「ほっ」と。キャンペーン

林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
カテゴリ
全体
古書日録
もよおしいろいろ
おすすめ本棚
画家=林哲夫
装幀=林哲夫
文筆=林哲夫
喫茶店の時代
うどん県あれこれ
雲遅空想美術館
コレクション
おととこゑ
彷書月刊総目次
未分類
以前の記事
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
お気に入りブログ
NabeQuest(na...
daily-sumus
Madame100gの不...
最新のコメント
それは深いですね! 
by sumus2013 at 11:39
有り難うございます。まっ..
by sumus2013 at 08:16
火編に禾で「あき」=秋の..
by KYO at 22:49
返信いたしましたが、届い..
by sumus2013 at 11:43
トビラノ君が還暦になるま..
by sumus2013 at 09:08
右へならえは嫌いだったの..
by sumus2013 at 20:06
花森を論ずるとき、小生が..
by 唐澤平吉 at 20:01
メールが不明で戻ってきま..
by sumus2013 at 17:15
ヴァネッサ・テイト『不思..
by sumus2013 at 17:12
返信さしあげたのですが、..
by sumus2013 at 17:24
メモ帳
最新のトラックバック
天才画家ゴッホの生涯と画..
from dezire_photo &..
ルーベンスの故郷、ヨーロ..
from dezire_photo &..
シャガール、ピカソ、マテ..
from dezire_photo &..
ポン=タヴァン派、総合主..
from dezire_photo &..
視聴率に関係なく選んだ2..
from dezire_photo &..
宝石のような輝をもった印..
from dezire_photo &..
ルネサンス美術の巨匠・ピ..
from dezire_photo &..
既成概念から絵画の解放に..
from dezire_photo &..
既成概念から絵画の解放に..
from dezire_photo &..
過去に来日した傑作を回顧..
from dezire_photo &..
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


カテゴリ:未分類( 12 )

嬉遊曲

f0307792_19480133.jpg

『嬉遊曲』(発行=嬉遊曲の会、印刷所=世田谷区梅丘一の二四の二 七月堂)という雑誌の1(一九八五年二月七日)、2(一九八六年三月一五日)、3(一九八七年九月一日)を頂戴した。添えられていたメモにはこうあった。

《検索しても、まるで出てきません。雑誌の狙いがもうひとつわからない?印象で、ネット時代直前の、しかしなにか昂った気分はあるようです。七月堂はこの少し前に朝吹亮二、松浦寿輝らの「麒麟」を出していて、たしかユリイカの「詩集の作り方」特集には「ヘンな雑誌は、申し込まれてもやらなかった」と書いてあった筈なので、この「嬉遊曲」は、ヘンな雑誌ではないのでしょうが。》

ヘンな雑誌ではないですね。真面目な雑誌である。同人は岩崎章、梅沢郁雄、大神田丈二、大野多加志(中村三吉)、瀬戸隆文、高遠弘美、橋本克己(水戸紺鳥屋)、泉川清、原田脩子(原田七江)、村岡正明、山本光久……以上1号。2号は泉川清が消えて野田研一、橋本清一が加わる。3号では泉川が戻って、清水明が加わり、梅沢、橋本清一、村岡、山本の名前が消えている。都合十四名の同人を数えたことになろうか【泉川清と橋本清一は同一人物と御教示いただきましたので十三名でしょうか】。

1号は高遠弘美・橋本克己の両氏が編集担当である。たまたま面識のある高遠氏にこの雑誌についてうかがってみた。高遠氏は文字面を四角にまとめた詩作品を発表しておられる。

f0307792_19475905.jpg

《大学院の後輩の橋本克己や大野多加志らと、たまたま始めた雑誌でした。三号雑誌の名前通り、三号で終はつた雑誌でした。他の執筆者は、私たちの何らかの知り合ひでした。》

というお返事をいただいた。じつは3号には担当編集者である大神田氏から野田氏に宛てた手紙(ワープロで書かれているのが何か懐かしい感じ)が挟まれていた。高遠氏によれば《野田さんは、大神田さんの立教の先輩です。しばらく金沢大学の先生をしていました。大神田さんと私は都留文科大学の非常勤講師時代に仲よくなりました。野田さんは今は立教の先生、大神田さんは山梨学院大の先生です。》ということで、手紙の内容は文学への熱い思いが語られている。私信なので引用するのもいかがなものかとは思うが、差し障りのなさそうなそれでいて本質的な文章を引いておきたい。発表を考えずに黙々と書き続けられた作品が後世において昭和文学の位置を決定するという中野好夫の意見を引用した後、こう続けている。

《ぼくらが発表を考えずにものを書けるほどの内容をもっているものかどうか、知らない。が、だとしたら、ぼくらは発表することを考えながら文章を書いてもいいわけだ。例えば個人雑誌を作って、誰にも読まれなくても書きつづける、これの方がよほど健康ではないのか。》

ちょうどTVドラマの「重版出来」を観ていると(漫画雑誌の編集部が舞台)、新人賞はとったもののそれ以後は万年アシスタントで漫画家になれない男性がついに郷里へ帰るという話をやっていた。編集者に自分の作品が理解されなかったためデビューの機会を逃し続けたという設定になっている。しかしこれはメジャー雑誌へのデビューということで、多くの人に受け入れられる作品が前提の世界である。少数の読者に向かって、あるいは自分に向かって書き続けることは可能なのではないだろうか? あるいは未来の読者に向かって。漫画をやめてしまう理由としては納得できないなと思う。

昨夜、高遠氏のFBにこんな記事が投稿された。

《2012年11月2日、私がフランスにゐるときに急逝した若き友人、加藤雅郁さんの最後の仕事がやうやく日の目を見た。『フェティシズム全書』作品社、639ページ。4800円。加藤さん歿後、友人の橋本克己が引き受けてここまで形にしてくれた。加藤さんを偲ぶと共に、橋本の健闘に拍手を送りたい。》

『フェティシズム全書』作品社

同人雑誌仲間というのはやはり特別なものである。

[PR]
by sumus2013 | 2016-05-25 20:55 | Comments(4)

拝受多謝

f0307792_20163575.jpg
タタン『よっちの本1』
トマソン社
http://tomasonsha.com


f0307792_20205291.jpg
石上三登志『ヨミスギ氏の奇怪な冒険』
書肆盛林堂
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca1/206/


f0307792_20205485.jpg
『戦後短歌と中井英夫―尾崎左永子さんに聞く』
「戦後70年 中井英夫 西荻窪の青春展」開催記念冊子(発行:盛林堂書房)と図録編は、会場の古書会館と西荻窪の盛林堂書房で、お一人様各一部にて配布中。


f0307792_20283042.jpg
『pieria』2016年春号
東京外国語大学出版会
http://www.tufs.ac.jp/blog/tufspub/


f0307792_20301439.jpg
『竹』第130号
竹文化振興協会
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/cop3/net/net18.html


f0307792_20352502.jpg
河井宣行『ON GRID』
egg


f0307792_20385794.jpg
春日井ひとし『昭和八年の里見弴(上)』
掌珠山房
http://kasugaihitosi.web.fc2.com







[PR]
by sumus2013 | 2016-04-24 21:05 | Comments(0)

木村伊兵衛パリ残像

f0307792_20210871.jpg


美術館「えき」で「木村伊兵衛パリ残像」を見た。思わず「木村伊兵衛って写真上手だなあ」と口走って近くにいた人にへんな顔で見られた。パリ写真なんて誰でも撮っている。かくいう小生も含め。しかし誰が撮っても同じようで同じじゃないところに写真の奥深さがあるだ。

木村は一九五四年から五五年にかけてパリに滞在し、アンリ=カルチェ・ブレッソンやロベール・ドアノーらとともにパリの街景やパリで暮らす人々を撮影をした。富士フィルムが開発したカラーフィルムを使ったという。それがむちゃくちゃ渋い色合いで昭和三十年のパリを映し出す。

f0307792_20210684.jpg



玩具のような自動車やスクーターが走り抜けるエトワル広場。これだけでシビレた!


f0307792_20210472.jpg

佐伯祐三のパリが色濃く残っていた時代である。小生が初めてパリの地を踏んだ一九七六年にもまだまだ残っていたように思うが、現在のパリからはきれいさっぱりこういう匂いは払拭されてしまっている。歎いてもはじまらないけれど。

[PR]
by sumus2013 | 2016-04-15 20:39 | Comments(2)

和久傅

f0307792_19365716.jpg

湯川成一さんを偲ぶ「水雀忌」は十一日である。もう七年が過ぎた。しかし当日は個展初日そしてスムース・トークライブの日でもあり、何もアップできないと思うので前倒しで湯川本を紹介しておこう。『和久傅』(和久傅、二〇〇一年一二月三〇日)。

f0307792_19365572.jpg


f0307792_19365450.jpg


f0307792_19365054.jpg


f0307792_19364877.jpg


f0307792_19364661.jpg


和久傅は明治三年に丹後で創業した旅館。現在は京都市内に料亭を三店舗構える。

和久傅

二〇〇六年に西湖という菓子を一度紹介したことがある。

和久傅の西湖

奥付によると、器は加藤静允、料理は岩崎武夫、写真は野中昭夫、本文和紙は越後門出(かどいで)和紙・小林康生、丹後縞木綿・土田和子、印刷は創文社、製本は須川バインダリー。加藤氏は湯川書房から『窯庭游話』『細石微風帖』『春夏秋冬帖』『春夏秋冬帖拾遺』など多くの特装本を刊行しておられる。出版点数がごく少くなっていた晩年の湯川さんにとっては最も重要な著者であった。岩崎武夫は総料理長。野中昭夫は『芸術新潮』のスタッフを長年勤めた手堅い写真家。

湯川さんは和紙の刷上がりの悪さに苦労したと言いながら、仕上がったときには非常に満足そうだったことを覚えている。

市中へ出ると必ずと言っていいほど湯川書房に立ち寄って一服させてもらった時期があった。湯川さんには迷惑だったかもしれないが、ああいう場所が必用だなあと最近痛切に感じている。



[PR]
by sumus2013 | 2015-07-09 20:33 | Comments(4)

蠶桑

f0307792_19264732.jpg


徐光啓『農政全書』より巻之三十二「蠶桑」。なぜかパリから届いたもの。徐光啓(1562-1633)は明代末の暦数学者でキリスト教徒だった異色の人物。


本書巻頭には「上海太原氏重刊」としてあり、この重刊の最初は道光二十三年(一八四三)のようだが、本書がそれと同じ版だとは考えない。もっと近年の重刷であろう。本文はともかく、桑の栽培から養蚕の手順を説明している挿絵がなかなか楽しいものだ。あまり数を掲げても煩わしいと思いつつ、七夕も近いことだし(旧暦だとまだだいぶ先ではあるが)最終工程である織女のあたりをピックアップしてみる。

f0307792_19374714.jpg
緯車(糸繰り車)。緯車方言曰趙魏之間謂之歴鹿車 東齊海岱之間謂之道執……


f0307792_19374635.jpg
織機。これは次の頁(一丁を広げると連続した一枚の絵になっている)につづく巨大な織である。次頁ではもうひとり別の女性が織機の上部に坐って仕事をしている。杼(ひ)を左手に持つ姿は変らない。

織り上げた布を柔らかくするのが「きぬた」。その図も出ている。

f0307792_19374486.jpg
砧杵(ちんしょ)。説明にいわく《古之女子対立各執一杵上下搗練于砧其丁冬之声互相応答 今易作臥杵対坐搗之又便且速易成帛也》。古くは杵を上下にして搗いていたが、今では向かい合って杵を寝かせて打つ。上図は後者。古いスタイルは下図。有名な「搗練図巻」より。

f0307792_20221997.jpg
白居易の「聞夜砧」は夫のために夜なべをして砧を打つ妻をうたっている。

 誰家思婦秋擣帛
 月苦風凄砧杵悲
 八月九月正長夜
 千聲萬聲無了時
 應到天明頭盡白
 一聲添得一莖絲

[PR]
by sumus2013 | 2015-06-29 20:23 | Comments(0)

舊即是新

f0307792_21015492.jpg


台湾通の牧野氏より「舊即是新 舊書店3.0時代來臨」という台湾の古本屋を特集した雑誌記事を頂戴した。深謝です。3.0時代というのはWeb3.0という意味か(「クラウド」と「メタデータ」の時代ということのようだ)。要するに台北の古本屋事情。《於是, 在面積恐不及3平方公里的公館、師大商圏裡, 擠進了将近20家二手書店》。

台北古書界の戦後略史が掲載されているので何かの参考に写しておく。

f0307792_20264822.jpg

『二手書店的旅行』

『装幀台湾』

『女給時代 1930年代台湾的珈琲店文化』


[PR]
by sumus2013 | 2014-12-25 21:04 | Comments(0)

古書目録についての二三のこと

f0307792_19381037.jpg


まずは中央やや右の『妖魔の横笛 鷲尾三郎少年少女怪奇探偵小説集』(書肆盛林堂、二〇一四年一一月二三日)。『死の谷を越えて』に引き続きこのミステリアス文庫の精力的な活動に敬意を表したい。

本日の話題は古書目録。千代田図書館で「古書目録のココが好き!~8人の達人が選ぶ、とっておきの一冊~」という展示が来月から始まるとある方がお教え下さった。南陀楼綾繁氏、岡崎武志氏、かわじもとたか氏も加わっている。古本猛者が選ぶ古書目録、どんなものが並ぶのか楽しみだ。と言ってもたぶん見られないだろうと思うけど……。

それから上の写真の左のちらし。古書店さんの目録ナビ【モクナビ】、そんなサイトができていたのだ。めぼしい目録をただで送ってもらえるらしい。運営は目録印刷を数多くこなす上毛印刷株式会社。

もうひとつ。某氏が送って下さった雄松堂書店稀覯書目録 YUSHODO RARE BOOKS 2014』(写真中央の赤茶の表紙)にもちょっと驚かされた。珍しい本の珍しい図版が目につくのは当然としても、目をみはったのはキルヒャー『ノアの方舟』初版(一六七五)から方舟の図解。こんなにも具体的なイメージで想像したことはなかった。

f0307792_19382596.jpg

《本書は、ハプスブルク家最後のスペイン国王、弱冠12歳のカルロス2世のため、旧約聖書の『創世記』(6章-9章)に登場する、大洪水にまつわるノアの方舟について著したもので、聖書に書かれていることはすべて真実であると説いています。》

ほほう、そういうことか(つまらぬことだが「弱冠」は十二歳には用いない方がいいと思う)。創世記をひもといてみるとたしかに数字を挙げて舟の構造が指示されている。

《神ノアに言たまひけるは諸(すべて)の人の末期(をわり)わが前に近づけり其は彼等のために暴虐世にみつればなり視よ我彼等を世とともにせ剪滅(ほろぼ)さん 汝松木をもて汝のために方舟を造り方舟の中(うち)に房(ま)を作り瀝青(やに)もて其内外を塗るべし 汝かく之を作るべし則ち其方舟の長さは三百キユビト其闊(ひろ)さは五十キユビト其高は三十キユビト 又方舟に導光牗(あかりまど)を作り上一キユビトに之を作り終(あぐ)べし又方舟の戸は其傍に設くべし下牀(した)と二階と三階とに之を作るべし》(6章13〜16、『約聖書』一九一四年版

そしてあらゆる生き物のワンペアをその方舟に積み込みなさい、洪水からあなたのファミリーだけ助けてあげるから、とエホバはノアに言ったわけである。それにしても暴虐世にみつればなり》……とは、なんとも身につまされる託宣ではないか。

ま、それはいいとして、ちょっとギョッとしたのがノアの方舟をひとひらめくると現れるこちらの図版。

f0307792_19383138.jpg

クラークソン「アフリカの叫び」フランス語版第2版ほか2書合本1冊。

《イギリスで奴隷制度反対運動を主導したクラークソン(1760-1846)の著作で、フランスで出版されたはじめての版です。
 巻頭に、船に詰め込まれた奴隷の様子を描いた折込図版が収録されています。この図はもともと、奴隷貿易の実態を宣伝するための刷り物として1789年に刊行されましたが、本の「図版」としてさらに拡散され、そのイメージは広く知られることとなりました。》

映画などではよく目にする奴隷船の船内はこのような図版に基づいていたのである。ノアの方舟のすぐ後だけにインパクトを感じた。

目録と言えば、月の輪書林の最新号も近々刊行されるようだ。どんな仕上がりでしょうかねえ。






[PR]
by sumus2013 | 2014-11-25 20:49 | Comments(0)

ひと夏の経験

f0307792_20333293.jpg


山口百恵のLPレコードが二十枚ほど郷里の書庫に眠っていた。自分で買ったわけではなく、誰かにもらったのだと思うが、こんなにたくさんあったとは、すっかり忘れていた。せっかくだから個展のにぎやかしに雑貨として販売するつもり。

古いところでは二枚目のオリジナル・アルバム「青い果実/禁じられた遊び」(一九七三年一二月発売)と四枚目の「十五才のテーマ ひと夏の経験」(一九七四年八月発売)、五枚目の「15才」(一九七四年一二月発売)などがある。

「スター誕生!」出演が一九七二年一二月、歌手デビューが七三年五月、「ひと夏の経験」でブレークした。八〇年一〇月引退、一一月三浦友和と結婚。八年足らずの芸能生活だった。

f0307792_20333017.jpg


個人的には好きでも嫌いでもないが、百恵が活動したのは小生が大学へ入る直前から大学を出て武者修行(?)のためにヨーロッパへ行くまでの時期にあたり、ほぼぴったり東京生活と結びついている、ということは青春のBGMとして常に背後には百恵の歌が流れていた。あらあためてLPジャケットを眺めてみると、とくに篠山紀信の写真はまるで昭和に生まれ変わった竹久夢二のように思えてくるのである。



[PR]
by sumus2013 | 2014-09-07 20:58 | Comments(0)

朱竹垞詩鈔

f0307792_20071075.jpg

久しぶりに漢詩集を得た。タテ十二センチメートルほどの袖珍本(袖に入るくらいの小さな本)。本文には虫食いがけっこうきている。表紙も替わっているようだ。表紙にはご覧のように「朱竹坨/詩鈔/角田膽岳」と墨書、そして誰が書いたものか鉛筆で「Sumida」と横文字が補ってある。

角田膽岳誰なのか? とにかく検索してみたところ、ひっかかったのは一件のみだった。中国浙江省生まれで大正十一年に東大経済学部を卒業、教員や編集者をしながら文筆活動を続けた郁達夫(1896-1945と漢詩人・書家の服部膽風(1867-1964)との交流を述べたサイトに登場していた。

郁達夫與日本友人服部擔風
http://big5.gmw.cn/g2b/books.gmw.cn/2007-02/28/content_560360.htm

服部膽風の居所である藍亭(水郷の街・弥富町を行く)に住み込んでいた天才少年が角田膽岳だというのである。これは何かたいへん由緒ある手沢本という雰囲気になってきた。ただし、それ以上のことは何も分らない。

f0307792_20070893.jpg
封面題には『朱竹垞先生詩鈔』、内題は『竹垞詩鈔』。朱竹垞は清代の詩人で学者、絵も字もよくした人物である。このコピーには刊記もないが、関西大学と関西学院大学がそれぞれ一部所蔵している模様で、それによれば文化六年六月(一八〇九)と文政二年九月(一八一九)の版があるらしい。

朱彝尊(1629年-1709年),字锡鬯,号竹垞,明末清初浙江嘉兴人。

圖書館學與資訊科學大辭典

なお竹垞と竹坨との二種類の表記がある。垞と坨では音が違うはずなのだが……。

f0307792_20070682.jpg


f0307792_20070337.jpg


f0307792_20070227.jpg


f0307792_20065926.jpg


f0307792_20065677.jpg


f0307792_20065422.jpg

裏表紙にはこのような記名がある。角田膽岳とは明らかに手が異なる。名前の方は「嶽蓮」「嶽蓮外史」でいいだろうが、脇にある住所(?)はどう読めばいいのか。仮に「入江市下舟良」と読んでおく(乞御教示)。入江だとして、入江という土地は全国にあるし、舟良の方はどこにも該当する土地はないようだ(グーグルで検索しただけですが)。さてどこのどなたやら分らないのが少し残念。

と思って、本文巻頭頁(上から二番目の写真)を見直していると、消された鉛筆文字に「伊吹町」とあるのがかろうじて読めるような気がしてきた。伊吹町は滋賀県だ。滋賀県で入江といえば、米原市入江になるのだろうか。

【コメント欄で解読にご協力いただき「入江村下多良」だという結論になりました】






[PR]
by sumus2013 | 2014-08-17 20:47 | Comments(4)

歌の塔

f0307792_20063023.jpg


f0307792_20063573.jpg


f0307792_20063706.jpg



ジャック・プレヴェール『歌の塔』(柏倉康夫訳、未知谷、二〇一三年一二月一〇日)が届いた。プレヴェールの一筋縄ではいかない、しかしはっきりと一本筋の通った世界をじっくり味わう幸せを感じる。

『歌の塔』は、スイスのローザンヌ書籍組合から1953年4月30日に出版された。プレヴェールの各詩篇に次いで、ヴェルジェ作曲の手書きの楽譜が印刷された豪華本である。プレヴェールがクリスチアーヌ・ヴェルジェに最初に作曲の話をもちかけたのは1928年2月のことであった。

 本が出版されて間もなく、このうちの何曲かをジェルメーヌ・モンテロとファビアン・ロリスが歌い、プレヴェール自身の語りを入れたレコードがデッカ社から発売された。

 豪華本の原題は、JACQUES PREVERT: TOUR DE CHANT Musique de Christiane Verger Dessins de Loris, La Guilde du Livre Lausanne. 1953。所持しているのは限定5300部のうちのNo. 1909である。

 日本で最初にこの本に注目したのは小笠原豊樹で、15篇すべてを翻訳した『プレヴェール 唄のくさぐさ』を1958年に昭森社から出版した。原詩の意味をくんだ見事な訳だが、新たな翻訳をこころみ、ロリスのデッサンとヴェルジェの楽譜もいくつか採録してみたい。》(『歌の塔』ムッシュKの日々の便り

小笠原豊樹訳『唄のくさぐさ』(昭森社、一九五八年)については daily-sumus でも紹介したことがある。今、本書と比較してみると、ほとんど別の本だ、とまでは言えないかもしれないが、かなり大きく違った言葉遣いが随所にうかがえてたいへん興味深い。

まず書名がそれを如実に表しているだろう。『歌の塔』は文字通りの訳で『唄のくさぐさ』は意訳と言っていい(いろいろな唄を集めたものの意)。全体的に『歌』の方がよりドライで歌詞の意味はストレートに伝わってくる。『唄』は、昨日取り上げた鈴木訳『ドン・ジュアン』がそうであったように、日本語の詩としてのリズムや体裁を重んじる風があるようだ。それがときとして過剰になる。おそらく当時でもやや時代がかっていたのではないかと思える長閑な言葉が並んでいる。もちろん、それはそれで捨て難いものがあるのも事実だが。内容を正しく把握しフレッシュな日本語に移しているということでは『歌』の方がはるかに優れているように思う。

例えば詩篇のタイトル。『唄』が「探検」としているのを『歌』では「配達」としている。原題は「L'expédision」。この詩はいちばん最後に置かれている作品で、ある男がルーヴル美術館に缶を持ち込んで置いてくるというモチーフなのだが、ナンセンスで、ある意味、プレヴェールのコラージュ作品に通じるシュールな奇抜さがあって、小生はかなり気に入っている。歌詞は引用しないけれども「探検」としたのはさすがに的外れだろう。「配達」がぴったりはまっている。梶井基次郎が丸善にレモン爆弾を仕掛けるようなものである。

もうひとつ『唄』が「自由な町筋」としている詩、これを『歌』は「外出許可」とした。これはまたひどくかけ離れた訳語である。原題は「Quartier libre」でこの場合は『唄』の方が直訳になっている。しかし、詩を読むと、軍人(あるいは警官)が被るケピ帽を鳥かごに入れ、帽子のかわりに鳥を頭にのせて外出する男、彼は町で司令官に出会っても敬礼をしない、という内容である。モチーフとしてはそんなに奇抜ではないけれども、歌詞としてなかなかこういうふうに表現することは誰にでもできるものではないなあ、とプレヴェールの才能に感服するのだが、また同時に「外出許可」とした柏倉訳にも深く頷かされる。

  Quelqu'un(これは『歌』も『唄』も同じ「ある男」です

Un homme sort de chez lui
C’est très tôt le matin
C’est un homme qui est triste
Cela se voit sur sa figure
Soudain dans une boîte à ordure
Il voit un vieux Bottin Mondain
Quand on est triste on passe le temps
Et l’homme prend le Bottin
Le secoue un peu et le feuillette machinalement
Les choses sont comme elles sont
Cet homme si triste est triste parce qu’il s’appelle Ducon
Et il feuillette
Et continue à feuilleter
Et il s’arrête
A la page D
Et il regarde la page des D-U Du ..
Et son regard d’homme triste devient plus gai et plus clair
Personne
Vraiment personne ne porte le même nom
Je suis le seul Ducon
Dit-il entre ses dents
Et il jette le livre s’ époussette les mains
Et poursuit fièrement son petit bonhomme de chemin.

今日出海(こん・ひでみ)がフランスへ行ったときにその名前で困ったという「con」がテーマの作品。プレヴェールはこの手のダジャレのような言葉遊びをリアルな平面に取り込んで歌うのが巧みである。この詩の柏倉訳はこちらで読んでいただけます。

ジャック・プレヴェール「歌の塔」Ⅶ

ついでにイヴ・モンタンが歌う「ある男」も

YVES MONTAND Quelqu'un - avec paroles


[PR]
by sumus2013 | 2014-01-13 21:29 | Comments(2)