林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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カテゴリ:もよおしいろいろ( 107 )

無花果珍寶EACH萼秘寶展観

新春吉例、第二回
無花果珍寶EACH萼秘寶展観
いちじくちんぽういーちがくひほうてんくわん

場所:小大丸画廊(小大丸ビル3階)
  大阪市中央区心斎橋筋二丁目二ノ二十二 電話〇六・六二一一・三〇二三

日時:平成29年1月13日(金)~15日(日)
時間:午後12時~6時(最終日4時30分)


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昨夕は心斎橋へこの「イチガク展」の搬入に出かけた。大坂は久し振り。心斎橋の大丸はほとんど取り壊されていた。橋爪先生の発案で第二回目の開催。桜時のイチジク会とはまた違った新春イチガク会(数点の軸物もあり)。美術研究者や美術館関係の方々が自らのコレクションを出品しているだけあってまさに珍宝揃い。三日間だけの展示だが、心斎橋界隈へお出かけの際にはちょっとのぞいてみる価値ありです(小生も二点出しております)。

四点目の写真、壁の作品、右は下郷羊雄、中は小牧源太郎、左は逆柱いみり。なかなかでしょ。

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by sumus2013 | 2017-01-13 08:31 | もよおしいろいろ | Comments(0)

2016年度立命館明治大正文化研究会

立命館大学の衣笠キャンパス、末川記念会館にて行われた内田明氏の研究報告を拝聴した。「近代日本の活字サイズ――神話的・「伝統的」・歴史的」。梗概は以下のような感じ(一頁目のみです)。じつにエキサイティングな内容だった。活字の書体のみならずそのサイズをここまで厳密に追求されておられることにまず驚かされた。これは小生が門外漢だということもあるのだが、専門家でもそこまでやるかというくらいの掘り下げ方である。新五号や新七号活字などJIS規格で無視されているサイズの存在も初耳で、この報告を耳にしたのとしていないのとでは、これから明治大正あたりの文献を眺めるときの心構えが違って来る、というくらいの内容であった。

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配布されたプリントも有り難い。なかで一図だけ紹介する。明治〜大正にかけての『東京朝日新聞』における本文活字の変遷。明治四十一年に旧五号(10.5ポ)だったのが十年余りの間にだんだん小さくなって7.875ポイントになるというのが凄い。またポイント活字というのも第一次世界大戦にともなう用紙の高騰もあり、旧号活字よりも小さいポイント活字を採用しはじめたのではないか(同じ紙面により多くの情報を詰め込むため)という話だった。文字の大きさひとつ取ってもさまざまな事情が(たいていはコストか技術の問題だが)その裏にはひそんでいるものである。

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by sumus2013 | 2016-12-22 11:36 | もよおしいろいろ | Comments(2)

ツルニャンスキー

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体調いまいちだったのだが(風邪が治り切らず)山崎佳代子さんのお話を聞きたかったので「第305回日文研フォーラム セルビア・アヴァンギャルド詩と『日本の古歌』」(於:ハートピア京都)へ。コメンテーターは沼野充義、細川周平。「百年のわたくし」で山崎さんのことを少し紹介したが、会場でもらったハンドアウトを見ると詩人でありベオグラード大学教授、日文研外国人研究員とのこと。

前半は山崎さんの講義。セルビアの地勢や大雑把な歴史、アヴァンギャルドやジャポニズムの説明におよんだので一時間ではとうてい語り切れない濃い内容であった。彼女の論点を絞ると、セルビアの詩人で「スマトライズム」を唱えたミロス・ツルニャンスキー(1893-1977)が日本の古典的な詩歌から受けた影響、とくに桜の花のはかなさ(無常観)からの影響の大きさということである。それらはセルビアの音楽にもインスピレーションを与え、また俳句は現代においても実作として受け継がれ作り続けられている(英語やフランス語の俳句も盛んだが、セルビアでも!)。スマトライズムというのは要するに彼らが全く知らない土地の名前(スマトラ)をつけた自由詩の主張のようだ。

ツルニャンスキーは一九二〇年のパリ滞在において東洋主義の洗礼を受けた。その刺戟からアンソロジー『中国の抒情詩集』(一九二三)および同じく『日本の古歌』(一九二八)をセルビア語に翻訳出版した。山崎さんの話では中国の詩集よりも日本の詩歌の方がセルビアでは人気が高く(アンソロジーの構成に花と悲恋をテーマとしてストーリー性をもたせたためだろうとのこと)、歌曲の歌詞としても採用されているという。

セルビアでは果樹の花というのは愛でるものではなかった。桜といえばさくらんぼであってそれは赤い実のイメージが第一に浮かぶ。これはロシアでも同じと沼野氏が後半の鼎談のときに補足しておられた。チェホフの「桜の園」はじつは「さくらんぼう畑」という訳の方が近いかもしれないと。ツルニャンスキーはその果樹の花である桜花を好んでうたう日本の詩歌に接することによって自分自身も桜をうたうことになる(ただし満開の花だけ。散りはてるさまにまで彼らの意識は及んではいないとも)。

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一例としてツルニャンスキーの訳した俳句が配布されたプリントに引用されているので孫引きしておく。


 蝶とらえんと
 ああ、かけていく、はるかに
 はるかに


さてこの元歌は……千代女とされる「蜻蛉つり今日はどこまで行ったやら」だそうだ! トンボが蝶に変ってしまっている。山崎さんはツルニャンスキーが参照した英訳や仏訳がどうなっているか確認したいとおっしゃっておられたが、あるいは故意にチョウに変えたのかもしれない。ついでにツルニャンスキーの作品「スマトラ」も引き写しておく。


   スマトラ

 今は、僕らは やすらぎ、軽やかで 優しい
 想いうかべよう、ウラル山脈の雪のつもった頂の
 なんと静かなこと

 あの夕暮れに失った 青ざめた顔が
 僕らを悲しくさせるとき
 きっと どこかで 小川が 彼のかわりに
 茜色して 流れているはず

 ひとつまたひとつ愛は、今朝、異郷にて
 果てしなく 穏やかな青い海原に
 しっかり 僕らの魂をつつみこむ
 海では サンゴの実が まるで 故郷の
 桜の実のように 赤く色づく
 
 僕らは夜に眼をさまそう、微笑みかける、やさしく
 張りつめた弓の月に
 そして愛撫しよう 遥かな丘を
 凍りついた森を、そっと、この手で
                     ("Sumatra", 1920)



後半の鼎談もあっという間に終わってしまって、もうすこしいろいろ聞いていたかった。

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by sumus2013 | 2016-11-15 20:44 | もよおしいろいろ | Comments(0)

小寺鳩甫と酒井七馬

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京都国際マンガミュージアムで「小寺九甫と酒井七馬 『大阪パック』から「新寶島」まで」展を見て、トークイベント「酒井七馬というマンガ家が大阪にいた。」を聴く。展示は少々見にくい感のなきにしもあらずながら、内容は素晴らしい。漫画好き(とくに大阪漫画)、古本好きなら必見である(サイトでは十一月八日までとなっているが、十三日まで会期延長するとか)。

トークイベントは中野晴行氏と柳たかを氏が登壇。柳氏は西上ハルオが中心になって大阪の若い漫画好きを集めて刊行した『ジュンマンガ』に参加した経緯から、酒井七馬との出会いを語った。『ジュンマンガ』(文進堂、一九六九年)は酒井七馬の寄稿をあおいで刊行される予定だったが、酒井の約束した漫画は結局仕上がらず、そのせいもあって、かろうじて創刊号を出しただけで終わってしまった(酒井は創刊の言葉だけ寄稿)。掲載されている幾つもの漫画論は西上がペンネームですべて執筆したという。それらの若者たち「ジュンマンガサークル」のメンバーは奈良のドリームランド(なつかしい! 小学生のときに訪れた記憶がある)や大阪万博の会場で似顔絵などのイベントを開催したのだが、その後自然解散してしまったようである。

途中で三邑会(さんゆうかい)の女性の方による紙芝居上演があった。酒井七馬(さかいしちま、ペンネーム:佐久良五郎)作「少年ローンレンジャー」、小寺九甫(こてらきゅうほ、ペンネーム:熱田十茶=あったとさ)作「孫悟空」、そして柳たかを作「THE WAY オズの魔法使いより」。それぞれ第一巻のみ。だいたい一巻十枚で十巻、十五巻という構成になっているそうだ。「この続きはまたあした!」と言われると、ええ〜と会場から失望の声が。かなり前の作品だろうと思うが、絵の保存も良く、じゅうぶん楽しめる内容だった(むろん口上があってこそ)。

中野氏には『関西の出版100』でお世話になったので終了後にご挨拶(直接お会いするのは初めて)。京都国際マンガミュージアムはその名の通り外国人の来場者でごったがえしていた。とくに売店の付近でうろうろしているのはほとんど外国の人たち。カバンがぶつかって思わず「パードン」と言ってしまった(!)。日本のマンガ力・アニメ力をあらためて実感させられた思い。




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by sumus2013 | 2016-10-23 19:57 | もよおしいろいろ | Comments(0)

百年のわたくし

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昨夕は徳正寺で「百年のわたくし」と題された朗読会に参加した。出演は、ぱくきょんみ、扉野良人、山崎佳代子、季村敏夫、藤原安紀子、荒木みどり+吉田省念、そして『きりん』の詩を扉野良人と宮田あずみが読み、「太陽のこども」と題して扉野と山崎佳代子の対談があった。(上の写真のリーフレットはメリーゴーランド京都で販売されている)

ベオグラードに住んでおられる山崎さんとは、偶然にも二月ほど前にあるところで一緒にお酒を飲んでいた。とは言っても飲んでしゃべっただけ、というか主に山崎さんがセルビアについて滔々と語るのに耳を傾けていただけなのだが、そのときはお名前も存じ上げなかった。たまたまテーブルをはさんで目の前に座った女性だった。しかしながら、セルビアで戦禍を経験したということを別にしても只者ではない雰囲気を発しておらられた。昨夕のお話ではひさびさに半年という長期間、日本に滞在して新鮮な日々を過ごしておられるとか。先日のバウルの日本女性といい「わたしは女性しか信じない」と誰かが宣言していたが、まさに小生もそう思う。

『ベオグラード日誌』 山崎佳代子


会場の本堂は五十人ほどの熱心な来場者で満たされていた。見知った顔も何人か。当たり前ながら朗読は印刷された文字を読むのとはまったく違った印象だった。さすがに場数を踏んだ方々ばかりでいずれも聞き惚れた。若住職だけ、よくつっかえていた、もっと練習しときなはれ。

それはいいとして、会場では出演者に関わる新刊書の他に、古書の販売も行われていてここにいい本があった。どっさり抱えた方も。こちらはこれだけ『机』第八巻第九号(一九五七年九月一日発行)。表紙デザインは北園克衛。「机」の文字は伊藤憲治。

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特集はパイプ。あまり興味ないなと思いつつページを繰っていると「洋書短信」に「リットレのフランス語辞典」の紹介が出ていた。エミール・リットレ(1801-1881)のフランス語辞典の改版がポーヴェール社とエディシオンス・デュ・カップ社の二社同時に行われているという紹介である。初版はアシェット社から一八六三〜七二年にかけて四巻本として刊行されたもの。


《ポーヴェール社版は全七巻で予約価一万九千フラン。既刊三巻、今年十二月中に全巻完結する。次のように広告している。「リットレが三十年の生涯を捧げたこのフランス語辞典の改版を企てたものは今までにない。また恐らく今後これと匹敵する辞書を作ろうと思ってもできないだろう。》

《われわれは小説のようにリットレを読む。リットレはフランス語の小説だ。しかしこの十年来リットレは本屋になくなった。古本だと二万五千フラン位投じなければならない。しかも再版の声をきかなかった。百トンの鉛、百五十トンの紙、布二十キロメートル、七千五百万の活字がいるのだ。われわれは断行した。単なる再版でなく旧版よりいいものを作ろうと思った。》

《六ケ月間に一万五千人の予約者が出来た。成功は模倣を招く。類似品が出たがわれわれとは関係がない。完全に原典と符合するリットレはわれわれの新版だけだ。リットレとは名のみの修正され一変された贋物の再版リットレに注意されたい。》

ポヴェールがリットレを完結したのは一九五九年なのでここに言う《今年十二月中に全巻完結する》は実現しなかった。また《エディシオンス・デュ・カップ》とあるのはエディション・デュ・カプ(Éditions du Cap)でこれはフランス・ブッククラブ(Club français du livre)の別会社。一九五六年から五八年にかけてリットレの四巻本を刊行している。

この後、ガリマール/アシェット社からも再刊され、他にも何種類かのヴァージョンが出ている。今世紀になってからもル・フィガロ社が出している。読める辞書というだけあって人気は衰えないようだ。ただし現在ではインターネットで簡単に参照できる。むろんbnf(フランス国立図書館)では元版の画像公開もなされている。

Dictionnaire de la langue française, par É. Littré

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by sumus2013 | 2016-10-16 21:51 | もよおしいろいろ | Comments(0)

第29回下鴨納涼古本まつり

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午前中は暑さもまずまず。ざっと流した感じではやはり口笛文庫+サンコウあたりがいちばん混沌として、いかにも何かありそうな雰囲気だった。しかしあまり本が多すぎるのも落ち着かないもの。三つ四つのテントのぞいただけでもう昼になり、岡崎氏、生田氏、善行堂らと昼食へ。初日はパッとしないまま、一旦帰宅(途中一軒のぞいたが)。

午後六時半からのディラン・セカンドでの岡崎・山本トーク&ライブへ。木屋町通りで魚雷氏に会った。実家の三重から昼過ぎに着いて下鴨をのぞいてからやってきたそうだ。

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六時半にはほぼ満席、知った顔も多い。かなり遅れて扉野氏が、髭を生やしているので一瞬誰だかわからなかった。なつかしいフォークソングや歌謡曲を岡・山コンビと岡崎氏の弟さんで演奏。合間に古本話を。二時間。最後に抽選券によるプレゼントがあって終了。お疲れさん。

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by sumus2013 | 2016-08-11 16:29 | もよおしいろいろ | Comments(0)

宵々山

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昨日の宵々山、ある鉾町の知人宅で小宴があった。ついでにその近所の山鉾を見て回った。思えば、長らく山鉾見物などしていなかった、せっかく京都に居りながら。久しぶりで新鮮だったし、また、過ごしやすい夕べだった。

***

みずのわ社主による花森安治の資料撮影の様子が下記ブログにアップされている。

島根大学図書館ブログ



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by sumus2013 | 2016-07-16 22:03 | もよおしいろいろ | Comments(2)

山田稔、富士正晴展 II

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山田稔『富士さんとわたし 手紙をよむ』(編集工房ノア)より



◉新編・ある「オヤジとワタシ」の物語ーー山田稔、富士正晴展 II
平成28年7月30日〜11月30日 

《新編・ある「オヤジとワタシ」の物語IIは、山田稔初のフランス留学から富士正晴没後まで。ゆっくりお楽しみください。》

***

◉新編・ある「オヤジとワタシ」の物語ーー山田稔、富士正晴展 I
平成28年3月31日〜7月29日 富士正晴記念館

《富士正晴記念館には、山田稔から富士正晴への書簡194通、富士から山田への書簡169通(山田からの寄贈)、あわせて363通が所蔵されています。
 山田が、富士をオヤジと見立てて「ある「オヤジとワタシ」の物語」を執筆したのは、半世紀以上も前のこと。二人の書簡を軸に、今回、新たに「ある「オヤジとワタシ」の物語」を編んでみました。2回に分けての長期展示となります(IIは、7月30日〜11月30日)。お楽しみください。》

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by sumus2013 | 2016-07-12 20:24 | もよおしいろいろ | Comments(0)

盛林堂ミステリアス文庫三周年記念展

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6月4・5日の西荻茶散歩の盛林堂のイベント『盛林堂ミステリアス文庫 三周年記念展』にて、開催記念冊子『盛林堂の謎めいた本棚 書肆盛林堂出版三周年記念』を無料配布いたします。 刊行書籍目録、寄稿エッセイ、使用原画をまとめた86頁の冊子になります。


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by sumus2013 | 2016-06-03 21:09 | もよおしいろいろ | Comments(0)

金利生活者になるんだ

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アルテュウル・ランボオ『酔ひどれ船』(新城和一訳、白樺書房、一九四八年一月一〇日)。白樺書房の主は矢野文夫。長谷川利行の矢野文夫である。

2012-06-15 古本夜話209 金鈴社と矢野文夫訳『悪の華』

本日、エンゲルスガールで鈴木創士さんが「ランボー入門」と題するトークを行ったので拝聴した。そう広くない町家の長屋を店舗にしているのだが、ほぼ満員御礼の盛況だった。鈴木さんらしいランボー話、ドラッグ話、遊郭話で盛り上がった。

トークから雑談に移ったあたりで先日「述語制言語の日本文化」で取り上げたランボーの「Je est un autre.」について質問してみた。「全詩集では、たしかカッコつけたんじゃないかなあ」との返答。帰宅して該当箇所(p477)を見ると

《というのも「私」とは一個の他者であるからです。》

鈴木創士訳『ランボー全詩集』

となっていた。苦心のカギカッコである。これはうまい意訳だと思うが、これだと三人称が生きてこない。翻訳不可能なのだから仕方ないけれど何か方法はないか……ないか、やはり。

トークのなかでランボーが十歳前後に書いた作文を鈴木さんが朗読した。上記全詩集に収められている。これがなかなか名調子だった(小生はまだ読んでいなかった)。

《どうして、と僕は考えたものだった、ギリシア語やラテン語を学ぶのか? 僕にはわからない。結局そんなものは必要じゃない! 試験に合格することなど、僕にはどうだっていい… 合格することが何の役に立つのか、何の役にも立たないだろ? それでも合格しなければ職は得られないと人は言うのだけれど。僕は職なんかいらない、僕は金利生活者になるんだ。たとえ職がほしかったにしても、どうしてラテン語を学ぶのか、この言語を話す者なんか誰ひとりいないのに。時たま新聞でラテン語を見かけることがあるけるど、ありがたいことに、僕は新聞記者なんかにならない。》

《ギリシア語に移ろう… この汚らしい言語を喋るやつなんか誰ひとりいない、世界中にひとりも!… ああ! いまいましいったらありゃしない! くそっ、僕は金利生活者になるんだ。教室の長椅子の上でズボンをすり減らすのはそんなに気持ちのいいことじゃない… 糞ったれだ!》

Premières proses Prologue II

ごく一部だけの引用では分り難いかもしれないが、十歳かそこらの子どもが書いたとしたら驚きだ。ランボーはもちろんラテン語もギリシア語もすばぬけてよくできた。金利生活者(ランティエ rentier)というのは主に国債の利子で生活する者、その意味が少年ランボーに本当に分っていたのかどうか、興味深いものがある。内容としては、大人ぶっていても、これはませた子供なら誰でも考える子供の発想である。しかし表現は全然子供らしくない。そこが凄い。

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by sumus2013 | 2016-05-22 20:58 | もよおしいろいろ | Comments(0)