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昭和モダン 絵画と文学 1926-1936「昭和モダン 絵画と文学 1926-1936」展を兵庫県立美術館で見た。ちらしは持っていた。しかしあまり惹かれず、パスするつもりだったが、ある方より電話をいただいて「ぜひ見ておいてほうがいい」と勧められたので予定を変更して腰をあげた。 新しい(といってももうかなりな年数になりますが)兵庫県美はわが家からの交通が不便で、よほどでないと出かける気になれない。阪急で梅田、そこで阪神に乗り換え(JRでもいいが)、阪神岩屋で下車。さらに、けっこう歩く。おそらくドア・ツー・ドアで二時間近くかかる。上の写真は岩屋駅から美術館へ向かう途中の陸橋にて。 しかし、この展覧会は見ておいてよかった。プロレタリア文学およびモダニズム系の珍しい本が一堂に見られる機会はそうそうはないと思う。佐野繁次郎装幀の『機械』その他横光利一本も勢揃いの感あり。『機械』の表紙原画(これは佐野展のときにも出ていたが)はなかなかのもの。ボロボロと壊れそうで印刷された表紙画と同じとは思えないほど。それがまたいい。 図録を買おうかどうしようか、迷ったのだが、目下少々手元不如意につき、資料としては貴重だと思いながら見送った。その代わり、気に入った装幀の本をスケッチして目に焼き付けておいた。先日読んだばかりだったせいか黒島伝治の前で足が止まる。この時期のプロレタリ本はロシアアヴァンギャルドの影響も受けているには違いなくても、その上に日本風の味付けがなされており、一種独特の斬新なデザインになっていると思う。 花森安治の少年から青年時代に最も華々しかったのが、これらの意匠なのかと思うと「なるほどな」とうなずけるところは大いにある(津野氏もそういうコンテキストで花森デザインの生成を解読しようとしておられる)。 絵もプロレタリア美術の代表作が並んでおり、これまであまり目にしなかった作品も少なくなかった。小野忠重の木版画など記憶になかった(洲之内徹が小野を取り上げる理由が分ったような気がした)。絵画そのものとしてはモダニズムというかシュルレアリスム傾向の作品の方に見るべきものは多い。古賀春江、東郷青児、三岸好太郎はもちろん、阿部金剛や中原實にも「ほほう!」と声を上げてしまう作品が並んでいた。 第一部がプロレタリア、第二部がモダニズム、そして第三部が文芸復興(反動的日本回帰)という大きな枠で展示を分けているのだが、第三部は楽しめなかった。だんだん力が抜けてしまう感じで惜しいような気がした。ただ日本の伝統回帰においてもモダニズムの波をかぶった刻印のようなものが装幀や絵画の作風にはっきり見えたのは収穫だ。 今からここに展示されている本を古書で買おうとしたら、ひと財産必要だろう。しかし、そういうことは別にしても、これらの本の姿を覚えておくのは決して無駄にはならないと思う。若い古本者たちにおすすめ。そして「ぜひ見るよう」すすめて下さった方に深謝です。 昭和モダン 絵画と文学 1926-1936 http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1311/index.html
by sumus2013
| 2013-12-03 21:26
| もよおしいろいろ
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Comments(4)
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