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林哲夫の文画な日々2
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海ねこ/青猫

海ねこ/青猫_f0307792_19460898.jpg


海ねこさんより最新目録届く。《スイス、ウィーンで買い付けてきた絵本、大正・昭和初期の絵雑誌などなど、新蒐品735点を掲載しました。》とのこと。いつものことながらフルカラーの書影が素晴らしい。めくっているだけで目の保養になる。でも、めくるだけじゃねえ……何か注文したい。

古本海ねこ

海ねこ/青猫_f0307792_19461196.jpg

しばらく前になるが、某氏が青猫書房の目録を整理したファイルを送ってくれた。七冊。上の写真に写っているファイルでは、B5判の用紙に裏表印刷で十四枚(二十八頁、未綴)という形式になっている。並んでいる本も見応え十分ながら、店主のエッセイ「青猫愛書閑話」が読みモノである。各地の古書店などをセドリして歩く様子を淡々と描いているなかに、自ずからなる喜怒哀楽がうかがえる。古書好きなら激しく同感するに違いない。一例を。第252号(平成十五年二月一日)より。

渡辺順三の大地堂書店は下北沢に在って、それと知らずに何度も店舗を覗いた。もう30年以上の以前の話だが、店の雑然とした佇まいはしっかり覚えている。間口4間の奥行きの少ない店で、壁三方は書棚だが、日暮里の鶉屋書店がそうだったように中棚を作らず、中央が平台になっていた。恐らく万引き警戒の死角を作らない配置なのだろうが、平台から山積みの本が溢れ、店舗の半分はどうしようもない雑本で埋まっていた。初めて見る詩集や歌集がふんだんに在って、此処の主人は何物だろうと疑問を抱いた。月に1度は草臥れた背広を着込んだ中年男たちがひとり二人と店主に挨拶して奥に消えていった。その光景が何とも不思議で仲間でない寂しさを覚えたものだが、それは単に同好の楽しみ、歌会を開いていたに過ぎなかった。

この後につづく渋谷・中村書店の回想もいいのだが、それは省く。大地堂書店については山下武『古書の味覚』(青弓社、一九九三年)にも出ているので参考までに引用しておく。

ぼくが下北沢の大地堂に足を運んだのは昭和三十年代前半からで、たまたま下北沢が通勤電車の道筋にあるためだった。下北沢というのは妙な町で、古本屋は何軒かあるにもかかわらず、これといった買い物をした記憶がない。
 丸井の先を行くと、古ぼけたという形容がまさにピッタリはまる古本屋があり、中年過ぎた夫婦が交替で店番していた。それが大地堂だった。店の棚は雑然として、値付けはマアマアだが、目を引くような本がない。時代がまだ高度成長期のこととて戦前の本が結構多く、プロレタリア文学関係の本が目についた。林氏が「戦旗」に作品を発表した詩人の仁木二郎と知ったのは後年のことである。何やら一癖ありげな風貌ながら、そのころはもう古本屋のオヤジが板につき、「何かお探しの本でもありますか」などと気軽に話かけてくる。
「黒島傳治の『豚群』を探してます」と返辞したことから、以来、大地堂へ寄るたび「『豚群』は見つかりましたか?」と聞かれるのに閉口した。

文中「林氏」とあるのは林二郎氏で『日本古書通信』に大地堂の開店から閉店までの経緯を書いていたそうだ。それを読んでの回想である。同じ店について書いても、それぞれ目の付け所が違っているのが一入面白い。



by sumus2013 | 2017-10-17 20:35 | 古書日録 | Comments(0)
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