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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


蠶桑

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徐光啓『農政全書』より巻之三十二「蠶桑」。なぜかパリから届いたもの。徐光啓(1562-1633)は明代末の暦数学者でキリスト教徒だった異色の人物。


本書巻頭には「上海太原氏重刊」としてあり、この重刊の最初は道光二十三年(一八四三)のようだが、本書がそれと同じ版だとは考えない。もっと近年の重刷であろう。本文はともかく、桑の栽培から養蚕の手順を説明している挿絵がなかなか楽しいものだ。あまり数を掲げても煩わしいと思いつつ、七夕も近いことだし(旧暦だとまだだいぶ先ではあるが)最終工程である織女のあたりをピックアップしてみる。

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緯車(糸繰り車)。緯車方言曰趙魏之間謂之歴鹿車 東齊海岱之間謂之道執……


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織機。これは次の頁(一丁を広げると連続した一枚の絵になっている)につづく巨大な織である。次頁ではもうひとり別の女性が織機の上部に坐って仕事をしている。杼(ひ)を左手に持つ姿は変らない。

織り上げた布を柔らかくするのが「きぬた」。その図も出ている。

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砧杵(ちんしょ)。説明にいわく《古之女子対立各執一杵上下搗練于砧其丁冬之声互相応答 今易作臥杵対坐搗之又便且速易成帛也》。古くは杵を上下にして搗いていたが、今では向かい合って杵を寝かせて打つ。上図は後者。古いスタイルは下図。有名な「搗練図巻」より。

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白居易の「聞夜砧」は夫のために夜なべをして砧を打つ妻をうたっている。

 誰家思婦秋擣帛
 月苦風凄砧杵悲
 八月九月正長夜
 千聲萬聲無了時
 應到天明頭盡白
 一聲添得一莖絲

by sumus2013 | 2015-06-29 20:23 | 古書日録 | Comments(0)
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