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林哲夫の文画な日々2
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以西結書

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『旧新約聖書』(米国聖書協会、一九一四年一月八日)と『THE HOLY BIBLE』(AMERICAN BIBLE SOCIETY, 1877)。先日、ちょっとしたきっかけからエゼキエル書を読む機会があった。

バビロニアに占領されたイスラエルの民はバビロンへ捕虜として連行されるなどしてバラバラになる。エゼキエルもバビロンで補囚となっていた。結局これによってイスラエルは滅びてしまうが、エゼキエルはエホバの苦難を与える企みとしてこの離散を描き、悔い改めエホバに帰依することをエルサレムの民に伝えるべきメッセンジャーとなる。

第一章、ケバル河の畔で捕らえられているエゼキエルの前にエホバが登場する。《天ひらけて我神の異象を見たり》。この異象の描写がかなり超現実的で印象に残る。

《視よ烈しき風大なる雲および燃る火の団塊北より出きたる又雲の周囲に輝光あり其中より火の中より熱たる金属のごときもの出づ 其火の中に四箇の生物にて成る一箇の形あり其状は是のごとし則ち人の象あり 各四の面あり各四の翼あり その足は直なる足その足の跖は仔牛の足の跖のごとくして磨ける銅のごとくに光れり その生物の四方い翼の下に人の手ありこの四箇の物皆面と翼あり その面とその翼はたがひに相つらなれりその往くときに回転ずして各その面の向ふところに行く

描写はまだまだ続くが、いったいどんな形が現れたのか読めば読むほど分らなくなる。ということでラファエロが描いた「エゼキエルの幻視」を引用しておこう。原文そのままではないにしても分りやすい形に整理されている。

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おや? と思ったのは第三章。

《彼また我に言たまひけるは人の子よ汝獲るところの者を食へ此の巻物を食ひ往てイスラエルの家に告よ 是に於て我口をひらけばその巻物を我に食はしめて 我にいひ給ひけるは人の子よわが汝にあたふる此巻物をもて腹をやしなへ膓(はらわた)にみたせよと我すなはち之をくらふに其わが口に甘きこと蜜のごとくなりき 彼また我にいひたまひけるは人の子よイスラエルの家にゆきて吾言を之につげよ》

巻物を食らうと言えば、有名なのはヨハネ黙示録第十章だろう。

《われ御使のもとに往きて小き巻物を我に与へんことを請ひたれば、彼いふ『これを取りて食ひ尽せ、さらば汝の腹苦くならん、然れど其の口には蜜のごとく甘からん』われ御使の手より小き巻物をとりて食ひ尽したれば、口には蜜のごとく甘かりしが、食ひし後わが腹は苦くなれり。

有名と言ったのはアルブレヒト・デューラーの版画にこの場面を描いたものがあるからだ。

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大正三年訳では「巻物」だがデューラーは綴じた書物として描いている。上記の英語版を当たってみるとエゼキエル書の方は「roll」で黙示録(Revelation)の方は「the little book」としてある。ヴルガータ聖書(Latin Vulgate)はどうなっているのか調べてみると以下の通り。まずエゼキエル。

[1] Et dixit ad me: Fili hominis, quodcumque inveneris, comede: comede volumen istud, et vadens loquere ad filios Israel. [2] Et aperui os meum, et cibavit me volumine illo: [3] et dixit ad me: Fili hominis, venter tuus comedet, et viscera tua complebuntur volumine isto quod ego do tibi. Et comedi illud, et factum est in ore meo sicut mel dulce.

そして黙示録。

[10] Et accepi librum de manu angeli, et devoravi illum: et erat in ore meo tamquam mel dulce, et cum devorassem eum, amaricatus est venter meus:

「volumen」は「巻物」、そして「librum」はデューラーの描くような書物とみていいだろう。そうすると大正三年版の「小き巻物」は誤訳かもしれないということになる。ささいなことながら本を食べるという描写なので気になった。

と書いたのではあるが、読者の方よりご注意いただいた。ギリシャ語訳で黙示録の該当箇所は「biblaridion」となっており「a little book」の他に「a little papyrus roll」という意味もある。またカトリック系の翻訳では「小さな巻物」とされている。あいや、たしかに黙示録の成立した時代(紀元後一世紀?)にはおそらく冊子本はなかったはずだから(現存最古は四世紀に作られたとされる、カイロのコプト博物館蔵の聖書『詩篇』)、書記者の意図するところは巻物だったのだろう。仮に冊子本があったとしても分厚い板表紙の造作だったろうから、とうてい飲込めるはずもない(常識的にです、神秘的に考えればなんでもないでしょうが)。浅見を露呈してしまう早とちりだった。もちろん誤訳と書いたのは誤り。訂正しておきます。とすれば「librum」(liber)も冊子本ではなくて植物繊維(パピルス)でできた巻物の意味であろうか。逆に大正版の訳者(たち)が「book」を巻物と訳していることにあらためて感心する。では、デューラーは? 彼の時代には冊子本だと認識されていたのであろうか。単なるデューラーの勘違いとも考えにくい。

それから御教示によればエルサレム聖書では黙示録のこのエピソードはエゼキエル書を念頭に置いているとされているようだ。この点については話の構造および表現の変容の具合からみて大いに頷ける。

同書より「新約聖書時代のパレスチナ」地図。海岸線のいちばん下のところにガザとある。

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スキャナーが壊れたと昨日書いた。今日、新しいスキャナーが届いたのでこの地図も新品でスキャンした。昨日のうちに妻があれこれ品定めして注文してくれた。思い切ってA3がスキャンできるものを買おうかとも考えたのだが、A4と比べてかなり高価だ。結局、A3ならコンビニでスキャンする方法もあるということで納得してA4スキャナーの標準機(EPSON GTS-640)を購入。本日到着したというわけ。



by sumus2013 | 2014-08-07 20:49 | 古書日録 | Comments(2)
Commented at 2014-08-09 13:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sumus2013 at 2014-08-09 21:00
御教示に深謝です。
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