林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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ヴィヨン詩

f0307792_17511826.jpg

佐藤輝夫訳『ヴィヨン詩』(青朗社、一九四六年一〇月五日)読了。訳語が擬古文なので読みやすいとはとても言えないが、それでも訳者の苦心は伝わってくる。内容はまったく単純な冗談と大ボラである。「小遺言 LE PETIT TESTAMENT」と「大遺言 LE GRAND TESTAMENT」は、友達や知人だけでなくざまざまな者たちに対して、誰にはあれ、誰にはこれ、などと有形無形の品物を数えつつ、それらを遺贈すると、滔々と述べたてて洒落のめした戯れ唄。悪態詩と言ってもいいだろう。ボードレール以降なら珍しくもないが、十五世紀である、異彩だったに違い。

OEUVRES COMPLÈTES DE FRANÇOIS VILLON

data.bnf.fr François Villon (1431?-1463?)

f0307792_17512090.jpg


参考までに「文庫」が登場する連を引用してみる。「大遺言」より。

八八 この人に、われは與へる、わが文庫と
   《ペ・トオ・デァブルの物語》を。
   抑ゝこれはギイ・タヴァリーが
   (此奴ぬけぬけ一切を皆漏らしたる男なり)
   浄書したもの。假り綴ぢのまま、机の下に置いてある。
   雑作な言葉で綴つてはあれど、題目は
   いとも名高いものだから、言葉の綾の
   未熟さは、みな補つてあまりある。

LXXVIII.
   Je luy donne ma librairie,
   Et le Rommant du Pet au Diable,
   Lequel maistre Gui Tabarie
   Grossoya, qu'est hom véritable.
   Par cayers est soubz une table.
   Combien qu'il soit rudement faict,
   La matière est si très notable,
   Qu'elle amende tout le meffaict.

原文も掲げてみたが、詩の番号が異なるのは、両者が用いたテキストが異なっているのだろう。引用したグーテンベルグ・プロジェクト(あちらの青空文庫)のテキストはフランス国立図書館の蔵本を写したようであるが、佐藤はロニョンとフーレにより刊行された批評版(一九三二年第四版)を底本としたとしている。まあ、小生にとってはどちらでもよろしい。それより、古フランス語の綴りも案外と面白いものだ。リブレリ(librairie)は昔も今も変わらない。日本語としてのリズムを整えるために佐藤がかなり大胆な意訳調を採用していることが分かる。戦前の傾向からすれば自然な態度かとも思う。

もう一箇所「書棚」という単語が出ているところを。「小遺言」より。

三六 祈りてあれば、酒汲みし覺えのなきに
   わが精神[こころ]、縛められしごとくなりて、
   ふと假睡[まどろ]みぬ。
   時しもあれや、記憶姫、書棚の中にて
   手を取り上げつ、また置きつ、するを感じぬ、
   そのつかさどる諸機能を、ーー
   すなはち正邪兩面の知覺機能、
   その他のしかじかの知性機能、

XXXVI.
   Cela fait, je me entre-oubliai,
   Non pas par force de vin boire,
   Mon esperit comme lié;
   Lors je senty dame Mémoire
   Rescondre et mectre en son aulmoire
   Ses espèces collaterales,
   Oppinative faulce et voire,
   Et autres intellectuelles.

書棚は「aulmoire」であった。これは現代フランス語の戸棚(armoire)に相当するようだ。本を読んでいると眠たくなるということを、遠回しに表現した一節である。他にも《読むことの大義なおれ》などという詩句も出ているので、とびきり熱心な読書家、勉強家でなかったことは確かかもしれないが、むろん韜晦ということもあり、本好きだったような様子が随所にうかがえるように思う。

最後に「大遺言」「小遺言」以外の詩篇から「バラード」(かなりの数のバラードを残しているが、この作品は「バラード」とだけ題されている。本書では《ブロア詩會にて歌へる》と頭注が加えられている)の一部分。

   泣きながらわれは笑ひ、希望なくして待つ。
   悲しき絶望のうちにあつて慰樂を捉へ、
   樂しみ戯れてしかも悦び一つをえず。
   力なく權力なくして、われは強く
   萬人の詩彈を受けつつ而も歡び迎へらる。
   不定[ふじやう]なるものの他に、確實と思はれるものはなく、
   自明なるものを除きては、暗しと思はれるものもなし。

このアンビヴァレンスがまだまだ続く。まさに「さかしま」なる詩人である。

なお、本書の発行人は吉井省三、発行所住所は東京都麹町区富士見町二ノ二。印刷所は行政学会印刷所(立川市曙町三ノ五五、石上利雄)。青朗社には下記のような出版物がある。『ヴィヨン詩』は少なくとも二度は版を重ねたようだ。

ヴィヨン詩
佐藤輝夫 訳 青朗社 1946

大阪今昔 : 随筆
長谷川幸延 著 青朗社 1946

放送文藝の研究
南江治郎 靑朗社 1948

ヴィヨン詩
佐藤輝夫/訳 青朗社 1948

「巣」について
五十公野清一(いずみの せいいち)/著 青朗社 1948

和田伝 著 青朗社 1948 (書下し長篇選書)

ヴィヨン詩
ヴィヨン 著,佐藤 輝夫 譯 青朗社 1949

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by sumus2013 | 2018-04-12 21:37 | 古書日録 | Comments(0)
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