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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


茉莉花

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借覧中の『茉莉花』四冊。概要だけ引き写しておく。

二十七輯

奥付
  昭和十五年七月十日発行
  編輯兼発行者 福島保夫 大阪市住吉区阿倍野筋一ノ一〇〇壽楽園内
  印刷者 中井藤蔵 大阪市北区濱崎町一八
  印刷所 大阪出版堂 大阪市北区濱崎町一八
  発行所 十二段家書房 大阪市南区難波新地四番町二七
  編輯所 茉莉花編輯部 大阪市東淀川区元今里北通二ノ四(北村方)

目次
  深い花(他一篇)・・・・・・殿岡辰雄
  浮 草・・・・・・・・・・・北村千秋
  出 立・・・・・・・・・・・今井貞吉
  ふらぐまん(III)・・・・・・卜部哲次郎
  長編 夢魘(第四回)・・・・今井俊三
  表紙 川上澄生
  カット 山崎隆夫・今井貞吉
  編輯手帖 北村千秋

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第二十七輯より


二十九輯

奥付
  昭和十五年九月十日発行
  編輯兼発行者 福島保夫 大阪市住吉区丸山通一丁目五番地 丸山公園内
  印刷者 中井藤蔵 大阪市北区濱崎町一八
  印刷所 大阪出版堂 大阪市北区濱崎町一八
  発行所 十二段家書房 大阪市南区難波新地四番町二七
  編輯所 茉莉花編輯部 大阪市東淀川区元今里北通二ノ四(北村方)

目次
  随 筆・・・・・・・・・・・山崎隆夫
  窓  ・・・・・・・・・・・殿岡辰雄
  痴人の手帳(II)・・・・・・ 辻  潤
  詩二題(マクニイス)・・・・北村千秋
  出 立・・・・・・・・・・・今井貞吉
  長編 夢魘(第六回)・・・・今井俊三
  表紙 川上澄生
  カット 山崎隆夫



三十輯

奥付
  昭和十五年十月十日発行
  編輯兼発行者 青山虎之助 大阪市旭区生江町四六七
  印刷者 中井藤蔵 大阪市北区濱崎町一八
  印刷所 大阪出版堂 大阪市北区濱崎町一八
  発行所 茉莉花発行所 大阪市旭区生江町四六七
  編輯所 茉莉花編輯部 大阪市東淀川区元今里北通二ノ四(北村方)

目次
  八ヶ岳遠望・・・・・・・・・殿岡辰雄
  丘(ブルツク)・・・・・・・北村千秋
  初しぐれ・・・・・・・・・・青山虎之助
  ショペンハウエル傳(ワーレス)・・・卜部哲次郎
  痴人の手帳(III)・・・・・・ 辻  潤
  或る子供・・・・・・・・・・今井貞吉
  長編 夢魘(第七回)・・・・今井俊三
  殿岡辰雄詩集「無限花序」読後感・・・渡邊和郎
  編輯手帳(北村・青山)
  表紙 川上澄生
  カット 山崎隆夫



三十三輯

奥付
  昭和十六年一月一日発行
  編輯兼発行者 戸田謙介 大阪市西区京町堀上通一 京町堀ビル内
  印刷者 中井藤蔵 大阪市北区濱崎町一八
  印刷所 大阪出版堂 大阪市北区濱崎町一八
  発行所 六人社 大阪市西区京町堀上通一 京町堀ビル内
  編輯所 茉莉花編輯部 大阪市東淀川区元今里北通二ノ四(北村方)

目次
  装飾(アラン)・・・・・・・桑原武夫
  神の手記(パピニ)・・・・・ 辻  潤
  ショペンハウエル傳(ワーレス)・・・卜部哲次郎
  琵琶湖・・・・・・・・・・・太田千鶴夫
  荒 凉・・・・・・・・・・・北村千秋
  らるばとろす・・・・・・・・今井貞吉
  除夜の客・・・・・・・・・・青山虎之助
  夢魘(長篇第十回)・・・・・今井俊三
  表紙 川上澄生
  扉  青山二郎
  編輯手帖


以上。今井俊三の小説タイトル「夢魘」(ムエン)は夢にうなされることだそうだ。

高橋氏の著者に収められている「戦前大阪発行の文芸同人誌『茉莉花』探索」によれば、まず福島保夫『書肆「新生社」私史』(武蔵野書房、一九九四年)を引用してこう書かれている。

《「『茉莉花』は『昭和十三年四月』創刊、一度の休刊をすることなく『昭和十六年十一月』、当局による雑誌の統合改廃により終刊を余儀なくされ、姿を消した月刊同人雑誌である」と。全部で四十三輯出ており、これで書誌的事実は充分である。》

福島は、昭和十二年、大阪市役所に勤め始めた。やがて人事部で吏員向けの雑誌を編輯していた北村千秋の同人雑誌『茉莉花』を知り、北村に会いに行って助手になる。十二段家書房への広告取りにも同行し、発行所を引き受けてもらった。

岡山から熱心に同人になりたいと手紙を寄越していた青山虎之助が曽根崎新地の丸善石油経理部に勤め始めたので北村と二人で会った。青山は一年後に東京へ転勤になり、東京での編集連絡所を名乗って、東京在住の文士たちに原稿を依頼した・・・というような流れである。新生社の青山虎之助にはこういうバックボーンがあったのだ(『書肆「新生社」私史』は佐野繁次郎も花森安治も登場するので昔熱心に読んだはずなのだが、すっかり忘れていた)。

北村千秋についての詳細は高橋氏の著書を読んでいただきたいが、始まりはこうだった。

《この雑誌は、一周年位までは、北村氏と鮫島麟太郎氏二人の同人雑誌だったようだ。その後徐々に同人がふえていった。ただ、精々六人位までで、最後まで少数精鋭主義だった。
 同人の最大の出資者として、北村氏と同郷の津市在住の今井俊三、貞吉兄弟がいた。
 今井家は江戸時代末期からの豪家で、裕福なため、同人費五円のところ、毎月その三倍に当たる二人で三十円が送られてきた、と福島氏は記している。》

今井俊三、貞吉の兄弟についても詳しくは本書をお読みいただきたい。

一時『茉莉花』の出版元を引き受けた「六人社」の戸田謙介は面白そうな人物だ。昭和十二年頃から実用の手堅い本を出しながら、時局的なものも手がけ、柳田國男や横溝正史も出している。戦中に生活社と統合になり、戦後復活。三十三輯の広告には『字引』『航空知識事典』『近代スパイ戦』『カメラ・ガイド』のタイトルが並んでいる。高橋氏によれば、この後、発行所はさらに河北書房へと変わったようだ。

辻潤の寄稿は今井兄弟との関係からであろうと考えられる。俊三が大正十三年に詩集『壁』(紅玉堂)を出版したとき愛読していた辻潤に一冊献呈したことから交流が始まったという。辻は少年期に津で過ごしたこともあり、今井家には辻の他、武林無想庵や高橋新吉も逗留したのだとか。辻潤は『茉莉花』に十回寄稿しており、それらは著作集にも収められていないそうだ。

さらに津市のカラスブックスへと高橋氏の筆は運ばれるのだが、それはぜひ本書にて。まさに、倦むことのなき渉猟を、ライブ感をもって楽しんでいただけると思う。

なお、資料編として『茉莉花』の目次が本書には収められている(一、四、十、十一、二十八輯は未収録)。すべて高橋氏が採集したものだとか。ゲラにはなかったので、今、資料編を読んで、ビックリしているところである。


***

令・・・『字統』によれば、神意を聴く人の形象(人がひざまずく形)で、元は「命」と「令」は同じ字形だった。漢文ではまず使役の義だろう。和さしむとは、どういう心で選んだのか? 

茉莉花_f0307792_19284210.jpg

『漢和大字典』(三省堂書店、明治四十四年十月十日二十版)より「令」の項目のその1全文である(その2は使役の「令」、その3は鳥の名「鴒」に同じの「令」)。一〜四の意味を知っていて、この漢字を元号につけるものだろうか(江戸時代には何度か却下されていると聞いた)。あえて選んだとしたら、その意図があったとみなすのが自然であろう。また万葉集がどうして出典と言えるのかも納得できない(万葉に先立つ中国の『文選』に同じような用例がある)。国風にこだわるならもっと別の言葉があったはずだ。ある人は「レイ」という音だけ取ったキラキラネームじゃないかと。だったらカタカナでよかった。

by sumus2013 | 2019-04-01 17:31 | 古書日録 | Comments(5)
Commented by cogito1961 at 2019-04-02 02:22
殿岡辰雄と北村千秋といふ、直接『四季』には関係がなかった中部地方の抒情詩人の、思はぬ関係と活動場所とを知って驚いてゐます。
北村千秋は昭和10年の処女詩集『歴史の扉』
https://cogito.jp.net/library/ki/kitamurachiaki1st.pdf
を出したころは津市に居ましたが、その後大阪市役所に勤めてゐたのですね。
雑誌『茉莉花』は昭16年11月に終刊とのことですが、直後の昭和17年6月、やはり桑名の詩人で中原中也賞を受賞した
平岡潤の詩集の名前となってをり、縁しを感じさせます。別の号では書いてゐるのかもしれません。
https://cogito.jp.net/library/hi/HiraokaJun.html

戸田謙介は、戦後『学芸手帖』の編集者として昭和33年以降の「田中克己日記」に出てきます。
親類の嫗の隣家だった由。http://qq1q.biz/RfmR

***

リベラルと保守との分断を「和せしむ」には、格差社会をまず何とかしてほしいところです。
Commented by cogito1961 at 2019-04-02 02:27
あらあら、コメントに名前を書く欄がなくなったと思ったら、リンクが貼りついて、ワンコのページに飛んでゆくとは。(^-^;
Commented by sumus2013 at 2019-04-02 08:07
いい雑誌ですね。揃えてみたいものです。目次の引用が不備でしたので訂正しました。
Commented by 中嶋康博 at 2019-04-07 22:59 x
自分のサイトに片寄せたものですが、紹介文を書かせていただきました。
Commented by sumus2013 at 2019-04-08 08:03
有難うございます。これ以上ないお言葉を高橋さんも喜ばれることと思います。写真もいい感じですね、テーブルと本棚が渋いです!
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