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話の特集『話の特集』第118号(話の特集、一九七五年一一月一日、表紙=横尾忠則「谷内(六郎)さん」)。某古書店に『話の特集』が数十冊並んでいた。ほとんどが横尾忠則の表紙。どれも魅力的だったが、いくら気に入っても全部買い締めるような気分の時代は通り過ぎたので一冊だけ選んで帰り、今は本棚に面陳して喜んでいる。横尾の仕事のなかではこの手の肖像写真をペンでなぞってハデに色分けしたイラスト群が好きだ。 面白そうな記事が並んでいる。写真付きの著者紹介ページ、みんな若くて驚いてしまう(例えば黒柳徹子…)。パリという文字で目に留まったギリヤーク尼崎のエッセイ「パリに踊る」を紹介しておこう。七五年の七月七日朝、ギリヤークはアンカレッジ経由でドゴール空港に到着。バスで市内に入った。 《パリの朝は好きだ。 朝食後、場所探しに出かけた。ルクサンブルグ公園、コンコルド広場、その他パリ市内の名所は、観光客で一杯だったが、どこも警官の取締りがきびしく、とても踊れる状態ではなかった。日本をたつ時の不安が、あたっていた。でも必ず踊れる場所はあると思って必死になって探した。そして、七月九日午後四時すぎ、ソルボンヌ大学のある、サンミッシェルの路上で、『じょんがら一代』を踊った。この作品は、七年間の大道生活の中から生れた私自身の姿だった。赤いジュバンに白い袖なし羽織り、手作りの曲り三味線を背に、ボロ笠かぶり、朽木の杖とゴザを手に、テープレコーダーから流れる津軽民謡の音色と共に、寒風吹きすさぶ荒野の中を、とぼとぼ歩む、「日本人の押し込められた情念の世界」の踊りだ。 狂気のように踊った。踊り終った時拍手が湧いた。いつの間にか、人垣が出来ていたのだ。投げ銭もあった。後かたずけをして、夢中でその場を去った。もう何がなんだか解らなかった。只間違いなく、パリで踊ったという実感だけだった。パリ警視庁の厳しい監視の目を盗み、街頭で踊ることは大へんだ。翌日から、サクレクール寺院広場、サンジェルマン通り、その他場所を変えて踊った。一回一回が緊張の連続だった。 そして遂に、十三日の夕方、最もパリ祭の雰囲気のある、コントレスカルプ広場、トルティユ街の路上で、パリの夜を踊った。若者も、老人も、子供も、この日の為に生きていたように思えた。アコーディオン弾きや、ギター弾きの芸人が集まって来て、いやがうえにも景気を盛りあげていた。黒山の輪の中で、『芸人』、『白鳥の湖』、『じょんがら一代』、最後に赤フン一つで『念力』を踊った。四十四年間の生きざまを、必死に踊った。これしか私になかった。踊り終った時、拍手とアンコールで、しばし茫然としていた。突然ひげづらの男がとび出してきて、私の体をしっかり抱き、ホホにキスした。はずかしかったが、私は泣いた。そして嬉しかった。》 ところが、十五日、ついにシャンゼリーゼで警官に捕まって連行された。日本にいたことのあるフランス人のジャーナリストが同行して通訳してくれたので無事釈放された。出るとき警部は「シャンゼリーゼはパリの顔です。その衣裳はちょっと派手過ぎますね」と言った。その後アビニョンに出掛け、パリに戻って、最後の夜はモンパルナスで踊った。熱狂した見物人が胴上げしてくれた。……パリってそんな街だったのか。 他には「おや?」と思わせる広告が載っていた。 この手書き文字は横尾忠則だろうか? ある古本屋さんの文字に似てませんか。
by sumus2013
| 2016-01-25 20:36
| 古書日録
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