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林哲夫の文画な日々2
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101歳の阿部展也

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新潟滞在中、新潟市美術館で「101歳の阿部展也」という回顧展を見た。阿部展也(1913-71)は新潟出身の前衛画家。小生が学生の頃は幾何的な図形を派手な色の組み合わせで描いた作品をしばしば目にしたが、この会場を一回りすると、さまざまな様式を渡り歩いた(?)ことがよく分った。

なかでも戦後間もない頃に担当した火野葦平の連載小説「ただいま零匹」の挿絵には驚かされた。ベタな写実描写で、しかも達者だし、まったく手を抜いていない。本気で取り組んでいることが伝わってくる力作だった。

それぞれの時代のそれぞれの作風に見所があったが、いちばん感心したのは上の「作品」(1950)と名付けられた作品。シュルレアリスムといちおう分類しておいていいのかもしれないけれども、なんとも形容し難い不可思議な世界を展開している。


101歳の阿部展也_f0307792_20581748.jpg


会場の入口には瀧口修造の最初の詩集、そして阿部芳文(展也)が挿絵を描いた『妖精の距離』(春鳥会、一九三七年)が展示されていた。なんと各頁を解体(!)し、それぞれ額装して飾り付けている。原画は戦災で失われたと聞いたが、さて、これはどんなものか……。そこまでして額装展示する意味があるかどうか。詩画集は詩画集としての形が大事なのではないだろうか。今時なのだから、本文を撮影してモニターで見せるという手もあるし。


101歳の阿部展也_f0307792_20581581.jpg


『瀧口修造とその周辺』(国立国際美術館、一九九八年)図録に掲載されている『妖精の距離』。瀧口はこう書いている。

《私の内部には、永いあひだ、卵のやうに絶えず温められてゐた妙な思想があつた。さう、それは全く思想といふより、ほかに言ひやうのない、だが卵のよ[ママ]うなものであつた。ただ貝殻の中に小石が形づくられてしまつたやうに、いま一冊の詩画集『妖精の距離』が、阿部芳文君とのあひだに作られたことはたのしい。》(『みづゑ』一九三七年一一月号)

阿部と瀧口の関係については下記論考が詳しい。

戦前の阿部展也(芳文)の活動 瀧口修造との関係を中心に
http://banbi.pref.niigata.lg.jp/wp-content/uploads/SKMBT_C36013111914410.pdf

ただ、どうしたわけか瀧口の自筆年譜では『妖精の距離』については一言も触れられていない。


by sumus2013 | 2014-03-30 21:27 | もよおしいろいろ | Comments(0)
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