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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


昭和ガキ伝

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安田有詩文集『昭和ガキ伝』(出版舎風狂童子、二〇一八年九月二五日、表紙デザイン=安田有)読了。安田さんはすなわちキトラ文庫さんである。これまでも安田さんのことは何度か取り上げてきたが、念のため奥付の著者紹介を引用しておく。

《1947年1月 奈良県生駒市生まれ。/大阪市立大学(文学部)除籍。/30代初めから12年間、新宿ゴールデン街「酒肆トウトウベ」。/1994年 郷里に古本屋「キトラ文庫」、現在に至る。/東京にて小雑誌「作業」、関西にて「coto」を主宰。/私家版文集に『スガターー無名詩集』『窮望』『気息がする』/詩集に『スーパーヒーローたちの墓場』『早くお家にお帰り』。/(いずれも砂子屋書房刊)》

文中『スーパーヒーローたちの墓場』は正しくは『スーパーヒーローの墓場』です。雑誌は他にも出しておられたのではなかったか?

古本屋の詩があったので全文引用しておく。


  消しゴムの使い方

 子どものときから消しゴム
 大人になってからも消しゴム
 ほどよいかたさ ほどよいやわらかさ
 あきない色 あきない形

 筆箱をあらして失敬
 エマの口から取り戻す家人
 「返せ、消しゴム」
 エマと家人が同時にいうセリフ

 古本商売の家人は必死に本の引き線を消している
 丸くなれ 小さくなれ
 消しゴム

 「エマ! それっ」
 家人が投げる エマが跳ぶ
 口にくわえて家人の手の元へ
 家人は投げる 上下左右 前後めちゃくちゃに
 エマは追いかける 四方八方 驚天動地
 あわれ消しゴム
 家人があきてもエマはひとり遊び
 投げ追いかけ口にくわえゆうゆうと運ぶ
 ちびた消しゴム

 ほどよいかたさ ほどよいやわらかさ
 あきない色 あきない形
 線字を消す
 よく消える消しゴムは
 すぐに消える消しゴム
 丸くなって 小さくなって
 どこへ隠れた

 エマは今日も
 消えた消しゴムを追って
 走る

   *エマ、別名「消しゴムエマちゃん」。わが家の猫である。


消しゴムの詩なのだが、《古本商売の家人は必死に本の引き線を消している》の一行が効いている。主人が古本屋だということがこの作品のキモだと思う。必死に引き線を消すくらいの本だから、かなりいい本に違いない・・・などと想像をたくましくする(そうでなければ均一行きだろう)。ある古本屋さんに聞いた話を思い出した。線引きを丁寧に消した詩集を目録に乗せたところ、売れたのはよかったが、あとで客から「消し跡あり、と書いてなかったぞ!」と怒りのクレームがきたのだとか。客の気持ちも分からないではない。

昨日、みかんの話題を取り上げた。本書にも「みかん ーー友へ」という詩がある。後半の一部を引用する。誰か柑橘類の詩を書いた人はいるだろうか、当然書いているはずだ。小説ならもちろん『檸檬』がある。


 奄美の友人から送られてきた
 ぽんかんやたんかん
 友の元気のあかし
 こちらもまだまだ未完の生だ
 人生のたんかん
 人生のぽんかん

 枝に挿して小鳥を待つ
 ひよどりに蜜柑を奪られて目白の目
 地面に落ちた黄金きんの皮に
 融ける淡雪


 水が流れない
 見えない川
 見えない(みかん)

 (首を傾げて笑む)
 (ここはどこ)
 (むかしみかんという名の犬がいた)


ミカンという名前の犬を飼っていたのは小生です。

by sumus2013 | 2018-10-30 16:26 | おすすめ本棚 | Comments(4)
Commented by 岩田 at 2018-11-01 10:54 x
今年戌年
遅ればせながら、ミカンちゃん合掌。
Commented by sumus2013 at 2018-11-01 17:05
早いものでもう13年になります・・・
Commented by 岩田 at 2018-11-01 19:15 x
もうそんなにてしたか、ついこの間の事かと思いました。人間ならば十三回忌、お犬様であれば13x4=52回忌でしょうか…?63
Commented by sumus2013 at 2018-11-02 07:25
そうすると飼い主と同い年になっちゃいますね・・・
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