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林哲夫の文画な日々2
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ボトルブルース

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庄司太一『びんだま飛ばそ』(パルコ出版、一九九七年三月二〇日)および同『平成ボトルブルース』(廣済堂出版、二〇〇一年八月一五日)。びん好きにはたまらない二冊。小生も熱心に集めることはないものの古道具屋などを漁るときにはビンはいちばん気になる(なにしろたいていは安価だから)。庄司氏の場合そんな生易しいレベルではなく全国を発掘(文字通り地面を掘る)して回るというウルトラ級のびん数寄。後者には《自宅の敷地に、五万本に近いびんを収容した私設博物館「ボトルシアター」を開設》とある。書籍五万冊も凄いとは思うけど、想像はできる。ところがこわれものビン五万本を私的に収蔵するというのは想像を超えている。

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『びんだま飛ばそ』で目を奪われたのは「カフェーパウリスタ・コーヒーシロップびん」の頁【喫茶店の時代】。カフェーパウリスタが出していた大正時代のコーヒー・シロップ、昭和初期のフルーツ・シロップのボトル、当時カフェーパウリスタの食卓にあった胡椒やソースのびん、マッチラベル二種の図版が掲載されているのだ。これは初耳(初目)。

《注 コーヒーシロップは、当時銀座・リグレー会社のチウインガムとともに一世を風靡した飲料である。その発明者は宮川孝兼。彼は明治一四年金沢に生まれ、二五年頃に上京、洋食店やミルクホールを営み、コーヒーや紅茶の製造販売も手がけた。昭和三年千駄ヶ谷において享年四八歳で没している。》

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カフェーパウリスタの次に出て登場するのが星製薬。「ホシ人参規那葡萄酒」。このびんはフレデリック・スターン社の強壮トニック酒のビンを模倣したものだった。

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他にもキンカン、カレーパウダー、味の素、目ぐすり、化粧品などなど、なんとも美しく、びんがまるで生き物のように思えてしまう!

『平成ボトルブルース』の方は著者のインテリジェンスが存分に披瀝された、一歩踏み込んだ内容。ボトルコレクションの魅力が読みものとして語られている。こちらも図版は多く楽しめる。何でもビンに見えてしまうコレクター心理も絶妙。

なかで「ボトルブルース」はハッとさせられるブルース論。

《今まではブルースというものを故意に遠ざけてきました。なぜならそこには神様がいないような気がしたからなのです。もしいるとすると、それは悪魔でありましょう。現に憂うつやさびしさを表すブルースという言葉は、一六世紀の古い表現であるブルー・デビィルズ(blue devils)から生まれたものなのです。》

なるほどそうだったのか、と感心した(ブルースの語源に無知だっただけですが)。そして話はこういう風に展開する。

《アメリカの元来の黒人音楽を大きく二つに分けるとしたら、ゴスペルとブルースであるというのは、とても示唆的なことだと思うのです。つまり、神様のいる世界と神様のいない世界。まさに人間の大きな二つのテーマをそのままに示しています。そしてブルースというのは神様不在の世界ということになるのです。》

これについてはそう単純ではないと著者自身も書いておられるが、悪魔は神があってこそ、結局は同じ世界なのではないだろうか? ま、それはともかくとして、さらにこう続くのが著者ならでは。ブルースには救済がない、しかし救済がないといった救済があるのではないだろうか、と逆説的に提示してこう言い切る。

《ブルースには救済されなくてもいいじゃないかといった、そんな雰囲気が漂っているのです。そんなところがどこかびんにも通じる気がするのです。》

……全ての道はびんへ通じる。






by sumus2013 | 2015-09-18 19:50 | 喫茶店の時代 | Comments(0)
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