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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


童説

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個展期間中に臼井喜之介『詩集 童説』(臼井書房、昭和二十一年五月五日、装幀=鴫原一穂)を会場で頂戴しました。感謝です。この本は京都ではわりとよく見かけるような気がするし、実際、臼井書房を調べているときには、何度か買って何度か手放した。

装幀の鴫原一穂は臼井の親友で詩人・児童文学者、教師だった。臼井書房からも詩集を出しているし、装幀も何冊か担当している。鴫原の穏やかな絵柄が臼井の詩風にも合っているのだろう。本書に収められている作品から二篇を引用してみる(どちらも全文)。


   紙凧

 ぐいぐいと ひつぱる
 泪ぐましい力がつたはつてくる
 張りきつた このたくましい糸へ
 あをぞらのうたがひびいてくる

 野つぱらには
 こどもたちが いつぱい
 さむい吹きざらしだが
 みんな とびちぎれるほど元氣で
 そらを仰いでゐる
 まばゆい瞳を きらきら輝かしてゐる

 わくわくさせ
 いつも いつも
 忘れきれないで一ぱいな空の力が
 ああ この一すぢの糸をつたつて
 ぐいぐいと ひつぱるよ



   冬日抄

 床の間に折々の野草などさし入れ
 手縫ひのエプロンに桃の花の刺繍を飾る
 まいにち子供の世話にいそがしい妻は
 こどもらが寝しづまつてから僅かに本をひもとく

 隣近所の人々が
 ごつごつしないで 豊かであつてほしいと心から希ひ
 向ひの子供の頭にくさができたといふと
 これは効きますからと 和薬など届けてゐる

 手のあかぎれが ひどくなると
 鹽湯をつくつてたつぷりとつけ
 ああ 氣持がよくなつたと 元氣な頬を輝かせる
 そして 二人のこどもたちと
 あけくれを大ごゑで笑ひ
 半坪に足らぬ裏の畠の
 雪をかぶつた そら豆の成長をたのしんでゐる

 いま冬陽ざしの明るい二階の四畳半で
 子供に添寝したまま うたたねしてゐる妻
 健やかな ねいきをもらしながら
 やはり 文化だの 愛だの 平等だのといふ
 むつかしい夢をみてゐるのであらう


臼井夫人があってこそ臼井書房があった、そんな気持ちにさせてくれる「冬日抄」ではある。


『新生』再刊第五輯

『新生第一詩集』(新生同人社、一九三七年)


***


ブックカフェ&ギャラリー・ユニテさんが昨日二十五日限りで閉店されました。個展、ナベ展、そして武藤さんとのトークなど、五年ほどの間にいろいろとお世話になりました。感謝しかありません。素敵な隠れ家っぽいスペースで趣味のいい本がたくさんあったのですが・・・残念です。

なにやら、一月中に大セールを行われるそうです。これは逃せません!

楽市楽座出品しゃ募集!

 川端二条の旧ユニテ内で1月10日~15日に「大解体市」を催します。
同時に店内を使って「楽市楽座」を催したいと思っています。
店の有効利用と感謝をこめて広く参加していただける方を募集いたします。
販売、包装は各自でお願いします。
参加費、手数料等は一切かかりません。
手づくりのものはもちろん、身の回りで使わなくなったもの等、なんでもOKです。
期間中、参加の日にち、時間はいつでもけっこう、おまかせします。
出品されるものは、「さよなら、新しい持ち主に可愛がってもらってね」価格でお願いします。

食べ物、生きもの、危険なもの、子供に見せられないもの等の出品はお断りいたします。
店内なので天気の心配はありません。暖房完備、ただし座られる場合は、イス、ゴザ等、各自ご用意ください。
釣り銭は各自ご用意ください。金銭管理も各自でお願いします。
入退出は自由ですが、一言お声がけください。

お申込みは、info@unite-kyoto.jpまで     旧・ブックカフェ&ギャラリー ユニテ

ブックカフェ&ギャラリー・ユニテ

巴里みやげ 林哲夫作品展

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画家・林哲夫さんと話そう


by sumus2013 | 2018-12-26 16:29 | 関西の出版社 | Comments(0)
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