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林哲夫の文画な日々2
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ノーベル文学賞

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柏倉康夫『増補新装版 ノーベル文学賞 「文芸共和国」をめざして』(吉田書店、二〇一六年一二月一日)が届いた。前著が二〇一二年一〇月だから早いものだ。その間にマンロー(カナダ)、モディアノ(フランス)、アレクシエーヴィチ(ベラルーシ)、そしてボブ・ディランが受賞している。前著を紹介したとき偶然にもバーナード・ショウが受賞を固辞した話題を取り上げたのだが、今年は例の貰うのか貰わないのかはっきりしないディランの態度が注目だった。受賞の記念講演をしないと賞金は貰えないらしいが、これまたするのかしないのかはっきりしない。本書では「増補新装版 あとがき」にボブ・ディランへの授賞についての波紋が取り上げられておりひとしお興味をひかれた。

《隣室の扉があき、スウェーデン・アカデミーのノーベル文学賞委員会の事務局長サラ・ダニウスが発表会場にあらわれて、手にした紙ばさみを開いた。
 まずスウェーデン語で今年のノーベル文学賞の授賞理由を述べ、その後で「ボブ・ディラン」とアナウンスすると、取材陣からどよめきが起こった。

そしてサラ・ダニウスは発表後テレビのインタビューでこう発言した。

《「押韻と鮮やかな光景を描き出す歌詞は彼独自のものだ。過去にさかのぼれば、ギリシアのホメロスやサッフォーは〔朗読などで〕詩を聴き、楽器と一緒に吟じられることを前提に詩的な文章を書いた。ボブ・ディランも同じだ。私たちはホメロスやサッフォーをいまでも読んでいる。彼もまた読まれるし、読まれるべきだ、彼は英語の偉大な伝統のなかの偉大な詩人だ」と讃えた。

これに対してさまざまな意見や感想が飛び交った。チリのバチェレ大統領やアメリカの作家ジョイス・キャロル・オーツは授賞に対して賛意を表した。一方でフランスの作家ピエール・アスリーヌは

《「ディラン氏の名前はここ数年頻繁に取りざたされてはいたが、私たちは冗談だと思っていた。今回の決定は作家を侮辱するようなものだ。私もディランは好きだが、だが〔文学〕はどこにある? スウェーデン・アカデミーは自分たちに恥をかかせたと思う」と辛らつに批判した。》

詳しくは直接本書を読んでいただきたいが、ヴェルレーヌが「詩に音楽の富を取り戻そう」と宣言し、マラルメは

《音楽と言葉と仕草の総合芸術をめざすワーグナーの楽劇に対抗できる詩の創造を真剣に訴えた。
 ノーベル文学賞がはじまったとき、すでに詩人たちはあえて音楽と手を切ることで、詩という表現手段を一層強力なものにする努力を積み重ねていた。スウェーデン・アカデミーはこうした文脈のなかで、今回のボブ・ディランへの授賞を決めたのである。

というフランス詩にとりわけ造詣の深い柏倉氏ならではの感想に重みがある。

では誰がディランに決めたのか? スウェーデン・アカデミーは定員十八。このなかの五名が委員会を作り、世界中の有資格者に推薦の依頼状を送る。届いた推薦のなかから第一次リストが作られる。候補者はおよそ百五十人ほど。委員会はリストを元に比較的早い段階で十二、三人に厳選する。これが第二次リスト。そしてそこからさらに第三次リストの五人前後に絞られ、これをアカデミー会員の全員によって検討し、最後に投票が行われる。最終的には多数決だそうだ。

学が紙を離れて飛翔し浮遊している現代、ある意味で文学はホメロスの時代にまで後退しているとアカデミー会員たちは考えたのかもしれない。いや単にディラン世代だっただけなのかも……。

とにかく座右に必需の一冊。文学の世界は限りなく広い。

by sumus2013 | 2016-11-30 20:37 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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