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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


北園克衛 記号説

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北園克衛『記号説 1924-1941』(金澤一志編、思潮社、二〇一四年六月六日)。

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留守中に金澤一志編による北園克衛の作品選集が二冊届いていた。小生も北園克衛の装幀が好きなので目に付けばできるだけ求めるようにはしているが、北園の詩集となると貧生にはよほどの幸運でもない限り手に入らないため架蔵していない。全写真集も欲しいなあとか、金澤氏の『カバンのなかの月夜 北園克衛の造型詩』(国書刊行会、二〇〇二年)もいいなとか、これらも涎をたらしているだけでまだ求めてはいない。

ただし『SD』431(二〇〇〇年八月一日、鹿島出版会)と『異色の芸術家兄弟橋本平八と北園克衛』(三重県立美術館・世田谷美術館、二〇一〇年)図録くらいは持っている。これらは装幀家・北園克衛を知るにはたいへん便利なのだが、詩作品も含めた全体像となると、まったく何も分らないに等しい。

その欠点を補ったのが今回の二冊本であろう。詩人としての北園の仕事と造型作家としての仕事を通覧しつつ、その精髄に触れる、そういった北園を知り尽くした編者ならではの練り抜かれた選集のように思う。

詩…文字の連なり…文字…記号…絵…写真…立体…それらは別々の仕事ではなく、その境界が不分明な北園を包む成層圏のようなあり方で北園のポエジィを表象している。それが手に取るように分る編輯である。

それぞれの巻に金澤氏の解説文が掲載された栞が挟まれている。

《また「記号説」の発展形であり、早すぎたヴィジュアル・ポエトリーの達成として知られる「図形説」が絵画的な線ではなく鉛の活字に託されていることは、この詩人の作品をグラフィックとして眺めるときに欠かせない特異なフェティシズムを示すものだろう。北園克衛にとって詩の正体とは、まず印刷された紙でなければならなかった。》(金澤一志「前衛の憂鬱」より

この解説、ある意味、あまりにも的確で、読まない方がいいかもしれないとさえ思える鋭い内容だ。

by sumus2013 | 2014-07-03 22:08 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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