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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


パゾリーニの青春

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東京国際映画祭のサイトに嬉しいニュースが出ていた。

田中千世子さん(第18・19回TIFFプログラミング・ディレクター)の著書
『ジョヴェントゥ ピエル・パオロ・パゾリーニの青春』が
国際フライアーノ賞を受賞!
https://2019.tiff-jp.net/news/ja/?p=52254

《田中千世子氏の著書『ジョヴェントゥ ピエル・パオロ・パゾリーニの青春』(みずのわ出版、2019)が、イタリアの国際フライアーノ賞の一部門である「第18回イタリア語イタリア文学海外研究者賞」に選出され、授賞式がアブルッツォ州ペスカーラにて7月6日に行われました。

この賞は、世界各国のイタリア語イタリア文学研究者の中から選ばれたひとり、または複数の執筆者に対して与えられ、世界のイタリア文化会館の館長によってそれぞれ推薦された出版物から選考されます。フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』などの脚本家としても知られる作家エンニオ・フライアーノの名を冠した国際フライアーノ賞は今年で46回を迎え、文学・演劇・映画・テレビ・ラジオなど各分野の優れたエンターテイメントに贈られる権威ある賞として国内外に知られています。》

装幀を担当させてもらった者として、正直なところ、外国の人たちにも受けるイメージを想定して、この画像を使ったということを告白しておく。思うツボです。


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題 名=ジョヴェントゥ ピエール・パオロ・パゾリーニの青春
発行日=2019年1月1日
著者等=田中千世子(たなか・ちせこ)
発行所=みずのわ出版
http://www.mizunowa.com/index.html
装 幀=林哲夫

詩人としてのパゾリーニは『パゾリーニ詩集』(みすず書房、二〇一一年)で広く知られるところだろう。本書では、そのパゾリーニの文学的な原点であるフリウリ語との関連をかなり深く掘り下げた内容が注意を引く。

《パゾリーニはフリウリ語で詩を書き始めた。そして文学雑誌を発行した。雑誌の名前は"STROLIGUT[ストロリグト]"(暦)、季刊である。一九四四年四月に最初の号が出た。
 その巻頭言にパゾリーニは書く。フリウリ語でーー。現代イタリア語の対訳などあるはずもない。イタリア人で文学的教養の豊かな人でも半分もわからない。フリウリ人でなければ読めない言葉だ。》

《フリウリは現在、正式にはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア自治州と呼ばれ、イタリア共和国の北東部に位置する地域だ。州都はトリエステ、アドリア海に面した由緒ある港湾都市で、東は旧ユーゴスラヴィア、現在のスロベニアとの国境だ。》

パゾリーニはボローニャに生まれてボローニャ大学で学んでいるからフリウリ人とは言えないが、母親がフリウリ地方のカサルサ出身で第二次大戦中は母の故郷で過ごした。一九四六年から書きためたフリウリ語の詩を『カサルサ詩集 Poesie a Casarsa』として刊行している。

《地元の若者の誰かしらがこれを読んだ。そして失望とともに驚かずにはいられなかった。都会のボローニャからやってきた優秀な学生がよりにもよって農民たちが使う田舎丸出しの方言を詩に使っているのだから。と、ニコ・ナルディーニは解説する。
 たとえて言うと、東京に出て文学修業していた中上健次が地元に戻って新宮弁で詩集を発表したようなものか。だが、中上はもともと新宮の人間だから、違う。》

《中上ではなく、別の東京の坊ちゃんか、京都か神戸の坊ちゃんで、母方の実家が新宮にあって、そして、その坊ちゃんが母方の実家の町に戻って、新宮弁で文学を発表したーーと想定したら? 地元の若者は「なんや、俺らの田舎臭い言葉を使いよって」と驚く。そうするとパゾリーニの詩を読んだフリウリの若者の気持ちがわかりやすくなるだろうか。》

なるほど、そういうものか。著者は山梨県生まれ。映画評論から自主映画の製作監督へ。イタリアにおいてはパゾリーニ財団との関わりも深く、著者ならではの視点で多面的に、日本の状況とも対比しながら、論じられている。むろん映画についても多くの紙幅が割かれており、そう言えば、パゾリーニ、昔はよく見たなあと断片的に思い出したりした。

パゾリーニの青春はやはり戦乱と切っても切れない。ファシズムの闘いも、ファシズムとの闘いもあり、内乱もある。戦後の荒廃も。そう言う意味から、少し派手に、燃え上がるようなデカルコマニイのジャケットを作ってみた。

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ジャケットと表4


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ジャケットと扉


【用紙】
カバー MTA+-FS 四六判Y目 135kg
表 紙 気包紙-FS(U) ディープラフ L判Y目215.5kg/K判T・Y目147.5kg
見返し ハンマートーンGA ブラック 四六判Y目 130kg

by sumus2013 | 2019-07-22 13:49 | 装幀=林哲夫 | Comments(0)
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