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林哲夫の文画な日々2
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ボマルツォの怪物

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アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『ベルヴェデール Le Belvédère』(Grasset, 1958)。古書すからべより購入。

以前のブログで扉野良人『ボマルツォのどんぐり』(晶文社、二〇〇八年)を紹介したときに澁澤龍彦のボマルツォへの言及にも触れた。その澁澤はマンディアルグの翻訳者でもあり、彼がボマルツォのことを知ったのはこのエッセイ集、あるいは前年に出た写真集(『Les Monstres de Bomarzo, avec trente-six photographies de Glasberg』Grasset)を通してだろうと思うので、マンディアルグの文章を一読してみたかった。

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マンディアルグがボマルツォを訪ねたのは一九五四年。これはジョヴァンニ・ベッティーニ(Giovanni Bettini)が、このルネサンス期に造られ、その後忘れ去られてしまって、荒れるに任されていた公園を含む土地を購入し、修復を始めた年でもある。今日では観光コースにも入っているが、当時はまだ知る人ぞ知る特別なスポットだったようだ。

ボマルツォの怪物公園(Parco dei Mostri - Bomarzo)

マンディアルグはほとんど情報のないボマルツォについてマリオ・プラーツを援用したり、あれこれとヨーロッパの奇妙なモニュメントなどと比較したり、現代美術との共通性を説いたりしながら歴史の闇からこの怪獣庭園を浮かび上がらそうと努めている。それはそれで興味深いところもあるのだが、個人的には実際にボマルツォへ旅した道筋を描いたくだりにイタリア紀行としての面白味を感じた。

ボマルツォへ行く前にその途次にあるタルキニアの地下墳墓を巡ることをマンディアルグは勧めている。エトルリア時代の遺跡群である。

Cerveteri y Tarquinia. Mundial de la UNESCO Patrimonio de la Humanidad

《墳墓から外に出たなら、エトルクス博物館(かつてのヴィテレスキ宮殿)の横手にあるレストランで昼食を摂ることをぜひともお勧めする。われわれはそこで、この年(一九五四)にも、ブイヤベースなど足元にも及ばない素晴らしい魚のスープを食した。それをわれわれに給仕したのは、覇気のない、小太りの、白面で、髭もなく、カストラートのようなよく響く声をした小男だった。彼はまさに人々が常にそうあって欲しいと望むような「タルキニアの悪魔」と「ボマルツォの怪物」をつなぐ橋渡しなのである。》

拙訳で申し訳なく。もうひとつ面白いと思ったのはパニックについて以下のように書いている部分。これは原文にて。

《Voudrait-on donner une représentation concrète à certain égarement des sens et de l'esprit auquel se rapporte bien le mot panique, alors on ne saurait trouver mieux que ce groupe colossal taillé en pleine roche…》

怪物公園で奇怪な彫像に出会ったときのクラッとするような印象を「パニック」という言葉と関係があるとしているわけだが、それについても以前少しだけ触れたことがある。パン(半獣神)に出会ってビックリ、それがパニックの語源らしい。パンとはすなわちエトルリア人の後裔だったのかも知れない。

半獣神と牧神

by sumus2013 | 2015-09-25 21:43 | 古書日録 | Comments(0)
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