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林哲夫の文画な日々2
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観楓紀行9

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明治二十九年十一月二十一日。晴天。朝食後、立売堀緒方病院へ行く。一時間半ほど待って手術に臨んだ。傍観者が中桐絢海を含めて七名いた。

《助手四名アリ手術室ハ法ノ如ク消毒シテ患婦ハ三十二三歳ノ左側卵巣嚢腫ナリ一両度(トロイカル)ニテ其内容ヲ漏セシコトアリト云フ正清君先ツ法ノ如ク臍部ヨリ恥骨ニ至ルマテノ腹壁ヲ切開シ嚢腫ヲ除去セシニ大人ノ頭大アリ抑モ此手術ハ君カ一百回以上ノ実験ニテ其神速ナルコト寔ニ驚クニ堪ヘタリ僅カニ十四分間ニテ手術ヲ終レリ助手ノ器械ヲ取扱フコトノ前后齟齬シテ七分時ヲ過費セリ倘シ此誤ナカリセハ手術ノ全時間ハ僅ニ七分時ニ過キサリシナリ但シ此手術ニ就テノ詳細ナルコトハ紀行ノ本旨ニアラサルヲ以テ予カ胸底ニ蔵シ茲ニ略ス

この他に開腹術を施した患者の後治療を見学。患者七十名ばかりの症状などについて緒方正清の丁寧な説明を聞いた。院主の惟準および院長の収二郎に面会して談話を交えた。帰り際に正清から堺にいる父の拙斎を訪ねてやってくれと頼まれたので阪堺鉄道に乗って堺市の南湫こと緒方拙斎を訪ねた。昨年、京都博覧会の帰路に面会する予定だったのが体調を崩して会えなかったのでやっと念願がかなった。拙斎は寒霞渓へぜひとも行って見たいと言う。来春、暖かくなった頃に惟準とともに訪問することを約束した。宿泊を勧められたが、明日は帰郷するために辞退。このとき観楓紀行を記念して漢詩一首を贈られた。それは跋として掲げる(後掲)。堺駅から乗車。

《住吉神社ノ公園ハ無数ノ老松参差トシテ所々ニ艸亭ヲ落シ風致又奇ナリ殊ニ彼ノ高燈籠ハ古風ヲ存シテ最モ雅致アリ西洋風煉瓦ノ燈台ニ勝ル萬々旅寓ニ帰リシハ黄昏ナリ高松ノ知人尾形松斎ノ来リ会スルニ逢フ茶話ヲナシテ寝ニ就ク》

(つづく)




by sumus2013 | 2014-11-21 21:00 | うどん県あれこれ | Comments(0)
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