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林哲夫の文画な日々2
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幼年画

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原民喜「夏の花」は新潮文庫(『夏の花・心願の国』)で読んだ。やはり暑い夏だったと思う。その後、晶文社版『夏の花』(一九七〇)と出会い、その駒井哲郎による美しい装幀に魅了されてずっと棚に挿していた。駒井はモノタイプという技法で色彩豊かな版画作品をいくつか作っているが、そのなかの一種で函が飾られている。緑の画面にうすい黄色の花が浮かぶ図である。

本日届いた原民喜『幼年画』(サウダージ・ブックス、二〇一五年八月五日)、解説で田中美穂さん(蟲文庫さん)がやはりこの晶文社版『夏の花』に魅せられて原民喜を再発見したことを記しておられる。

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《読み直すきっかけになったのは、一九七〇年に出された晶文社版『夏の花』だった。駒井哲郎による函入りの装幀にひかれ古本屋で手に取った。それまで持っていた、いわゆる原爆小説のイメージとはまったく違う、静かで美しい佇まいにいくらか驚きもして、興味をひかれたのだ。》

さらにこの本には続きがあった。

《ところで、その本は事情があって一度手放したのだが、数年前、旅先の古書店で函の欠けた状態のものを見つけて買い求めた。水色のクロス装がなつかしかった。そして不思議なことに、しばらくして、自分の店のお客さんから「これ、中身ないんだけど、捨てるのも惜しくて」と遠慮がちに差し出されたのは、まさにあの『夏の花』の函だった。》

旅先の古書店は善行堂だそうである。

「幼年画」は、原爆以前に書かれた初期の作品集で、これまで全集にしか収められていなかった。タイトルのとおり、おそらくは誰しもが持っていたはずの「幼き日」の記憶が、春から夏にかけての瀬戸内海のやわらかな風土とともに、せつなく美しく描かれている。

《「幼年画」はこれが初の単行本化となる。拾遺作品として、「幼年画」のほぼすべての作品に登場する「雄二」が主人公の「潮干狩」を加えた。昭和一四年に発表されており、これらの作品とは同時期のものである。

ということで、美しくも幻想的な作品群である。どう美しく幻想的なのかは、読んで頂く他ないが、明治末から大正初期頃の風景が、人々が、泣き虫の雄二が、色も鮮やか、眼前に浮かび上がってくる。闇の深さや土の匂いまで。映画的であることと関連してシュルレアリスムからの影響も考えていいかもしれない。珠玉という言葉がこれ以上似合う作品群はそうはないだろう。この夏、イチオシ!

by sumus2013 | 2015-08-07 21:07 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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