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林哲夫の文画な日々2
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幻華堂漫記其の他

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山田一夫『幻華堂漫記其の他』(東都我刊我書房、二〇一八年七月一日)。二巻の小説集に引続いて佚文集とも言える本書が刊行された。十篇。初出時の版面を複写する形で収録されている。および小野塚力氏の跋。

幻華堂漫記 其の他:書肆盛林堂
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca4/401/

山田一夫『初稿 配偶 山田一夫モダニズム小説集 弐』

まずは巻頭の「鴨東四時雜詞」を面白く読む。このブログでも以前、その写本を取り上げた中島棕隠『鴨東四時雜詞』について、中京生まれの山田が自身の体験を重ねて読み解いている。初出は『洛味』新生第一号(昭和二十四年十二月)。

山田はまずその架蔵になる文化十三年刊鴨東四時雜詞』から次の一首を取り上げる。

 杏園桃塢自相隣
 看遍軟紅嬌
 栩栩寧知在塵世
 無非胡蝶夢中身
  葛原菊澗之間名園頗多

《今のあの圓山の池のあたりに以前茶畠があつたと云ふ事であるが、それは私の記憶にはない。其後公園が出來て地勢も大分變り、料亭や茶店などにも色々と變遷があつて、「杏園鳩塢自相隣」というふのが果してどの邊の事であるのか、今では全然わからなくなつた。がそれもその筈で、文化十三年は既に百二十年以上昔である。》

としてあるところは誤植。文化十三年序の刊本を見ると「紫」となっている。興味深いのはこの次に引用されている「孔雀茶屋」を扱った一首。以下の引用は本書によるが、一字抜けているところは「嬋」である。「」という表記は山田が付したもので文化十三年序の刊本にはない。

 勝事追時誰著鞭
 花茶房裡闘 妍
 請見林下新風景
 日暖金籠孔雀眠
   近日有〓[環の王をニンベンに換えた字]子於葛原西側開大茶肆経営殫美屋後園榭畜孔雀鸚鵡之類供客遊玩遞茶佐酒者莫不絶世佳人一時翕然相傳稱孔雀茶屋

《これは初期肉筆浮世絵屏風の、しかも極彩色の豪華版である。棕隠先生屹度夢でも見てこんな詩を制作したものに相違ない。……いや、しかし註迄加へてあるのを見ると、まんざら嘘でもなささうな氣もする。
「私は中島棕隠ですが……」
棕隠先生の聲が聞こえる。
「眞葛ヶ原に野外の演奏場が出來て居て、明晩學生のブラスバンドが演奏するとか云ふ事ですが……」
「さうのやうですね」
「それは本當の事なんですか?」
「どうしてですか?」
「誰かの創作ぢやないんですか?」》

さすが、しゃれたコントに仕立てている。孔雀茶屋はむろん実在した。動物園カフェみたいなものである。

この拾遺集では他に「京都物語(1)」(『京都』第三十二号、昭和二十八年五月)も逸品。昔の京都を知るためのかっこうの読み物となっている。山田一夫、雑文がまたなかなかによろしいな。


『鴨東四時雜詞』

by sumus2013 | 2018-06-12 21:05 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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