕を挿入する方法は「モロッコ」においてはじめて試写され意外なる好評を博したためパ社本年度映画は悉く邦文字幕を挿入することは既報の通りだが、パ社 新方法は外国映画界に一センセーションを起し各支社とも類似の方法を研究中でオール・トーキーは早晩日本版を作ることになるものゝやうである。即ちフォックス社は日本支社代表クラレンス・フォン・ヘイク氏が四月廿日頃帰米するので目下具体案を協議中 映画中の会話を在米邦人によつて日本語とするかパ社同様邦文字幕挿入とするかの何れかへ帰著するものらしくメトロ社では現在ワーナー、F・N映画等に用ゐられてゐる「エックスヴァージョン」採用説が盛んである。以上の各社ともまだ態度は決定してゐないが、パ社映画との対抗上秋のシーズンまでには具体的な結果を見るに至るであらう。》

《八銭と十五銭の入場料で
  大東京開館
    洋画専門上映
 東京市内に一番安いといふ外国映画上映館が、四月一日から開館した。それは、いままで色物を出してゐた浅草の大東京で、入場料は八銭に十五銭、尤も八銭は子供と老人であるが、割引から大人八銭子供四銭になつてしまふ訳である。
 上は一円二十銭から下は金十銭まで、浅草映画街の十余館が値下げ競争の中に、この均一料金は大勉強といはねばなるまい。
 これまで、十銭均一、所謂「テンセンス・ショウ」で遊楽館があるが、これはチャンバラ日本映画専門で、十銭の看板を上げた当時はセンセーションを起したが、今度は洋画館だけに驚ろかされた。
 開館番組はMGM映画「コサック」に「ロイドの危険大歓迎」》

寄贈雑誌紹介欄が初めて出ている(手元にある号のうちで)。いろいろな映画雑誌があったことが分かる。一般誌と思われるものは略して引用しておく。

映画往来 麹町区内幸町一ノ六商興ビル 往来社
映画時代 麹町区有楽町三柏ビル 其社
蒲田 麹町区三年二[ママ] 其雑誌社
日活映画 麹町区三年町二 映画世界社
松竹 小石川区小日向水道町五三 豊国社
映画と演芸 麹町有楽町[ママ] 東京朝日新聞社
サンデー・キネマ 大阪市西成区粉浜中ノ町一ノ一六 其社
映画女王 小石川区白山前町五七 其社
キネマ新聞 京橋区銀座七丁目五ノ十二号 其合名会社
活動新聞 芝区西久保八幡町十一 其社
日刊帝通映画部通信 京橋区銀座西五ノ二 帝国新聞社
キネマ週報 京橋区木挽町二ノ四 其社
キネマ・ニュース 京橋区銀座西八丁目九ノ六 影絵社東京支社
帝都プロ集 市外高田町雑司ヶ谷一一四六 東京キネマ週報社 





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ライラ・リー

384号 昭和5年11月21日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三
大阪支社:大阪市北区梅田新道太平ビル
発行人 田中三郎
編集人 田村幸彦
印刷所 中村福昌堂
印刷人 中村文一郎
製本所 小高製本所


《俄然厳重を極める
  大阪府のメートル制限
   「京へ上つた退屈男」の難
 東京に於いては、映画のメートル数制限に関して、これが延長運動が行はれつゝある際、大阪府に於いては突如その制限に厳重を加へることとなり、去る十一月十日より、道頓堀朝日座に封切と決定した右太プロ映画「京へ上つた退屈男」は、僅か三十米の制限超過のため、遂ひに上映不能の憂目に遭ひ、常設館方面へ非常なる脅威と迷惑を与へた。(中略)
 元来、大阪府のメートル数は他府県に比して非常に短く、常に番組上の困難を感じてゐることであつた。東京では五千五百米四時間以内、大阪では四千六百米で、近頃のやうな不況の際は尚更困つてゐた際である由。斯く厳重になるた裏側には、当該警察署と府との感情上の問題らしいと噂されてゐる。》

《今日の問題
 映画館争議の実際
      池田壽夫
 まへおきーー吾が映画界も御多分[ママ]に洩れず、今や不景気風が吹きまくつて、大松竹は辛くも配当を据置いたが、日活は二分減と俳優俸給引下を敢行し始めざるを得なくなつた。興行界も外見だけは派手にやつてゐるが、内部では火の車だ。あちでもこちでも給料引下、給料不払、写真料滞納等々のいまわしい噂を聞かぬ日とてもない。殊に最近に入つて小屋を閉鎖せざるを得ないほどに経営難に陥り、従業員が路頭に迷つた揚句、とう〜〜「争議」の形態をとつて、積極的に経営者と争ふやうな現象がポツ〜〜と現れ始めてきた。けれども常設館の争議ほど、複雑してゐて面倒くさいものはなく、ーーその癖腰が弱く、他愛ない争議も、他には見られまい。
(中略)
 兎に角、常設館経営もこれから益々楽ではない。一方澎湃と押し寄せ来る不景気の波と、他方内部的に結束し行く階級力と。争議の頻発は瞭然だ。それを予想して双方共、今から準備にかゝることは遅過ぎても早過ぎるといふことはない。
 常設館よ、何処へ行く?
 争議の勝利は孰れに在るか?》






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アリス・ホワイト

372号 昭和5年7月21日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三
大阪支社:大阪市北区梅田新道太平ビル
発行人 田中三郎
編集人 田村幸彦
印刷所 中村福昌堂
印刷人 中村文一郎
製本所 小高製本所

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関屋敏子主演「子守唄」四ページ連続二色広告
1930年、不況の影響か、頁数(74)も広告もかなり減っている。

《ユ社映画撮影に
  草人突如渡米
上山草人氏は松竹キネマ、オールスターキャストで「愛よ人類と共にあれ」を撮影することに決定してゐたが十四日米国に残してゐた浦路夫人からユニヴァーサルのモンタ・ベル監督の映画に配役が決定したから至急帰米せよとの電報があつたので松竹と相談の結果、十七日午後三時エンプレス・オブ・カナダ号で横浜を出発することになつた、なほ「愛よ人類と共にあれ」の映画は九月下旬再び帰朝、完成することとなつた。

《悄然と故国を去る
  早川雪洲
早川雪洲氏は帰朝後、宝塚の国際映画に入る如く伝へられ、不調に終り、また日活入りして「天草四郎」を映画化すやうに伝へられたが、世は既に雪洲の時代を去つて、一向に人気あがらず、これも不調に終り、往年世界的名声を馳せた雪洲も孤影悄然として再び米国へ渡る事になつた、今度は十分の注意と準備を整へて来るといふ、出発は八月八日横浜出帆の秩父丸と決定してゐる。

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もうひとつ、河野鷹思、発見。
松竹キネマ特作の6本まとめて広告







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バーバラ・ケント

344号 昭和4年10月1日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三
発行人 田中三郎
編集人 田村幸彦
印刷所 中村福昌堂
印刷人 中村文一郎
製本所 小高製本所


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これは、河野鷹思だ!

と思って『青春図會 河野鷹思初期作品集』(河野鷹思デザイン資料室、二〇〇〇年)を調べて見たが、この「情熱の一夜」の広告は収録されていない(同書の初期図案はキネ旬や『国際映画新聞』から取られているとのこと)。この年(昭和四年)一月、河野は東京美術学校図案科に在籍のまま、松竹キネマ株式会社宣伝部に図案係として入社していた。以後、一九三五年五月の退職まで同社の予告ポスター、映画雑誌の折込広告、新聞広告などのデザインを多く手がける。まさに山田伸吉の「大正調」キネマ文字からの脱却が、ここからスタートしたわけである。





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リチャード・アーレン

340号 昭和4年8月21日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三太平ビル

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ハリー・ポラード監督「ショーボート」の綴じ込み型抜き広告


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ウォルター・フォード監督「サイレント・ハウス」の広告
タイトル以外は全て英文


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クララ・ボウ主演「曲線悩まし DANGEROUS CURVES」


この号はカラー広告がかなり多くなっている。時報欄には「武蔵野館の楽士減員から/本邦最初の楽士争議/警視庁の調停で円満解決/ミジュシャン協会の活動」という見出しがある。

《トーキーの出現、レコード伴奏の採用から常設館に働く楽士の失業問題が起り、それ等の楽士を会員として日本ミジュシャン協会が成立したことは既報したが、今回その第一回の争議が起つた。
 それは新宿武蔵野館で、去月卅日突然無警告で楽士十七名の内六名に手当一ケ月分を支給して解雇したところ、トーキー流行で就職難の折柄、解雇手当一ケ月では如何とも仕方がないとて、経営者市島亀三郎氏に手当二ケ月分を支給するか、解雇を十月まで延期するかして貰ひ度い、と歎願したが拒絶されたので、ミジュシャン協会に通知して応援を依頼すると共に警視庁調停課に出頭、事情を述べて調停方を依頼した。》

全国に二万人の楽士がいるとのことである。





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エステル・テイラア

299号 昭和3年6月21日
キネマ旬報社:東京市麹町区内幸町一ノ三太平ビル


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「闇より光へ」の原題が「DRESSED TO KILL」

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《映画漫談
第一人者は必ず/犠牲者となる
ーー近藤伊与吉君の/フリーランサーに就いてーー
              小笹正人
甲『近藤伊与吉君が、フリーランサーを宣言したね。君は何う批判してゐるかね。』
(中略)
乙『ウン成功さしたい。だがフリーランサーは、亜米利加のやうな処だつたら出来るかも知れない。日本のやうな処では、根本に於て実行不可能と見られる重大原因がある。』
甲『何だらう。夫れは。』
乙『日本の映画は、専属俳優でないと、絶対に売れないよ。売れないのぢやない、製作者も常設館も売らないのだ。名優松之助も日活専務のお蔭で日本一の人気者でゐられた。彼を自由の立場に置いて見たまへ。恐らく裏長屋で貧乏して死んだかも知れないよ。』
(中略)
乙『(中略)近藤君もフリーランサーとして十字架の苦を見るだらう。而して自分は犠牲者になる事があつても、必ず同君の事業を次ぐ第二人、第三人が出て来る。其人が必ず成功するよ。》






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カーメル・マイアース

274号 昭和2年9月21日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町三十五


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折り込み広告 ドロレス・デル・リオ「カルメン」フォックス映画会社


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《九月中旬帝都の
 外国映画戦景況
九月十五日よりの帝都外国映画界は、愈々秋期シーズン戦白熱の状態を呈し、ジョン・バリモアの「ドンファン」及びキートンの「大学生」が武蔵野、帝国両館に打つて出たに対しパラマウント系邦楽座、東京館及びユ社系日本館はフォックスの「栄光」及びマンジウの「夜会服」(日本館は「名馬雷電」)を以て対抗し、茲に凄じい白兵戦を現出したが、初日、第二、第三日の景況を見るに、公園に於ける帝国館は外国物館第一位を占め、武蔵野館亦市内館第一位を占めて、パ社系に比し、その上り高には格段の相違があるらしく、武帝両館共此の興行では好況の絶頂時代に於けるレコードを凌駕せんとする好成績であると伝へられる。》(時報)

《キネマ旬報社が株式会社に成る機運も愈々熟して、九月三十日には東京で創立総会が開かれる事に成つた。映画関係の方面へ株を持つて頂きたいとお願に行つたりすると、思ひも寄らない理解と同情との言葉を至るところで聞いたのは、私にとつて望外の喜びであつた、微々たる私達の出版物が立派な事業に成る事を思ふと、八箇年間苦楽を共にして来た私達は、実に感慨無量ならざるを得ない。》(編輯後記)






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ヴィルマ・バンキー

272号 昭和2年9月1日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五


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折り込み広告 ラオル・ウォルシュ「栄光」フォックス映画会社


《神戸聚楽館が
 常設館になる
神戸湊川新開地の聚楽館は最近松竹合名会社と菊水キネマ商会との共同経営で邦画専門の常設館と成る事に決定し、開館の週には妻三郎映画「砂絵呪縛」を封切る予定である。》(時報)






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オリーヴ・ボードン

248号 大正11年12月11日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五


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折り込み広告 阪東妻三郎一人二役主演「乱闘の巷」


《神戸松竹劇場
 映画館に成る
神戸湊川新開地の松竹劇場は愈々来る正月興行より大阪京都両松竹座の姉妹館として、高級映画封切館に成る事に決定し、第一週にはパラマウント社の新映画を封切る予定である。》(常設館便り)

《常設館へ強盗
滋賀県彦根町の帝国館へ十二月三日午前一時頃から未明迄に賊忍び入り現金一円ばかりを窃取の上十日頃迄に来るから現金百円を用意して置け若し応じなかつたら帝国館を焼き払ふと凄文句を並べた脅迫文を書き置き逃走したとは、どこまでも映画式の盗賊振り。》(常設館便り)






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アイリーン・リッチ

234号 大正11年7月21日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五

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折り込み広告 エドワード・セヂウィック監督「燃え立つ戦線」


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「時報」欄より検閲記事をば。「朝鮮と台湾の/映画検閲/八月一日実施」

《朝鮮総督府では七月五日付、台湾総督府では七月八日付をもつて、映画検閲規則を発布し、七月一日から実施する事に成つた。朝鮮の手数料は内地と同じく三メートル五銭、台湾は五メートル五銭と云ふ事に成つたが、朝鮮では常設館数五十、台湾は僅か十館に過ぎないのに、此の手数料は高すぎると、映画業者は全廃運動を開始して居ると。》

「編輯後記」より。編集部は香櫨園にあったようだ。

《東京から古川、岡崎、岩崎、高橋等の諸君が大挙遊びに来たので、急に賑かに成つた。それにめつきり暑く成つて、編輯には辛い時期と成つた。夕方浜へ出て泳ぐと、仕事の辛さもすつ飛んでしまふ程快よい。旬報社へ遊びに行きたいなどゝ愛読者の方から時々手紙を頂くが、どうか遠慮なくどなたでも遊びにいらつしやい。その代り何のお愛想もありませんよ。東京の連中は皆んな河童と馬の化身であるかの様に此の香櫨園を荒らして居る。ウマと云ふのは僕等の術[ママ]語?で社外の方には判るまいが、カードの名手を云ふのである。夏の間は月三回の発行は仲々骨が折れるーーなどと愚痴はもう云ひません。早く秋が来れば良いな。(田村生)》





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アンナ・Q・ニールスン

233号 大正11年7月11日
七周年記念号
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五

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キネマ文字はアールデコのレタリングの日本的な解釈ではないかと思う。誌面からアールデコが大衆化したようすがよく分かる。

この号の「時報」欄に検閲に関する記事が出ていた。「映画検閲料金が/一年間に十四万円/近く検閲所大増築」

《昨年七月一日に新設された内務省の活動写真検閲所は近く大拡張をする事に成り、二万円の予算で現在の西側宮城前芝生の中に建坪六十四坪を増築中であるが、本月末竣工を待つて大型映写機二台を購入し、同時に検閲官八名、事務員十二名を全部で三十名に増員する事に成つた。
 既往一年間のフィルム検閲数は一万三千五百三十七件で、約六万巻十二万米突に達し、そのうち四万米突が新規物、六万米突が複写物(複写物とは同一映画のセカンド・プリントを示す。映画によつては七八本自至十数本のプリントを使用する事あり)二万米突が再検閲物で、検閲料(三米につき新物五銭、複写物二銭、再検閲物一銭)は約十四万円に上り、総経費十万円を支払つても四万円の利益があつた訳で、今度の拡張費もこれで支弁するのだとある。》




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メイ・マレイ

231号 大正15年6月21日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五


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折り込み広告「キートンの栃面棒」
輸入元:ヤマニ洋行


《雑誌「大衆文芸」を発行しつゝある二十一日会に於ては同人たる白井喬二氏、正木不如丘氏、本山萩舟氏、平山芦江氏、江戸川乱歩氏等の手に依り映画のプロダクションを設立せんとの議が起り目下頻りにその準備中である由。第一回作品としては白井氏の「元禄快挙」を映画化すべく予定されているが、実現の上は直木三十五氏等の聯合映画芸術家協会と対立的興味を惹く事である。》(時報)





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エスター・ラルストン

230号 大正15年6月11日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五

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折り込み広告 ジェームズ・ホーガン監督「地獄極楽」







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メリー・ピックフォード

227号 大正15年5月11日
キネマ旬報社:兵庫県西宮市川尻二六二六
キネマ旬報社東京支社:東京市麻布区今井町卅五

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印刷所 内外印刷 神戸市多聞通二丁目一四三番屋敷
銅板所 阪神写真通信社銅版部 神戸市多聞通二丁目一〇八番屋敷

by sumus2013 | 2019-10-08 19:32 | 古書日録 | Comments(5)
Commented by imamura at 2019-09-04 08:21 x
西宮市川尻なんて地名、初めて見ました。
Commented by sumus2013 at 2019-09-04 13:51
たしかにそう記載されています。検索しても出てこない地名ですね・・・
Commented by imamura at 2019-09-04 16:10 x
おもしろい記事が見つかりました。
file:///C:/Users/imamura/Downloads/%E9%98%A1%E9%99%B5No.62%E3%80%802011.03.31%20(1).pdf
また別に、河内厚郎さんが西宮ラジオで話されている中に、この編集部は西宮市荒戎町の民家の二階にあったとありました。
Commented by imamura at 2019-09-04 16:12 x
すみません、うまく貼れませんでした。
Commented by sumus2013 at 2019-09-04 19:29
関東大震災の影響で西宮周辺に拠点を移していたんですね。映画撮影所などいくつもあったわけですか、なるほど。
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