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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


小説というのはやはり面白いです

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『月の輪書林古書目録十七』からまず注文したのがこちら。青山光二宛杉山平一葉書。すでに書いたように杉山さんの葉書や手紙はかなりの数出品されていた。全部注文しようかな、と一瞬考えたが、思い止まり、絵入りと説明のあったこの一枚にした。

《残暑御見舞申し上げます。
先日は「われらが風狂の師」二巻お送り頂きありがとう存じました。三好達治さんがむかし文学青年のなりそこないといわれたのに対し「羞恥同情運命」の著者に失礼だと反撥の気持をもつたことがありましたが、三好さんの意味が拝読してわかりますと共に、そのいたましい、かなしいまたうらやましいような土岐の在り方と、作者がその足取りをしつこくいちいち追いかけ検証して行く打ち込みへの迫力面白さ二重三重にぬりたくつて行くような描き方、そして随所に展開される人間論、(自己肯定という人間の性格の洞察)するどく(小型の土岐は周囲にいるものですから)嫌悪と愛情の情恋のいりまじった作者の息吹が充分伝わります。もちろん、事実 実名、への興味、一つの時代のドキュメントの興味もひきつけてはなしませんでした。先日瀬川君とあい一寸土井虎氏のはなしもきゝましたが、詩人のかなしさいちましさを思って暗然と痛快のまじつた気持です
 小説というのはやはり面白いです。書きたくなります。[消=持です]有難う存じました》

消印は以下の通り。青山の『われらが風狂の師』(新潮社)は一九八一年刊行なのでその感想である。

宝塚
56
8.20
12−18 

文末「気持です。」と終わるところ、はみ出した「持です」を消して最後の行に付け加えられた小説というのはやはり面白いです。書きたくなります。》が何ともいい。小説の力、とはこういうものだろう。そして杉山さんの小説への情熱というものも感じられる。あの傑作小説『わが敗走』(編集工房ノア、一九八九年)はひょっとしてわれらが風狂の師』によって触発されたのではないだろうか? そんなふうにも思えて来る文言ではある。




by sumus2013 | 2014-12-08 21:01 | 古書日録 | Comments(0)
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