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林哲夫の文画な日々2
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海鳴り28

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『海鳴り』28号(編集工房ノア、二〇一六年六月一日)。毎号、巻末にはノア主人・涸沢純平さんのエッセイが収められる。このところ点鬼簿のごとく追悼文が続いている。今号は鶴見俊輔さんを悼む「鶴見さんが居た」である。二〇〇〇年に梅田の新阪急ホテルで開かれた編集工房ノア創業二十五周年記念会の話から始まって鶴見さんの評論集『象の消えた動物園』へつながる。記念会については以前にも触れたことがあるが、たしかに盛大な催しだった。

編集工房ノア略年表

その会の直後に鶴見さんが京都新聞に「ノアのあつまり」という記事を書いたなかで『海鳴り』という雑誌の名前について言及したことが取り上げられている。

《ノア編集工房の雑誌の題は「海鳴り」という。潮騒は波のたわむれであるが、海鳴りはそれとちがう。沖の向うで大きな波があり、それが風とあたって、どーんと大きな音となる。遠くきこえる音である。ノアの編集長は、今日明日の批評にこだわらず、時代の方向に耳をかたむけているという。》

涸沢さんは福井の生まれと聞いた。詩人の先輩には荒川洋治がいる。日本海の海鳴りが涸沢さんの内側で遠く聞こえているのだろうかと想像したりする。

山田稔さんの「「どくだみの花」のことなど」は杉本秀太郎の思い出。「どくだみの花」は山田さんがべストワンだと思う杉本のエッセイのタイトルである。『天野さんの傘』にも生島遼一と山田・杉本コンビの関係を描いた「生島遼一のスティル」が収められているが、その続編のようなおもむきで、晩年の生島遼一が庭いじりをする杉本秀太郎の姿に重なって見えるようだ。

他に鈴木漠「風の行方 多田智満子さんとの連句」では多田智満子、高橋睦郎、鈴木漠による「三吟歌仙 醍醐」が楽しめる。また庄野至「住吉さん」のつぎのくだりが印象に残る。毎年大晦日に住吉大社を父親と詣でた思い出。父は庄野貞一で帝塚山学院の初代学院長。至は四男、庄野英二、潤三の弟である。

庄野至『異人さんの讃美歌』

《「住吉さん詣で」の後は、粉浜の市場を通り抜け、玉出の書店「フミヤ」に寄るのも習慣になっている。父はそこで翌日からの日記を買い求める。
 父は子どもたちに「勉強せよ」とは言わなかったが(決して皆、言われなくても勉強するような子どもではなかった)だが、なぜか日記を書け、とうるさかった。
 父は自分の日記を選んだあと、
 「読みたい本があったら、買ってやる」
 その言葉を予想して待っていた私は、すぐさま子ども本売場を彷徨う。あれも読みたい、これも読みたい。少年の心は揺れる。一年に一度の贅沢な時間である。
 父は「新日記」を、僕は「少年雑誌」と、まだ印刷の匂いが残る「少年読み物」を腕に抱えて暗く静かな電車道を歩いて、家路を急ぐのだった。
 空には晦日の星が輝いていた。》

以上いずれも死者を弔う文章ばかりなのだが、それもまた海鳴りのごときものであろうか。

by sumus2013 | 2016-06-01 20:49 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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