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マザリナード集成東京大学の総合文化研究科駒場博物館で開催中の特別展「東京大学コレクション『マザリナード集成』」をご覧になった某氏より《結構娯しめました》という報告を頂戴した。パリにしげしげ通っているわりにはフランス史については無知なのでマザリナード文書(LES MAZARINADES)といってもなんのことやら。マザリナードというのだからマザランと関係あるのかな、というくらいの認識だったのだが、某氏の展示について報告を読ませてもらうと、たしかになかなか面白いそうな展覧会である。 ごく簡単に言うと十七世紀中葉、フランス宮廷で権力をふるっていた宰相マザランの三十年戦争などにともなう重税政策に業を煮やした貴族および民衆による反乱が起こった。それがフロンドの乱(La Fronde, 1648-53)である。その時期に、両陣営から様々な文書が出版され、それがまた大受けして類似書が多数出版されたそうだ。ポン・ヌフあたりの行商人の本屋がそれらを販売しており初刷は二〜三百部で版を重ねて千部を超えるものもあったとか。マザラン自身もそれらの文書を蒐集して、読みながら朝食をとったのだとか。マザランと関係なくてもマザランとタイトルに入れれば売れたというから人気のほどは察せられる。マザランは何度も国外へ逃亡をはかりながら(といってもイタリア人なのだが)最後には王党派の勝利となりルイ十四世の絶対王政が開始されることになった。ある意味、フランス革命の序章というか、その種が播かれたということなのだろう。 詳しくは東大のサイトなどをご覧いただきたいが、その文書が具体的にどんな姿なのか、国際マザリナード文書研究サイトには画像つきのカタログページもある。 RECHERCHES INTERNATIONALE SUR LES MAZARINADES 東京大学コレクション『マザリナード集成』 ところでどうして東大に大口コレクションが入ったのかというと某氏のメールにはこうあった。 《東大のコレクションは丸善の斡旋で、昭和の末に国庫補助を得て四千五十万円でオランダの古書籍業者から一括して買い入れられたものだが、この国費負担予算が通ったのは当時の貿易黒字問題解消を図るための国策の一環だった由》 貿易黒字解消とはなつかしい響き。一九七八年購入というからバブル前夜ではあるが、一ドル200円を突破したと騒いでいたまさにその時代の遺産であったか。買い入れ以来誰も手をつけていなかったものが、何十年かを経て今ようやく陽の目を見ているというわけだ。何でも買えるときに買って取っておくものだなあ……。
by sumus2013
| 2016-10-28 20:41
| 古書日録
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