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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


書物の庭

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神戸元町の1003さんで拝見した戸田勝久さんの「書物の仕事/挿絵・装釘」展図録とも言える『書物の庭』(The Twilight Press/黄昏書局、二〇一八年二月二〇日、限定350部、著・撮影・装釘=戸田勝久)が届いた。戸田さんの書物への深い想いが溢れる内容である。

初めて自分で本を作ろうと思ったのが、高校時代に立原道造詩集の複製を見た十八歳のときだそうだ。立原の手製詩集を知ったのである。早速自ら手書き詩集『神戸』を作った。二十歳の記念にその本文を青焼コピーで刷り、十部を製本したという。本造りの楽しさを知った。

《その後、銅版画を山本六三先生に習い始めて本格的な書物と出会います。
先生の書架には見たことも無い美しい書物が並んでおり、
古今東西の詩集、小説、画集を解説付きで拝見出来ました。
装釘のこと、挿絵の技法のこと、紙のこと、製本のことなど
書物に関するあらゆる事柄を銅版画と共に学べたのです。
この経験が無ければ今のように本を作ることはできなかったでしょう。
「古い書物を多く見て触って、それを土台として新しい書物を造る。」
これが美しく読みやすい書物を作る道だと教えて頂きました。

私の画家としての初仕事は、1978年龍膽寺雄氏の短篇小説『塔の幻想』です。
6枚の挿絵を銅版画で描きました。24歳の夏のことでした。
書物に関わることで絵の道をスタートで来たのは、幸いでした。

それから40年間さまざまな挿絵と装釘をすることができました。
この冊子は、私の書物のささやかな花が咲いている庭です。》

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スケッチから特装本まで戸田さんの本造りがよく分かる写真が満載である。なかでも、小生は、会場でも手に取って見ることのできた加藤一雄『蘆刈』(蘆刈十三部本刊行会、二〇〇一年)が、……欲しい。

十三部本というのは古書店を巡って『蘆刈』十三冊を集め(ようやく十三冊集ったということです)、それを特別な装幀で飾るという趣向である(そう言えば、湯川さんから、見つけたら知らせてくれと頼まれたことを覚えてます)。湯川さんと戸田さんが苦心と工夫を重ねたもの。著者サイン入が三冊ある。表紙の墨画は戸田さんの直筆。琳派ふうの函がまた凝っている。思い出すと欲しくなる。

今後もいっそう種々の花が書物の庭に咲き乱れんことを期待する。

by sumus2013 | 2018-04-26 21:19 | おすすめ本棚 | Comments(4)
Commented by Kat at 2018-04-27 11:21 x
小さな冊子を楽しんで下さりありがとうございます。お言葉に身が引き締まります。
Commented by 大島なえ at 2018-04-27 14:34 x
「蘆刈」欲しい本ですね。私も1003で見ました。それと
「無名の南画家」が私は一番欲しいです。本当に本作りの粋
を感じるものです。

 現在、パソコン修理中で某ネットカフェよりコメントしております。
Commented by sumus2013 at 2018-04-27 20:14
Katさま 戸田好みの美しい書物をつくりつづけていただきたく。また、見せていただける日を楽しみにしております。
Commented by sumus2013 at 2018-04-27 20:16
大島さま 『無名の南画家』も素敵ですね。戸田さんの清潔さがよく顕われています。
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