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ダイヤモンド|因数猫分解伊藤重夫『ダイヤモンド|因数猫分解』(田中敦子+踊るミシン復刊会、二〇十八年十一月二〇日)読了。 『踊るミシン』復刊 収められているのは「塔をめぐってより」『夜行』1982、「コートにすみれ」『COMICBOX』1984、「ワルキューレ1」『夜行』1984、「ママレードのプリンセス」『COMIC ばく』1984、「因数猫分解」『CHRIS No.005』1989?、「ダイヤモンド」『A*ha』1990-91、他小品。 伊藤重夫の世界がたっぷり楽しめる。神戸の風物や歴史(タルホも登場)がバックグラウンド(あるいはバックボーン)としてしっかり描かれているのがまず目立つ特徴のひとつ。そして物語としてのキッチリした結構の上に、大胆なコマ割りと練られた会話で登場人物たちを踊らせ、全体を含羞に包まれた青春ドラマとして精緻な仕上がりに導く。とくに「ダイヤモンド」の色彩の艶やかさには目を瞠った。まさにバブリーな時代の繁栄を反映しているように思えて(『A*ha』という漫画誌が鳴り物入りで創刊されたことがなつかしく思い出される)、ある意味、この復刊は、絶妙のタイミング、なのではないかと思ったりもする。 《かつて僕は某大手出版社から。5回分の漫画を依頼された。そして第二話の原稿を渡した後に、その作品は失敗だと思いいたった。新しく短編を描いて渡し、いままでの分は破棄してくれるようお願いした。これが唯一出版社から依頼されて描いた漫画だ。それ以降、作品は出来上がった後しばらく持っていて、何度も描き直しをするようになる。そしてこのことが、一冊分の描き下ろしをやるきっかけだった。描き下ろしだから、頁の順番どおりに描く必要はなく始まりを描いた後、最後の方に手を付けたり、中間を描いたりした。最後にエピソードを外に出した。》(あとがき) 自らの思うがままに描いて高い完成度に達するというのが、おそらく最も難しい。よほど確たるヴィジョンと固い意思がないと未完のまま終わってしまうだろう。伊藤氏のように可能な限り自分に正直に生きたいものである。
by sumus2013
| 2019-01-09 20:28
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