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美術 第十一巻第六号『美術』第十一巻第六号(東邦美術学院、一九三六年六月一日)。図版切り取りがかなりあるため、均一に出ていた。そうでなければ、戦前の美術雑誌なので、それなりのお値段である。 ざっと図版を調べていて目が止まったのはこちら。靉光「ライオン」。靉光はこの年の独立展にこの「ライオン」(ともう一点、眠るライオン)を発表したが、その後二年間、ライオンの連作を続けた。そしてその試行錯誤が代表作「眼のある風景」(一九三八)へと繋がる。本誌には「私の出品作・独立展」というコーナーがあり、そこに靉光はこう書いている。 《愚作で誠に申譯ない次第です。 ライオンを材料に必ず一度は素敵な作を生む腹。》 他にもいろいろ珍しい写真がある。下は独立展の受賞者および新会員の一部。上段右端が今西中通、その左が飯田操朗。下段左端の紅一点が三岸節子。ついでに言えば下段右から二番目は斎藤長三で、小生が武蔵野美術大学にいた頃(え〜と、この写真からおよそ四十年後です)の教授の一人。この左側につづく省略した写真に顔が出ているもう一人、中間册夫という先生もおられた。 他には、佐分眞の追悼記事も貴重である。宮田重雄、伊藤廉、益田義信、伊原宇三郎、窪田照三が思い出を寄せている。かなり前に佐分の遺作集『素麗』(春鳥会、一九三六年)を架蔵していたのだが、生活苦に負けて売り払った苦い思い出がある……。 また、「消息」欄にこんな記事を見てオヤッと思う。 野田英夫氏 東京市麻布區谷町四十一番地麻布アパート内へ轉 野田英夫は一九三四年に日本を訪れ(生まれはサンノゼ)、三七年に一度アメリカへ帰って壁画の仕事をするなどしてから、ヨーロッパを経て、再び来日している。 とにかく雑誌というのは細部が面白いです。
by sumus2013
| 2017-12-27 20:43
| 古書日録
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