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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


コンパス綺譚

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龜鳴屋さんの近刊到着。グレゴリ青山『コンパス綺譚』(龜鳴屋、二〇一七年一二月二〇日)。

龜鳴屋

《「コンパス綺譚」は雑誌「旅行人」'04夏号から'07夏号にかけて連載していた漫画です。1冊にまとめるにあたり、解説と描き下ろしイラストを加えました。
 この漫画はグ[○にグ]が初めて描いたストーリー漫画です。》(あとがき)

登場人物がシブい。さすがグレゴリさん。舞台は一九二七年の青島(チンタオ)。ハルという美人女性が狂言回しとなって、まず、安西冬衛が登場。少年時代の三船敏郎。大連、青島で写真館を開業していた三船秋香(徳造)の長男である。次に城田シュレーダーが現れる。実在した経歴不明の謎の探偵小説家。

舞台は上海へ。白系ロシア人の踊子ニーナに三船秋香がからみ、内山書店では、内山完造、金子光晴と森三千代の夫妻、郁達夫、そして前田河広一郎が憎まれ役として重要な役割を担う。むろん魯迅(ルーシュン)もなかなか粋な役回りを演じている。

つづいて魯迅を導入役として映画女優・阮玲玉(ロアン・リンユイ)を軸とした物語へと移る。映画監督の孫瑜(スン・ユイ)、朝鮮人俳優・金焰(チン・イェン)、劇作家・田漢(ティエン・ハン)らが新しい中国映画を作り出し、阮玲玉はスターとなるのだが……。

彼らの手から手へと渡って行くのが、ほんとうの主人公、すなわちコンパス、なのである。

メジャーとマイナーがじつに効果的に交錯して火花を散らす、そんな激動の時代が、グレゴリさんらしく、ゆったり、しっとりと、そして一流のユーモアをもって描き出されている秀作。

by sumus2013 | 2018-02-05 20:47 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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