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縮刷金色夜叉![]() 尾崎徳太郎『縮刷金色夜叉』(春陽堂、一九一八年一〇月一三日二十五版)。某氏より頂戴した。深謝。装幀は斎藤松洲。挿絵が八点、中沢弘光、池田蕉園、鰭崎英朋、鏑木清方、山中古洞、井川洗涯、橋口五葉、名取春仙という豪勢な顔ぶれ。木版彫刻者が大倉半兵衛で木版印刷者が松村菊次郎。校正者として春陽堂の本多嘯月の名がある。 内田魯庵『思い出す人々』(岩波文庫、一九九四年)によれば、胃癌で死を宣告されていた尾崎紅葉がぶらりと日本橋の丸善へ現れたことがあった。店員に紅葉の来店を知らされた魯庵は出迎えて応接室で向かい合った。癌を宣告された顛末を紅葉は語った。 《やがて間をおいて、「何を買いに来た!」と訊くと、「『ブリタニカ』を予約に来たんだが、品物がないッていうから『センチュリー』にした」といった。(『ブリタニカ』と『センチュリー』とを同時に提供していた時で、丁度『ブリタニカ』が品切れになっていた時であった。) 「『センチュリー』を買ってどうする?」と瀕死の病人が高価な辞書を買ってどうする気かと不思議でならんので、「それどころじゃあるまい、」というと、 「そういえばそうだが、評判は予(かね)て聞いてるから、どんなものだか冥土の土産に見て置きたいと思ってネ。まだ一と月や二タ月は大丈夫生きているから、ユックリ見ていかれる。」》 だったら『ブリタニカ』を待ったらどうだと魯庵は勧めるが、頭のハッキリしているうちに自分の物として見ておきたいと紅葉は答える。 《「そこは大悟徹底している。生延びようとは決して思わんが、欲しいと思うものは頭のハッキリしている中(うち)に自分の物として、一日でも長く見て置かないと執念が残る。字引に執念が残ってお化けに出るなんぞは男が廃らアナ!」と力のない声で呵々(からから)と笑いながら、「『センチュリー』なら直ぐ届けられるだろう。」 「むむ、『センチュリー』なら直ぐ届ける、」というと、漸く安心したような顔をして、「これで先(ま)ア冥土へ好い土産が出来た、」と笑いながら丁度店員が応接室の外を通ったのを呼留めて申込書と共に百何円の現金を切れるよう紙幣(さつ)で奇麗に支払った。》 およそ三月後に紅葉の訃が伝わった。
by sumus2013
| 2015-05-12 20:22
| 古書日録
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Comments(2)
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