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林哲夫の文画な日々2
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女性に関する十二章

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伊藤整『女性に関する十二章』(中央公論社、一九五四年九月一〇日四十九版)。カバーが花森安治。初版だと書いてあったので求めたところ四十九版だった。それはないでしょう、とは思ったが、返品するのもシャクなので仕方なく読んでみることにした。

今読むと何が言いたいのかよく分らないところもある。自慢たらたらなところも、戦中のうっぷんを晴らしているような感じもある。当時の世相を見るという意味では参考になる。

例えば、昨日の報道ステーションで特集していた日本国憲法の第九条は誰が発案者かという問題について。時の総理大臣・幣原喜重郎がマッカーサーに提案した(一九四六年一月)ということが音声記録とアメリカ側の文書によって証明されていた。戦争放棄と幣原の口から聞いてマッカーサーは驚いたそうだ。この件について伊藤整はこう書いている。

《伊藤整家において戦前から内緒で実現していたような種類の女権拡張または女性崇拝的な新秩序を日本国にもたらし、日本の女性の力で日本男子どものアラギモを取りひしがしめ、再び日本男性がアメリカやイギリスの男性を脅かすような、勇気や武器を決して持てなくしてやろう、と決意して、そのとおり実践したのが、かの連合国総司令官であったマッカーサア君でありました。》

事情通らしく思える伊藤整でも平和主義はマッカーサーの意向だったという誤解を避けることは出来なかったようだ。その後の憲法草案ではスッタモンダが起こったわけだから部外者のインテリたちは大体誰もがそういう認識だったのかもしれない。さらにつづけてその後の展開をこう説明する。

《しかしマッカーサア君はアメリカの男性の安泰を願うあまり、少しやりすぎたようであります。氏が解任される少し前に、朝鮮の戦争が起きました。アメリカの青年が主としてその戦いを戦いました。そしてあるものは傷つき、あるものは死にました。これは第三次世界大戦の始まりであるとか、近いうちに原子爆弾の戦争が始まるなどという流言が飛びました。その頃から氏は、日本男子に再び多少の勇気を持たせ、彼等を再び武装させ、アジアにおいてアジア人を戦わせることが、アメリカ人の安泰により多く資するユエンである、と考えるにいたったようであります。》

マッカーサーが現人神に取って代わっていたのか……と思えてしまう。さらに話はマッカーサーが七人目の妻を持つことへ移って行くが、あまり馬鹿馬鹿しいので(大真面目なことほど馬鹿馬鹿しく見えるのかもしれないが)引用は控える。

by sumus2013 | 2016-02-26 20:45 | 古書日録 | Comments(5)
Commented by 牛津 at 2016-02-26 22:06 x
ウウ――ン、続きを読みたいな。全集なら図書館にあるので、借り出そうかな。新書版の方が味があるのだが。
Commented by sumus2013 at 2016-02-27 08:43
牛津先生好みの一冊かも知れませんね。チャタレイについても書かれております。少し前なら均一にいくらでも転がっていた本ですが、今は多少値がついているようです。
Commented by 唐澤平吉 at 2016-02-27 08:55 x
47版とはすごいですねえ。いまの村上春樹さんやピース・又吉さんに劣らぬ人気ですね。植田康夫さんは「この本がベストセラーになった要因の一つは花森のカバー装幀とカットであったとおもわれる」と『本は世につれ』に書いていました。やはり花森の装釘を集めた本をつくらないといけませんね。
Commented at 2016-02-27 08:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sumus2013 at 2016-02-27 17:44
ベスセラーになるような内容ではないように、今読むと思えるのですが、やはり時代の流れに棹さしたのでしょうね。花森の装幀はいいですねえ。カットも。ぜひ作りましょう!
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