林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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浮き世離れの

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坂崎重盛『浮き世離れの哲学よりも憂き世楽しむ川柳都々逸』(中央公論新社、二〇一八年一月一〇日)読了。面白い。川柳都々逸なんぞの風流世界にはまったく縁が無いと思っていたのだが、案外と、人口に膾炙している句が多いのにビックリ。

《このワタシ、戦後、焼け跡育ちで、一日小づかい五円玉を握って駄菓子屋へ走り、割り箸にからめた水あめや、コッペパンの半分に黒蜜ぬったのを買い食いしてたガキだったが、思春期を迎え、ラジオの芸能番組、上野や人形町の寄席の高座で、柳家三亀松のお色気都々逸や女芸人の端唄、俗曲とともに都々逸を聞いたのが初め。
 つまり、昭和三十年から四十年代頃までは、生活の中に都々逸が生きていたのでした。》(「あとがき」にかえて)

しかしひと回り下の小生でも、しかも讃岐の片田舎でも、TVというものの普及によって、お色気はともかくも、落語や都々逸、端唄、小唄などはしばしば耳にし目にしたものである。少年時代から青年時代にかけてそういった演芸がオンエアされる比率はかなり高かった(「お好み演芸会」などなど)。今日まで続いているのは「笑点」くらいのものかもしれいないが(?)、それでも今なお川柳都々逸をレパートリーとした大喜利のような芸能番組は放映されつづけている(坂崎さんは悲観的な意見らしいけれど、そうでもないですよ)。日本人はよほど五と七のリズムが好きなんだな、と思うのである。

本書には坂崎好み、名品佳作がズラリのアンソロジー。洒脱な解説も過不足ない。例えば

 花は紅柳はみどり あしたはあしたの風が吹く

平山蘆江の『蘆江歌集』から。あしたはあしたの風が吹くって川柳(蘆江は「街歌」と呼んだ)だったのだ。「トゥモロー・イズ・アナザ・デイ!」

 戀という字を分析すれば 糸し糸しと言う心

こちらは都々逸だそうだが、昔はじめて聞いたときには、うまいこと言うもんだなあと感心した覚えがある。

そして坂崎翁の本領はやはりEROSの世界。といってもちっともいやらしくないのが不思議なくらい。ただし、ここでは引用するのがはばかられるため、ご興味おありの方はぜひとも本書をお求めいただきたい。哲学よりも、という命題通り、哲学的にオシャレな解説の奥義を少しだけ引用しておこう。第二章「いっそこのまま……世間も義理も」より。

 恥ずかしさ知って女の苦のはじめ

 野辺の若草摘み捨てられて土に思いの根を残す

 医者などに治せるものかと舌を出し

これらの歌を引用解説しつつ恋の病をまな板にのせ、次のように締める。

《古川柳は、そのへんの事情を見逃さず、
  「あれ、死にます……と病い癒え
 ということになる。「死にます」といって元気になるのだから人間とは不思議な生物ではあります。
 キェルケゴールではないが、「死に至る病」とは絶望のことをいうが(元ネタは「新約聖書」)、この娘の「死にます、死にます」は、最大級の生きる希望、歓喜の絶頂であったわけです。
 「シヌ、シヌ」は性の絶頂、生の歓喜の時の言葉なのですから、エクスタシーは「小さな死」、まさにバタイユ的エロティシズムと一致する。洋の東西、このことに関しては共通するところが嬉しいじゃないですか。性愛って本当にいいですね。

なんだか淀川さんみたいになってますけど、さすが坂崎翁であろう。以下、本に関する作品をふたつほど挙げて結びに代える。

 ながい話をつづめていへば光源氏が生きて死ぬ

ははは、こりゃ、たいていの物語に当てはまる。もう一句。

 うたたねの顔へ一冊屋根を葺き

これもうまい。

「屋根」は、つまり本ということ。それも、柔らかく軽い和本でしょうね。ゴロリと横になって本を読んでいたのだけれど、眠くなってしまったので、手にした本を開いたまま顔の上に乗せて、うたた寝をしているという図。

反権力の狂歌、鶴彬や竹久夢二の戦争川柳にも目配りは忘れない。回文のくだりも傑作揃い。ブックガイドにもなっているし、ちょいと引用するのにもってこいのガイドブックでもあります。

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by sumus2013 | 2018-01-30 21:47 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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