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蒐めたもの見つけたもの『石神井書林古書目録』104号(二〇一九年一月)が届いた。いつもながらため息の出るラインナップ。今回目に留まったのは杉山平一さんの原稿と色紙だ。まとまって出ている。色紙は一枚、八年前の下鴨で手に入れ、今も愛蔵しているが、このくらいの値段になるのかと、ちょっとうれしかった。 表3の「追伸」に次のように書かれていた。 《青猫書房の阿部秀悦さんが昨年十二月に亡くなりました。手作りの古書目録を月刊で出し、それが三九〇号を越えていました。私は二十代で阿部さんに会い、以降の長いお付き合いの中でどれほど多くのことを教えていただいたかしれません。該博な知識を持ちながら、ストイックで凛とした品性は終生変わらないものでした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。》 青猫書房さんが亡くなられたとは・・・かなり前に一時期目録を頂戴していたことがあったが、さすがに貧生には注文を続けることができず、いつか届かなくなった。少し前に某氏がまとめて青猫目録を送ってくださったので、エッセイの一部を取り上げたのを覚えておられるだろうか。目録もすごいけれど、エッセイがまた読ませるのだ。 海ねこ/青猫 その「青猫愛書閑話」、追悼の意味で少し引用しておこう。281号(平成十七年七月一日)掲載分より。演劇の専門店でセドリ中、川内康範と山口晋平を一冊づつ手にし、顔見知りの店主なので、この二冊だけでは申し訳ないと思いつつどれにしようかと迷っていたところ・・・ 《迷い、困っている内にとうとう左側入り口近くまで来た。その書棚の端っこの端、隠れるように神原泰譯マリネッティ『電気人形』(下出書店 大正11年)が在った!何という嬉しい展開なのだろう。保存状態はいまひとつながら稀覯本にまぎれもなく、『石神井書林古書目録』第56号(2002年2月)には"金星堂より「先駆芸術叢書」の一冊として出版されるのはこの二年後。著者自装。極美本。写真5頁参照"として15万円の古書価が付いていて、この時は注文が無かったが、次号では見事に売れている。》 気分を良くして佐久間さんの店舗を覗く。書棚に変化が乏しいなと思っていると店主が何もないからと谷川俊太郎と山本容子のサイン本を出してくれる。なおも物色していると安部公房『砂の女』が目についた。 《創業して間もない頃、セドリ屋の鈴木益二氏か長田謹造氏か一滴通信の東山氏だったか忘れたが「『砂の女』の初版本は皆無」と教えてくれた。「致命的な印刷ミスがあったらしい」と憶測を聞いただけだが、まだ若かった私はそれから関東周辺のあらゆる書店に在庫していた『砂の女』初版本の奥附を確認して歩いた。3年間、100冊は優に越えて200冊に迫る頃には「完全な初版本は無い」と絶望的に断言出来た。『砂の女』を手にすることも無くなり、顔なじみのセドリ屋であった鈴木氏は脳腫瘍で、東山氏は脳卒中で50歳前に亡くなった。はた目には気楽そうに見えて、セドリ屋という生業もこれで結構きびしいようだ。佐久間さんの店で手にした『砂の女』は奥附を張り替えていない〈本当の初版本〉だった。もっと感激しても良いのだが、奥附をとっくりと眺めても〈致命的な印刷ミス〉は分からなかった。》 なんとも凄い話、セドリについての貴重な記録でもある。誰か本にしませんか。
by sumus2013
| 2019-01-23 17:32
| 古書日録
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Comments(8)
2000年から2001年にかけて一番古本を買ってゐた時期に、私も青猫さんから目録を頂き、和泉幸一郎の詩集を売って頂いたことが今だに忘れられないでゐます。
その後も感謝の気持ちを込めて本屋の名をサイト上で吹聴し続けてゐたところ、ある日手紙が来て、目録を送ってくれなくなってしまひました(石神井さんも同じ様な感じ(苦笑))。 例の「書狼伝説」を発表され、わかば書店ほか老舗の古書店から総スカンを食った由、大変なことになったな、お店大丈夫かなと、付き合ひがなくなってしまった本屋ながら心を痛めて心配した思ひ出があります。 ご冥福をお祈りします。
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某氏です。
at 2019-01-23 19:41
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青猫書房からは私も目録を送ってもらっていました。何回か注文したと思います。目録は、B5のタテ書き、手書きのコピーのようなものだった記憶があるのですが、もはや手元になく、確かめようもありません。
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sumus2013 at 2019-01-23 20:01
書狼伝説は凄かったですね。あれを読んだときの衝撃!? 今でもよく覚えています。
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sumus2013 at 2019-01-23 20:04
そう、タテ書きだった記憶があります。何度か注文はしましたが、いちばん安い本ばかりなので、いつも抽選に当たらないのですね、そのうち来なくなりました。。。
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はじめまして
at 2019-01-28 16:09
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はじめまして
いつも楽しく愛読させていただいております。 青猫書房の阿部秀悦さんがお亡くなりになられたと知り、驚き、また懐かしい思いがします。 小生、まだ学生の頃、40年以上昔ですが、阿部秀悦さんと親しくさせていただきました。 その頃は「サフラン文庫」と名乗っていたと思います。 お住まいにも遊びに行き、豪華本、限定本、美本の数々を見せていただいたのが思い出されます。 また鶉屋書店を教えて貰ったり、古書籍商の鑑札や組合のことなども話してくれました。 ご冥福をお祈りします。
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sumus2013 at 2019-01-28 17:15
サフラン文庫、ですか! 貴重な情報を有り難うございます。エッセイからも根っからの古本者だったというのが伝わってきます。
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カバ男
at 2019-02-03 11:45
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私のブログに阿部氏の名前でヒットが続き、なんとなく胸騒ぎがしていました。
若い頃、氏の薫陶を得て酒井潔に関するメモを作成したことを思い出します。 稀少な本を探し出し、そこから知り得たものを惜しげもなく目録読者に開陳されました。 蒐書に対する阿部氏の真意というのは、なかなか一般には伝わらないだろうと、それが悔しいと思います。
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sumus2013 at 2019-02-03 17:19
みなさまの回想を知るにつけ、惜しい方を亡くしたと思うことしきりです。
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