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林哲夫の文画な日々2
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金利生活者になるんだ

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アルテュウル・ランボオ『酔ひどれ船』(新城和一訳、白樺書房、一九四八年一月一〇日)。白樺書房の主は矢野文夫。長谷川利行の矢野文夫である。

2012-06-15 古本夜話209 金鈴社と矢野文夫訳『悪の華』

本日、エンゲルスガールで鈴木創士さんが「ランボー入門」と題するトークを行ったので拝聴した。そう広くない町家の長屋を店舗にしているのだが、ほぼ満員御礼の盛況だった。鈴木さんらしいランボー話、ドラッグ話、遊郭話で盛り上がった。

トークから雑談に移ったあたりで先日「述語制言語の日本文化」で取り上げたランボーの「Je est un autre.」について質問してみた。「全詩集では、たしかカッコつけたんじゃないかなあ」との返答。帰宅して該当箇所(p477)を見ると

《というのも「私」とは一個の他者であるからです。》

鈴木創士訳『ランボー全詩集』

となっていた。苦心のカギカッコである。これはうまい意訳だと思うが、これだと三人称が生きてこない。翻訳不可能なのだから仕方ないけれど何か方法はないか……ないか、やはり。

トークのなかでランボーが十歳前後に書いた作文を鈴木さんが朗読した。上記全詩集に収められている。これがなかなか名調子だった(小生はまだ読んでいなかった)。

《どうして、と僕は考えたものだった、ギリシア語やラテン語を学ぶのか? 僕にはわからない。結局そんなものは必要じゃない! 試験に合格することなど、僕にはどうだっていい… 合格することが何の役に立つのか、何の役にも立たないだろ? それでも合格しなければ職は得られないと人は言うのだけれど。僕は職なんかいらない、僕は金利生活者になるんだ。たとえ職がほしかったにしても、どうしてラテン語を学ぶのか、この言語を話す者なんか誰ひとりいないのに。時たま新聞でラテン語を見かけることがあるけるど、ありがたいことに、僕は新聞記者なんかにならない。》

《ギリシア語に移ろう… この汚らしい言語を喋るやつなんか誰ひとりいない、世界中にひとりも!… ああ! いまいましいったらありゃしない! くそっ、僕は金利生活者になるんだ。教室の長椅子の上でズボンをすり減らすのはそんなに気持ちのいいことじゃない… 糞ったれだ!》

Premières proses Prologue II

ごく一部だけの引用では分り難いかもしれないが、十歳かそこらの子どもが書いたとしたら驚きだ。ランボーはもちろんラテン語もギリシア語もすばぬけてよくできた。金利生活者(ランティエ rentier)というのは主に国債の利子で生活する者、その意味が少年ランボーに本当に分っていたのかどうか、興味深いものがある。内容としては、大人ぶっていても、これはませた子供なら誰でも考える子供の発想である。しかし表現は全然子供らしくない。そこが凄い。

by sumus2013 | 2016-05-22 20:58 | もよおしいろいろ | Comments(0)
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