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林哲夫の文画な日々2
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福の神

f0307792_20085678.jpg

「福神駒遊」と題された版画。これはおそらく売薬版画の一種だと思う。かなり色あせて状態も良くない。屏風に貼ってあったのを剥がしたようだ。三十年近く前に古ぼけた版画をまとめて何枚か買ったなかにあった。それらのうち今も手元に残っているのはこれを含めて二枚だけ。他はみな売ってしまったような気がする。

福神とあるが、この図はエビスだろう。エビスは七福神のなかでただ一柱、日本由来の神さまだという。他の神様はみな帰化して日本の神様のような顔をしているのに唯一の日本出身の神がどうしてエビス(戎、胡、夷…)なんだろう。十年ぶりに日本出身の力士が優勝したみたいなものか(ちがう?)。

『能狂言集』上(笹野堅校訂、岩波文庫、一九四二年七月三〇日)を読んでいたら「福の神」という曲が出ていた。そこには以下のような滑稽なやりとりが描かれている。この時代には大晦日に神前で豆まきをする風習のあったことが分る。

《(一のアド)一日[繰返記号]と送るほどに、はや年の夜(よ)に成りて御ざる。毎年福天(ふくでん)の御前(おまへ)へ参りて年を取まする。今一人(いちにん)同道致す人が御ざる。是へ誘引(さそう)て参うと存る。先そろり[繰返記号]と参う。

一のアド(脇役)は二のアドを誘い出し一緒に福天参りに出かける。以下読みやすくするために会話を改行した。【 】は引用者が付したものでこのテキストでは【 】内は小文字になっている。

(一のアド)扨何と思召そ。毎年福の神の御前で年を取りますれば、次第[繰返記号]に富貴に成る様に御ざる。
(二のアド)仰せらるゝ通、福天を信仰(しんがう)致いてより、段々たのしう成る様に御ざる。
(一のアド)イヤ、何かと申内に、是ははや御まへで御座る。
(二のアド)誠に御前で御ざる。
(一のアド)是へ寄て拝(おがま)せられい。
(二のアド)心得ました。
(一のアド)扨いつ参てもしん[繰返記号]と致いて、殊勝な御前で御ざらぬか。
(二のアド)誠に殊勝なおまへで御ざる。
(一のアド)漸々豆をはやす時分で御ざるが、こなたには御用意被成て御ざるか。
(二のアド)私は用意致しませぬ。
(一のアド)其儀ならば、私が用意致(いたい)て御座るによつて、はやしませうほどに、是へ寄て御ざれ。
(二のアド)心得ました。
(一のアド・二のアド)福は内へ[繰返記号][繰返記号]。【扇ひらきてうつまねする。】鬼はそとへ[繰返記号]。福はうちへ[繰返記号]。
(シテ)【笑ひながら一の松迄出る。】
(一のアド)イヤ、是へ御機嫌能う出(いで)たゝせられたはいか様(やう)な御方で御ざるぞ。
(シテ)汝らはえ知らぬか。
(一のアド・二のアド)何(なに)とも存ませぬ。
(シテ)毎年[繰返記号]奇特(きどく)に歩みをはこぶに依りて、たのしう成して取らせうとおもひ、福の神、是まで現れ出て有るぞとよ。
(一のアド)是は有難う御ざる。先斯う御来臨、
(一のアド・二のアド)被成て被下い。
(シテ)心得た。床机を呉れい。
(一のアド)畏て御座る。御床机を上させられい。
(二のアド)心得ました。ハア、御床机で御ざる。
(シテ)両人共に是へ出い。
(一のアド・二のアド)畏て御座る。
(シテ)汝らは毎年[繰返記号](まいねん)奇特にあゆみをはこぶなあ。
(一のアド・二のアド)畏て御座る。
(シテ)扨いつも福の神に神酒(みき)を呉れるが、けふはなせに呉れぬぞ。
(一のアド)はつたとわすれまして御ざる。》

急いで酒を調達して奉るとシテは他の神々にも進上しようと言いつつ、別して松の尾の大明神へと唱える。アドはどうして松尾大明神なんですか? と尋ねる。《松の尾の大明神は、神々の酒(さか)奉行じやによつて》と答えるシテ。そして突然、日々楽しく暮らす方法を教えてやろうと言い出す。ぜひお願いしますという二人にシテはこいう教訓を垂れる。

《朝起とうして慈悲有るべし。人の来るをもいとふべからず。妻夫(めうと)の中にて腹立べからず。扨其後に、我らが様成(やうなる)福天に、いかにもおふくを結構して、扨中酒(ちゆうしゆ)には古酒(ふるさけ)を、いやといふ程もる成らば、[繰返記号]、[繰返記号]、たのしうなさではかなふまい。【笑つて留る。】

シテの出で立ちについての指示には「福の神の面 えびすにても」とある。





by sumus2013 | 2016-02-01 21:32 | 古書日録 | Comments(0)
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