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ちんき堂所用あって神戸へ。せっかくだからとちんき堂(http://chinkido.com)をのぞく。一年半ぶりくらいかも。いかにも品薄ふうなガッサガサの棚がいい。行く度にガラリと本が変わっている。まあ、一年に一度か二度じゃ、あたりまえかもしれないけど。並んでいるタイトルも値段も一昔前という雰囲気が何ともいい。 本日は澁澤龍彦の単行本がズラリと並んでいた二十冊くらいはあったかな。多分、今は売れ線とはいかないだろうが、迫力はある。黒いジャケットのサドの翻訳も六冊くらいあった。色モノはお得意のジャンルで異彩を放っている。それがすべて百円から数百円だからなおさらだ。画集や美術展の図録などもけっこうあった。音楽・映画・芸能関係は言うまでもなく得意ジャンル。CD、LP、などもかなりある。他にも珍しい同人雑誌などがヒョイと差してあったりする。とにかく品薄に見えてもじっくり小一時間は楽しめる店である。近所なら頻繁に通うことになるだろう。 戸川さんと雑談。古本屋になるときに梁山泊の島元氏に相談したのだそうだ。生活していけるかどうかを質問したら、昔みたいにはいかないが、なんとか暮してはいけるだろうと言われた。それまでの職を予定していたよりも早く辞めることになり、その数ヶ月後には開業した。ところが、店番三日にして「ぜったい無理」と悟った、のだという。……と言いながらもう二十年近くやっておられるわけだが。 帰宅してみると『ほんの手帖 51』(大島なえ、二〇一八年一月一五日)が届いていた。黒木書店の思い出がつづられている。 おまけに作る 《ここの店主が、いかにも古本屋おやじ。と言うへんこなおやじで、私は無かったけれど乱雑に本を扱おうものなら「帰れ!」の怒声が飛ぶ。お客は気を使いながら本を読ませていただく感じです。》 《閉店される時は酸素ボンベのチューブをつけ仕事されていました。頭のしっかりしたじいさんです。》 《何度か通ううちに俳句の本の話で盛り上がりその時、ふと黒木さんが、足が痛くなるからと椅子を出して、ここに座り。と言われ思わず「やったあ」と思い心で声を上げて喜びおまけにコーヒーの出前も注文して、コーヒーをごちそうになり念願かなったのですね。しかしその二年後に閉店しトラックが店の前につけ、本を全部運び出しているのを見た時は悲しかった。あの本たちはどこへ行ったのかと時々思います。 ・黒木正男さんは2002年冬に永眠。》 黒木書店のことを書くと思い出すのが、渡辺一考さんの回想だ。黒木氏の息子さんのことを書いておられて、さすがと唸らせられる。 一考 神戸の古本力
by sumus2013
| 2018-01-19 20:25
| 古書日録
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Comments(7)
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大島なえ
at 2018-01-20 19:10
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「ほんの手帖」51号のご紹介、ありがとうございます。
おまけに作った甲斐があります(笑) 黒木書店が閉店して十六年になるのを自分で書いて気がつき愕然とする気持。 まことに月日の経つのは早いですねぇ。黒木書店が閉店する日まで 見届けたひとりになれたのが、ささやかな自慢になるでしょうか・・・
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sumus2013 at 2018-01-20 19:50
黒木書店の最後を見届けた人はそうはいないと思います。これからも色々書き残してください。
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牛津
at 2018-01-26 16:03
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黒木書店の遺された本は、大阪の市でセリに
かけられました。値もそれほど上がらず、 短時間で落札されたそうです。参加された 神戸の業者からの証言です。 蔵書の処分はあっけないくらいがいいのでは ないでしょうか。
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sumus2013 at 2018-01-26 19:51
いい本は抜かれていたということですね、きっと。黒木伝説の終焉としては、そのあっけなさも、また、いいのかもしれません。
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牛津
at 2018-01-29 07:03
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やはり黒木書店は個性的であったと
言わざるを得ません。本が棚に並んでいた 様子を克明に書名までおぼえていますから。 このような本屋はまれです。 アナトール・フランスの全集の端本がありま したが、今も誰かの蔵書になっているでしょう。 洒落た製本がほど越されていました。白水社の 分ではなく、フランス語でした。 黒木書店は洋書もありました。下の方の段 でしたが。
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大島なえ
at 2018-01-29 15:18
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本当に今思うと、黒木書店の本は他と少し違うと思うもの
あります。私は西東三鬼全集が奥の棚上段にあったのが 欲しくて最後に買いそびれて今だに後悔しています。 棚の本の書名も覚えているのは言われる通り。 閉店したあとに、しばらく野菜を売ってるのを見た時は なんともまぁと思ったのが、ついこの間みたいですが。
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sumus2013 at 2018-01-29 20:30
たしかに、今でも黒木さんの書棚の並びは目に浮かぶようですね。ちょうどいい頃合いの本の量で、おこがましいですが、目配りのいい棚作りだと当時から思っていました。ここで買った本はよく覚えています。
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