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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


古書会館de古本まつり

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あいにくの雨ながら京都古書会館三階で初めて開催される古本まつりへ参戦。旧古書会館は町家で風情があった。今は八百一のビルになっている一角だと思う…たぶん。雨のせいもあってか、十時開場前に行列というようなことはなかった。入口で扉野氏とバッタリ。お寺へ出勤前にふと思い出して駆けつけたとのこと。これはラッキーだった。

会場はそんなに広くはないが、本の質量ともに十分楽しませてもらった。ただ徐々に人が増えて通路が混み合ってきたのにはやや閉口。それでもひとわたりは全店の棚を見る事ができた。ヨゾラ舎さんにも会った。買えるものがないとこぼしながら音楽関係の資料などをあれこれ真剣に吟味しておられた。けんじ堂さんには和田誠発見のお手伝いを。

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小生もなかなか買えないでいたところ、ふらりと現れた扉野氏が「これ、いりますか?」と差し出してくれたのが『新劇』二巻六号(新劇社、一九二四年六月一日)。
「え? どうして」
「波屋書房の広告がありますよ」
「もらう、もらう!」

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広告だけでなく発売元も波屋書房で大阪支社の住所も波屋書房内。よほど関係が深かったのだろう。編集長の寺南清一については不詳。本誌に「ハミルトンの戯曲論」を寄稿している金杉恒弥もこの雑誌には創刊号からかかわっていた。あとがきの一部を執筆している。金杉は後に慈恵高校の初代校長(戦中は慈恵医大の予科長だったようだ)になる英文学者。

大正十三年六月というと波屋書房が『辻馬車』(十四年三月創刊)の発行所となる前夜に当る。大正八年頃に書店を開いて五年ほど、店主の宇崎祥二はそろそろ出版に本気を示し始めたと言えるだろう。『新劇』についてはまったくこれまで視野に入っていなかったので貴重な発見となった。なにしろ200円だったし(目下「日本の古本屋」には創刊号のみ二点出品。値段は見てのお楽しみ!)。国会とカナブンにはなく日本近代文学館に以下の四冊が所蔵されている。

一巻一号 大正十二年十一月
一巻二号 大正十二年十二月
二巻一号 大正十三年一月
二巻二号 大正十三年二月

ブッダ・ハンド、ありがたや、ありがたや。

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レジ脇で人を待っていると、中国人かと思われる若い女性(入場のときにちょうど小生の前を入って行った)がドーンと帳場に本を積み上げていた。二十冊くらいか。それも『源氏物語の研究』といった国文系の堅い分厚い本ばかり、加えて『一古書肆の思い出』も見えた。本格派である。レジ番をしていた何人かの古参店主たちが嬉しそうに「え、これ持って帰るの、根性あるねえ、送った方がいいよ」と言うのもなんのそのリュックに詰めるのだと主張。店主たちは雨なのでレジ袋に入れてからリュックに入れた方がいいなどと送り出しにおおわらわ。店主じゃなくてもあの買いっぷりには感心した。


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会場で夜の遊歩者氏と落ち合って同氏宅へおじゃました。パリやミュンヘンで最近入手されたウィリー・ロニス(WILLY RONIS, 1910-2009)のヘリオグラビュール写真集などを拝見。戦後のパリを撮りつづけた写真家。ウクライナはオデッサ出身のユダヤ人移民の息子。ちょっと甘ったるい感じもするが、写真はうまい。下はヘリオ版ではなくイタリア語版のロニス写真集より。

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by sumus2013 | 2015-01-30 21:19 | 古書日録 | Comments(0)
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