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これやこの ふところにアルミの銭のかるき世や 東門居[永井龍男] 前座なりけりふところ手して 甘亭[久保田万太郎] 飛行機の幾編隊ぞ冬空に 澁亭[渋沢秀雄] 上海所見[昭和十九年] 焼けあとのまだそのまゝに師走かな 中山陵にて 警衛士凍てたる蝶のうごきけり 横須賀 水兵の連れだち来るや雪解風 三月四日、非常措置令出づ、たまたま田中青沙と山口巴にて小酌 ぜいたくは今夜かぎりの春炬燵 耕一応召 親一人子一人蛍光りけり 十一月一日以降、来襲繁し 国あげてたゝかふ冬に入りにけり 柊の花や空襲警報下 銀供出令出づ かんざしの目方はかるや年の暮 空襲下、昭和二十年来る 鬼の来ぬ間の羽子の音きこえけり 五月二十四日早暁、空襲、わが家焼亡 みじか夜の劫火の末にあけにけり 旅中[七月末から八月にかけ日本文学報国会から派遣され折口信夫と二人で名古屋、静岡あたりを視察旅行] トラックにのり貨車にのり日の盛 歌強ひらるゝ扇破れたり 兵隊のゆくさきざきに屯して 焚火ふみけす秋の早立チ 終戦 何もかもあつけらかんと西日中 八月二十日、灯火管制解除 涼しき灯すゞしけれども哀しき灯 田園調布 停車場の灯のあかるくて秋近し いまはむかし 十三夜はやくも枯るゝ草のあり この句が掉尾。次のような註が施されている。 《昭和通りから東中野まで行くのに、三丁ほど、焼けあとを通らなければならないのだが、その道に、ことしは露草の花がやたらに咲いた。いかにもその無心な感じが愉しかつた。が、間もなくその瑠璃いろの夢も消えて、またもとの、寂しい、あいそつけのない、あたじけないけしきになつた。》 もちろんここに引用したような戦争俳句ばかりで占められているわけではなく、一見のんきな俳句の方が多数なのだが、それでもやはりどこか戦時の気分をたたえているような気がするのは深読みか。以下いずれも昭和二十年春の作。 夕空にたかだか映ゆる櫻かな 木蓮のみえて隣のとほきかな 落椿足のふみどのなかりけり 花曇かるく一ぜん食べにけり 風立ちてくるわりなさや春の暮
by sumus2013
| 2014-02-07 21:08
| 古書日録
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Comments(2)
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