林哲夫の文画な日々2
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「高橋麻帆書店」という古書店

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高橋麻帆『「高橋麻帆書店」という古書店』(龜鳴屋、二〇一七年六月一日)読了。タテ135ミリという掌サイズ。函入。そして本文が綴じられていない、というところがミソである。この冒険的な造本のアイデアについては図版解説のなかで触れられている。

ドイツのシュトゥルムの植物図鑑ほど、手元に置きたくなる愛らしいものが他にあるでしょうか。実は、私が今書いているこの本は、龜鳴屋さんがシュトゥルム本をもとにオマージュとして作りました。

本文は、紙が数枚ずつ折られただけの状態、図版部に一枚一枚バラバラです。驚くべきは、本文は単に折られただけなのに、ページをめくるのに苦労なくそのまま読むことが出来るのです。

詳しくは本書を直接読んでいただきたいが、たしかに開きやすく読みやすいと言えよう。ただ、バラバラになると順番通りに戻すのがちょっと難儀なんだけれど……まあ冒険に危険はつきものです。


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高橋麻帆さんがどういう方なのか、むろん本書を読んでいただければすぐに分るのだが、ここでは巻末の略歴をかいつまんで紹介しておく。

高橋麻帆 たかはし・まほ
1978年京都の田舎京北生れ(当時はヒッピーコミューン)。山国小学校、周山中学校、地元の高校を卒業し、京都府立大学へ。夏休みミュンヘンで初めて古書籍商の方(塩見文蔵氏)に出会い、その深い知識に感動。就職なんて考えたこともなく、京都大学文学部の院へ進学。

骨董屋でのアルバイトの日々、骨董商・坂田房之助との出会い、ベルリン留学、レコード蒐集家マーク・フォレストとの出会い、下鴨葵書房でバイト、竹内次男(京都工芸繊維大学美術工芸資料館)に資料整理を教わる。至成堂書店パートタイマー勤務、

本についての論文「壁の白とページの白ーウィーン分離派館と『ヴェル・サクルム』」でオーストリア学会賞受賞。学位取得。金沢人と結婚して金沢へ。夫の転勤について東京へ。神保町田村書店修行。金沢にて古書籍商として開業。

いや、なかなかの経歴です。本書の内容もこの記述に背かないしっかりしたものでいろいろな面でとくに北方に無知な小生としては教えられる事が多かった。デザイン的な部分で言うと、日本の装幀におけるパクリの元ネタが何点か指摘されていて殊に興を覚えた。

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【本書図版】


上の春陽堂文庫とレクラムの類似は古書好きなら周知の事実だろうが、次のアテネ文庫の模様がインゼルから来ているとは、小生は、知らなかった。

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【本書図版】
上段左端は『ゲエテ作自傳劇作ファウスト評論』(北文館、一九五一)
上段中、右はインゼル文庫
下段左はインゼル文庫、右はアテネ文庫


なるほど! 捜し出してみると、たしかに小生が架蔵するアテネ文庫は本書に掲げられているインゼル文庫42(『タルタランのタラスコン』[引用者註;原著は『タラスコンのタルタラン Tartarin de Tarascon』])にほぼそっくり。

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これらに限らず昔は海外の書物に接する読者がきわめて少数だったためか、そのままそっくりいただきの表紙デザインというのをしばしば見かける。白水社にもフランス書から引っ張って来た図案がけっこう多い(戦前ですよ、もちろん)。以前紹介したのはアテネ文庫と同じ弘文堂書房の世界文庫。

フランソワ・ヴィヨン『大遺言書』

他にもこういった例はいくらでもあるだろう。パクリ集を本にしたら面白いかも。そうそう、ついでというか、ウィーン分離派つながりでひとつ付け加えておく。つい最近、水沢勉氏のFBで紹介されていた『青鞜』(一九一一年九月創刊)表紙の元ネタ。ウィーン分離派の画家ヨーゼフ・エンゲルハルトの図案(下の左)。デザインを担当した長沼智恵子はそれをモノクロの単純な線でうまく模倣している。表紙画としては印刷効果も含めなかなかいい仕事だとは思うが、絵柄としてはもうひと捻りしてもよかったか。

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高橋麻帆書店

龜鳴屋

by sumus2013 | 2017-09-15 21:41 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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