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飯田淳次さん『古書月報』414号(東京都古書籍商業協同組合、二〇〇六年二月)に「記憶に残る古本屋第十二回/鶉屋書店 飯田淳次さん」という座談会記が載っている。出席者は青木書店、石神井書林、新生堂書店、浅草御蔵前書房の各店主。これは鶉屋書店についてだけでなく戦後の東京の古書業界の変遷を知るうえでも貴重な内容だった。 なかではやはり石神井書林さんの発言が印象に残る。石神井さんは昭和五十五年に独立した。 《私も最初から詩集をやっていましたが、あまり智恵もなく高いものは買えませんから、マイナーなものを買っていたのです。そしたら、店員時代の友愛書房の主人が私を喫茶店に呼んで、「お前平気か。みんながお前のこと頭が変だといってるぞ。ゴミみたいものを高く買っていて、変だと言われているぞ」と言うんです。そのときたまたま喫茶店の席の近くに飯田さんがいらして、「友愛さん、あれでいいんだ。こいつはいいものを買っているよ。だからこいつは頭が変じゃない」と言ってくれました。》 石神井さんはその後初めて作った古書目録を持って飯田を訪ね、こうさとされる。 《最初に言われたことは、今日買った本を明日売るようなことは絶対するな、金がないんだから買い間違いをすることはある、だが、損をしたから明日安く売ってしまおうとしてはいけない、それをとにかく調べなさいと。調べていけばいろいろ覚えられるんだ、だからすぐ売ってはいけない。飯田さんはそのとき、本屋の目録というのは一種の研究発表のようなものなんだ、そういう風に調べたものが一冊の目録になるんだ、最初はこういう目録でいいけれど、研究発表をするような目録を作れるようにならないといけないって。》 近代文学古書目録石神井書林・在庫書目第参号 飯田は昭和五十六年に倒れ闘病を余儀なくされた。昭和五十七年と六十年に在庫処分市を開く。石神井さんはそれを手伝った。 《鶉屋さんはとてもマイナーなものが得意だったなという印象があります。つまり表通りのものだけにくわしいのではなくて、裏通りの本というのですかね、マイナーで有名でない、夭折した詩人で一冊しか残っていないみたいなものをとても大切にされていました。》 つまりゴミの真価を知っていたわけだ。 《飯田さんは二回古書目録を出されています。それにはもう日本の近代詩の主要なところが載っているんですね。逆に言うと日本の近代詩の逸品はあの薄い目録に入ってしまうぐらいの量しかないということです。》 《ダンボール十箱もあれば入る量なんですが、それを一回目の売り立てではあれだけの量にまで広げ、しかもゴミがない。つまり、飯田さんの中に、体系的で緻密な近代詩のすべてがあったということです。今そんなことできる本屋さんはどこにもないでしょうね。》 鶉屋書店の古書目録 肝に銘じたいのは次のくだり。病の飯田を石神井さんは見舞った。 《飯田さんは市場がお好きだったから、少し安心されるかなと思って、「市場は最近あまりいいものが出ません」と言ったら、怒るんですよ。「市場というのは油断していてはいけないところなんだ。昔、市場でちょっと油断したために三木露風の第一詩集『夏姫』を買い逃したことがある。それはあのとき一回きりのチャンスだったんだ。市場で何もありませんなどと、お前の歳で言うようなやつは……」と言って、涙をポロポロと流されるんですね。》 納涼古本まつりも、この気持ちで出かけなくては…。
by sumus2013
| 2015-08-10 20:26
| 古書日録
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Comments(5)
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by
yf
at 2015-08-11 05:56
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鶉屋書店、飯田淳次さんは、湯川書房、湯川さんの最大の応援者です。『魔笛』の発表展を、東京で開いた時、谷中に「お店」を訪ねました。とても喜んで下さったこと、お店の壁に『魔笛』のポスターが貼ってありました。感謝を込めて投書致します。
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yf
at 2015-08-11 14:31
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付け加えます。鶉屋書店の「古書目録」は湯川さんのデザインと聞いています。
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sumus2013 at 2015-08-11 16:50
鶉屋さんのお話うかがった覚えがあります。出版物を扱ってもらっただけでなく、資金不足のときには本を買ってもらっていたそうですね。
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伊吹文庫 伊吹 洋一郎
at 2015-08-25 17:40
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以前、飯田書店の目録表紙の画像をいただいたものです。懐かしい飯田さんのことが出ていましたので、投稿致します。その後、本棚の隅から原本を発見し、eBook化しました。今でも、この素晴らしい品揃えに感嘆するばかりです。
http://fliphtml5.com/mtmp/uvcs http://neonachtmusik.wix.com/bookarts#!stroll/c439
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by
sumus2013 at 2015-08-25 20:18
ありがとうございます。こういう形で御紹介いただきこの目録の素晴らしさが多くの方々に分っていただけると思います。
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